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五章

前回までのあらすじ

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 どうにかこうにかして、異世界のゴタゴタを片付けた俺たちは、無事元の世界に帰ることができた。

 その結果、分かったことは一つ。
 俺たちの世界と異世界では時間の流れが違うことである。

 俺たちの世界の一時間が異世界での一年だったのだ。
 いつでも異世界に行って帰れる手段を得た俺たちであるが、頻繁にいなくなれば神隠し問題として騒がれる事を懸念し、週末に集まろうと決意する。

 たった一日で24年進んでしまう異世界。
 そこで手を挙げたのが元霊国ドリュアネスの元老院が一人、エルフのササモリさんだった。

 エルフの居住地は時間の流れが外の世界よりすこぶる遅いらしい。本人達が長命種な理由はその亜空間で暮らしているが故との事だ。

 敢えて帰郷しないと告げた居残り組(ムーンスレイの勇者、ドラグネスの勇者)を引き取る約束をして俺たちだけ帰ったって寸法だ。

 日常に戻った俺たちは案の定寝付けず、当たり前だった日常を送るうちに号泣していた。
 それほどまでに最終決戦は過酷で、一歩間違えたら死んでた者もいる。

 全員が生きて帰れたこともあり、日常生活が愛おしく思えたのだ。かーちゃんからは変なものでも食ったかと心配されたが、俺としては今までしてもらって当たり前だったと言う感覚が怖くなり、今のままじゃいけないと自分の意思を強めた。

 元の世界では扱えぬ『天性』
 これは異世界でのみ扱える超常現象なのだ。
 だから日常でも気がつけばステータス画面を開こうとする癖を隠すのは大変だった。

 先生からアニメの影響を疑われたものだが、上手く口を合わせた。

 そして、週末が訪れる。
 その日はお昼の12時に集合して、17時には帰宅する日程を組む。

 元の世界ではたった5時間。
 異世界では5年、亜空間なら5ヶ月だ。
 冒険するのに十分な時間である。

 俺たちはその日の為に新しい計画を立てていた。
 世界が一つに統合された新世界で、天性を扱う以外の目的を達成すべく乗り越えると、出迎えてくれたのはあの時より2年の成長をしたアリエルだった。


「会いたかったわ」

「俺も……」

「早くアイス大福を出してちょうだい。ここ数年贅沢とは無縁な生活を送ってきたの。もう我慢も限界なのよ!」


 縋りつかれて胸ぐらを掴まれた。
 その様子に思わず吹き出してしまう。

 一瞬見惚れるほどの美貌を持つ彼女の口から飛び出したのは、当時と変わらぬ食いしん坊のそれだった。

 聞けば俺たちが帰ってる間、置いてった『天性』スキルの任意設定ガチャが動かなくなり、相当苦労したようだ。

 国が崩壊し、通貨が廃れ、文明が消えた。
 人の上に王は作らず、今では種族の集落が各地に点在する有様。

 俺の方もおかげでステータスガチャが死んだが、問題はあるまい。なんせ既にステータスがあり得ないくらいに成長してるからな。いやー大変だったよ最終決戦。
 おかげですこぶる成長したもん。







 そんでもって、アリエルの他にも続々と俺たちと接点のあるもの達が集まった。
 アリエル達が世話になったエルフのみんな、ドワーフの親方。
 エルフの避難地にいまだに暮らす元グルストン王国のみんな。

 施設に置いてた任意設定ガチャが復活して俺たちの帰還を喜んでくれたのなら嬉しいが、またこれで贅沢ができるとか考えてるなら厳禁な奴らだな、と言わざるを得ない。

 ま、なんにせよ。
 ここから先のストーリーを紡ぐのは俺たち次第だ。

 さぁて、今度はどんな冒険をするかな?
 クラスメイトはそれぞれの思いを馳せ、別々の道へと歩んでいく。俺の周りにはいつものメンバー。

 委員長、杜若さん、そして薫。
 そこにアリエルが加わって、新しい地を案内してもらい手筈となった。
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