113 / 147
奇妙な共闘
事実確認
しおりを挟む
全員が伸びたのを確認して、飯の支度をしてると、起き出した紫髪の跳ねっ返りがじっとこちらの手元を見ていた。
腹でも空いてるのか、口端から涎を垂らしている。
「お、起きたか寝坊助め」
「ウルセェぞ。海斗の癖に」
「ん? 俺の癖にとは随分な言いがかりだなぁ」
なんとなく、そんな言葉をどこかで聞いたような気がした。
──無能の癖に、俺様に楯突くなんて烏滸がましい!
あれは確か従兄弟の五味総司の言葉だ。
もし兄妹だとしたら、口調が似通っていても仕方ないが……どうにも引っかかる。
「随分と手際が良いじゃねーか。どこで覚えたんだ?」
口は悪いが、俺の素性が気になるのかグイグイとくる。
俺を敵だ、と言っておきながらどこか実力を認めてくれたのだろうか?
まぁあれだけ叩きのめせば少しは反省したかな?
「ん? どうしてそんなことを聞くんだ?」
「別に、俺が飯に興味持つのはおかしいかよ? 金がねーから食い扶持を少しでも増やしたいんだ。悪ぃか」
「いやいや、結構なことだ。俺も貧乏で稼いでもすぐに売り上げを持ってかれちまったからな。君と同じ五味という苗字の人達に……」
「あ……」
「俺はさ、君をその一族の一員じゃないのかと勘繰っている。やたらと俺たち兄妹に突っかかってくる性根。さっきの態度もそうだ。俺は君に何かしたのか? 不躾な質問で悪いが教えてくれないだろうか?」
黙りこくった彼女に、俺は質問を重ねた。
彼女は言葉を紡げずに苦悶の表情を浮かべていた。
言えないのか、または言いたくないのかは定かではない。
が、こうも黙られちゃ平行線の水掛け論。
何かクッションでもあれば良いなというところへ明海が空腹によって起き出した。
「あたし、復活! あ、お兄何作ってんの? あたしの分は?」
「先に手洗いして来い。そこに簡易給水所を建てた。トイレとかシャワーとか浴びたければご自由に」
「わっ! 至れり尽くせりだ!」
「着替えの準備まではしてないから尽くしてはいないな」
「ちぇー、汗臭いお洋服で続行かー」
「においが気になるなら消臭スプレーがあるぞ?」
「お兄大好き!」
「ったく、現金なやつめ」
ダンジョンに入ったら普通この手のサービスは存在しない。
一部疾風団では通常運転だが、あれはあそこの徹底ぶりがおかしいのだ。俺はそこで得たノウハウをさらに過剰にして提供してるだけに過ぎない。
「良い具合に焼けたが、食うか?」
「俺には手洗いしろって言わねーのかよ?」
紫色の瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。嫌われてるね、どうも。
「なんかこういうの慣れてそうだったから。うちの妹は逆に初めての学園生活だ。俺の前でだけ元気でも、やっぱり心配なんだよ。兄貴としては」
「過保護だな」
五味初理はそう吐き捨てながら串焼きを一口。
すぐに両目を見開いて、自分の手元にある串と俺を見比べた。
「口にあったかな?」
「なんだこの肉!? うめぇえええ! 高級和牛だってこんな旨味発揮しねぇぞ? ただの肉を串に刺したってぜってぇこうはならねぇ! 教えろ、この肉はなんの肉なんだ!?」
「ホーンバイソン」
「はぁ? あのキモいクソ牛がこんな美味いなんて知ってたらもっと絶滅危惧種に追い詰められても仕方ねーだろ。つぅか、そもそもダンジョンモンスターは肉をドロップしねーぞ? ガキでも騙されねー嘘で俺をハメようったってそうは行かねーぞ?」
やはり、年齢の割にはダンジョンを熟知してるような口振りだ。
実は探索者だったり?
でも探索者にしては異様に練度が低いのが気になる。
まるで本来の自分の肉体とは違う体に押し込められたような歪さだ。
だがそんな事、あり得るのか?
左近時さんは魔法少女モードの時と別の肉体を持つのに、彼女はそのままだ。だから本当にこの歳で魔法少女に抜擢されたのだと思うのだ。
しかし違うとしたら?
