クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴|◉〻◉)

文字の大きさ
上 下
99 / 109
五章

閑話 交差する思惑

しおりを挟む
「ギチギチィ!!?」

「フーハハハハ! 見よ、この勇姿! 俺の操るバンデッドは伊達じゃないことをお見せしよう!」

 みゆりが屋台の裏に隠れたのを確認し、両手を広げるように威圧する。
 黒い蟲が跳躍した。
 狙いは屋台、みゆりか。
 させると思っているのか?

「素材変形! スチールソード!」

 その場で大地に手をつき、地面から剣上の山を無視に対して放つ。武器にするんじゃないのかって?
 あんな小さい的に当てられるわけないだろ。常識で考えろよ。
 その上素早い。
 だからこっちには距離を無視する攻撃手段があるってわからせてやればいいんだ。

 それなりに知性があるのだろう。
 弱いみゆりを真っ先に狙ったのもある。
 が、それが愚策だったな。
 俺だけ狙ってりゃいいのに、みゆりを狙えば俺がどんな行動に出るのかわかっちゃいないんだ。

 俺、昔から黒くてすばしっこいやつが嫌いなんだよね。
 空を飛んだりはしないけど、似てるしムカつくから潰す。
 それは確定した。

「ギシャァアアア!!」

「膨らんだ!?」

 蟲は咆哮を上げると、その肉体を何倍にも膨らませた。
 気持ち悪っ。
 やっぱり蟲は好きじゃねーわ。
 それに蜘蛛の巣? 俺の部屋に見つけた時はマジで殺意湧くし。益虫だなんだと言ったところでムカつくもんはムカつくし、蜘蛛用の殺虫剤が売られてる時点で蜘蛛をむかついてるのは俺だけじゃないって証拠だよ。

「オラッ、こいつでしんどけ! 冷凍ビーム!」

 蟲は焼いても切っても動き続けるタフネスを持つ。
 そこで悩んだ人間が考えついた処刑法が凍らせて殺す作戦だ。
 正確には機能停止レベルだが、すばしっこくて鬱陶しい相手が沈黙するので有効的だとされている。

「ギシャァアアア!!?」

 蜘蛛はその場で凍りつき、汚いオブジェが出来上がった。
 討伐完了だな!

 バンデッドをアイテムボックスに突っ込んで、デートの続きを再会する。
 念の為、このオブジェは夏目に知らせておく。
 あいつなら適当に解剖するなりなんなりするだろう。
 電話で連絡をつけた後、例のモンスター捕獲ボールで転送する。

 ふー、一仕事した後の飯は美味いぜ。
 みゆりとはその日いちゃつきながらお互いの進路の相談をしあった。


 





 ──sideシェイビー


 いつまで経っても連絡をよこさぬタリア女王に対して私は痺れを切らせていた。

「遅い! あの方は御身が一体どれほど重要な役割に準じているかわかっておいででないのだ」

「そう苛立ちを募らせるものではない、シェイビー卿」

「ですがクワーガ伯」

 クワガタの立派なハサミを両肩から生やした男が、スーツのように黒光りした骨格を見せつけながら宥めてくる。

 クワーガは戦闘メイドの私と違い、本格的な騎士の称号を持つ戦士だ。
 戦闘種族故に高いステータスを持つ私たちが束になっても敵わない力を有している。

「良い良い、遊びたい盛りなのだろう。たまの外出だ、遊ばせてやれ。それと、それなりに遊べる個体が居るようだ。おてんば姫が食いつく程度にはな」

「我々でも手を焼く相手がいると?」

「手を焼きはせぬだろうが、早いところ駆除しておいた法がいいだろう事は確かよ。人間は弱いが、群れると突拍子もない進化をする。所詮はこけおどしに過ぎぬが、それでも面倒だ」

 クワーガ伯は狡猾に表情を歪める。
 戦場でもないのにすっかり戦士の顔だ。
 タリア様の心配などまるでしていない。
 自分が暴れればそれでいいという自己中心的な考え。

 それはタリア様も同じか。
 内心独りごちる。

「だからと言って、無視することもできますまい。貴方様は平気でしょうが、彼の方はそれなりに兵からの人気が高い。士気向上のためにもいてくれた方がいいのです」

「お主が困るだけではないのか? シェイビー卿」

「お戯を」

「未だ本心を隠しているつもりか? はっきりと気持ちを伝えればいいものを」

「公務に私情を挟めば軍は統率を失います」

「そんなものか」

「そんなものです!」

 私は内心を言い当てられてひどく動揺していた。
 軍を動かすためにタリア様が必要というのはもちろん嘘じゃない。が、本心はまた別にあるのだ。

 気分が優れないからと退室し、夜風にあたった。

「ああ、一体貴方様はどこに行かれてしまったというのですか? 少しくらい、帰りを待つ者の気持ちも考えて欲しいものです」

 独り言は夜の闇に溶け、夜風が甲殻に覆われた肌を撫でた。









 ──side夏目樹貴


「こいつは面白い生態系をしているなぁ」

 阿久津から連絡が回ってきた時は何事かと思ったが、手に入れた素体を目にして一目で気に入った。

「こいつは、シャンか?」

「知ってるんですか?」

 共同研究者のグーラが目を細めた。
 シャンとはあまり聞かない名だ。

「交戦的な種族でな、共食いしながら眷属を増やし、最終的には星を食い潰す程にその数を増やすと言われてる寄生生物だよ。本体はこの肉体の脳に宿る小さな蟲だが……ほら、こいつだ」

 顕微鏡でようやく見えるサイズの虫が宿主と聞いて驚く。

「この肉体は?」

「お前達が好むロボット? みたいなものだな。丁度その星を支配していた種族の強度の強い種族の肉体を張り合わせて着込んでいる。こいつらは非常に悪戯好きでな。興味本位で星一つを滅ぼす」

「迷惑な連中だな」

「まったくだ。まぁ俺も人のことは言えないが」

 ククッ、と過去のことを思い出して自嘲する。
 グーラも超絶自己主義だったもんなぁ、と思い返した。

「それよりも、コレが現れた時点で他にも居るって推定した法がいいんだよな?」

「少なく見積もっても1000億は居るだろうな。このサイズだから場所もとらん」

「いっそ亜空間に閉じ込めます?」

「その方がいいだろう。百害あって一利なし、だ。昔我らの種族とも小競り合いをして少なくない被害を出したものよ」

「じゃあ、封印ですね。うちに連中にも見つけ次第送ってもらうように言っときますわ」

「別に強くもないが、厄介なのはどんな生物にも寄生できる力だな。操ってるロボットを壊したってパイロットはピンピンしてるものだろう?」

「なんかステータスで弾けないもんかね?」

「例のガチャの勇者、阿久津と言ったか?」

「阿久津がどうかしましたか?」

「あの男に通用しなかったのなら、外付けのステータスでも十分対処できるのではないかと考えてな」

「ああ、そう言えば。普通に倒して持ってきましたからね、あいつ」

「そう考えたら別に無理して対処する必要もない気がしてきたな」

「現地民は大打撃でしょうが」

「俺は故郷に帰れればそれでいいが?」

「こいつ……」

 グーラは協力的になってくれたが、根本的な部分は何も変わってないので、一生分かりあうことはないだろうな。
 共同研究者としてはめちゃくちゃ頼りになるのだが、死生観とか倫理観とか、そういうもんが根本的に違うのだ。

 会話ができるようになっただけマシと捉えるべきか否か。
 タイムマシンの開発はまだまだ難航しそうだ。

 それとたまに差し入れに来る本厄災四龍のアクエリアとイチャつきながら研究に打ち込む姿は非常に目に毒だ。

 なんで俺には彼女ができないのだろうと真剣に悩んだが、どれだけ考えても幼馴染の三上のせいに思えてならないので考えるのをやめた。

 あとから坂下さんと付き合い始めたって聞いた時は、夜中に壁殴りを始めるところだったのは墓まで持っていく秘密である。

 あーちくしょう! 俺も彼女欲しい!
 
しおりを挟む
感想 325

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。