【嫉妬】はとんでもない能力を隠していることになる。
俺たちに手札を見せない相手に、少しだけ警戒度を上げるのだった。
それはともかくとして、隙あらばメンチを切って威嚇してくる少女だ。彼女は俺を敵対的に見ているのは明らかだろう。
そのように教育されているか、はたまた全く別の……その直感は俺にあり得ない解答を導き出した。
だって、あり得ない。あの人は鑑別所送りになった筈だ。
ここで呑気に学生どころか魔法少女をやってるなんて。
だが事実確認はしておきたい。
今妹がシャワーを浴びてる隙に、俺は彼女に一つの質問を投げつけた。
「もしかして貴方は、五味総司さんご本人ですか?」
「は、はぁ!? 何をもってそう決めつけやがる!」
驚きの声。同時に焦ったように発汗している。緊張と羞恥で体感温度が上がったせいだろう。目の前に異性がいるのに関わらず、制服を捲ってバサバサとお腹に空気を送っていた。
一般の女子なら男の前でまずやらない行為。相手を異性として見てないならともかく、こうもあからさまに同性感を出されたらまず間違いない。
「実はずっと不思議でした。なぜこの子は初めて会ったはずの俺や妹をやたらと目の敵にしているのだろう、と」
「う゛っ!」
「そして初対面、または数度しか顔を合わせてない間柄にも拘らずまるで旧知の仲のような接し方。俺でなくたって不審に思いますよ」
「うぐ……!」
「極め付けは俺と二人きりなのに、まるで同性かのような振る舞いです。俺の周りには普段から女子が多いので俺の前だと何を我慢するかがよくわかるんです。けど貴方にはそれらの反応が見られない」
「は、はぁ? そりゃそいつらがお前に惚れてるっつー話の問題だろ? 勘違い乙!」
「いや、初対面だからこそ其処まで距離感の近い態度は取りません。好き、嫌い以前の問題です。貴方は最初から俺に馴れ馴れしすぎるんです。まるで幼い時から知ってる従兄弟みたいな距離感でしたよ?」
「クソ! お前にだけはバレたくなかったのに!」
やっぱりこの人総司さんか。
しかし問題はその姿形がまるで別物である点だ。
よもや性別の変更までしてみせるとは【嫉妬パワー】とはもっと恐ろしいものじゃないのではないかと推測を浮かべる。
「まぁ貴方の正体が何者でも構わないんですが」
「何を!」
「これ以上この件に関わらないほうがいいですよ。まぁ、もう後戻りできない場所にまできてしまったみたいですが」
あまりにも相違点のない肉体に押し込められた魂に、憐れみの視線を送ると、もう自分でもどうして良いかわからないように食べ終わって何もついてない串を、苛立ち任せに地面に突き刺した。
「ウルセェ、言われなくたって分かってんだ、んな事は!」
「問題はこの後ですね。俺や妹は貴方とは訣別したいです」
「だろうな、俺だってそんな都合よく仲間に入れろなんて言えねぇよ」
「ですが今の貴方は見た目がもう五味総司ではなくなっている。妹も仲良くしたがってるし、俺としては貴方次第のところではあります」
「俺がまた徒党を組んで襲うかもって思わねぇのか?」
「既に【嫉妬】の王から聞いてるでしょうが、俺は既に【強欲】の王、御堂と手を組んでます。以前まであなた方のバックに御堂が居たように、次も同じ力で襲ってきても俺の権力で揉み消せるんですよ。そんな相手に怖がるだなんて時間の無駄じゃないですか?」
「チッ、嫌味な野郎だ」
「お陰様でメンタルは徹底的に鍛えられましたんで。あの日があったから今の俺がいます。そういう意味では感謝してるんですよ?」
「俺の才能のおかげでお前のような化け物が産まれたってわけか?」
「どうとってもらっても構いませんが、俺を狙うという事はもう容易いことではなくなりました。俺を狙えば俺の契約者が貴方を排除すべく動きます。俺が止めてもきっと止まりません。そういう組織が出来上がりつつあります。妹はその末端に位置します」
「あのクソガキですら末端だと!?」
「まぁ、この訓練を汗一つ書かずに乗り越える子達なんで、今の妹と比べるのは酷というか、月とスッポンというか」
「チッ、通りでテメェに負けるわけだぜ。テメェ、あの時どれくらいの力で俺と戦ってた!? 俺は100%だった」
「俺ですか? 本来の力を活かせるのがダンジョン内なのでまずその時点で50%ダウンですよね」
「は?」
「そこから更に自分の正当性を見て分かるように攻撃も回避も封印したので更に半分の25%」
「マテマテマテマテマテ……」
「更に飛び出しそうな契約者を引き止めたりと思考の半分をそっちに奪われてたので半分の12%」
「おい……それ以上言うなよ、惨めな気持ちになんだろ」
「【暴食】の力は使ったので5%と言ったところでしょうか? いやぁ、殴る蹴るを気持ちいいくらい行ってくれたおかげで、俺は計画通り事が進んで万々歳ですよ」
「初めからお前の手のひらの上だったって事かよ?」
「出会ってすぐに因縁つけて来なければ見逃すつもりでいました」
「なら、俺の行いの結果がアレか……」
「そうなりますね。で、どうします。俺の協力者になってここで修行して行きますか? それとも【嫉妬】の悪魔エンヴィに唆されて俺と御堂さんの邪魔をしますか?」
「んなすぐに決められっかよ」
「すぐに答えを出せ、それを幼い俺に言ったのは貴方でしたよね?」
「どうでも良いことばっか覚えてやがる。ったく、分かったよ。俺もお前の塾とやらに通ってやる。そんで、飯の作り方とかも教えろ。そんくらいは融通してくれんだろ?」
「やる気がある限りは教えますよ。途中で投げ出せばそれきりです」
「乗った」
「じゃあひとまず停戦て事で。あ、一応言っておきますが今の戦力程度でしたらいつでも捻り潰せるくらいは念頭に置いておいて下さいね?」
「クソがよぉ」
「あれあれ? 初理ちゃん、いつからお兄と仲良くなったの?」
そんなやり取りを終えた後、タイミング悪く妹が帰ってくる。
身体中をサッパリさせて、ライムミントの香りを全身から漂わせていた。風呂上がりでもこうはなるまいって位に過剰に。
そして邪推する明海の指摘に総司さんが狼狽える。
「そんなんじゃねーって、ガキはあっち行ってろ」
「あれあれー? あたしがガキなら初理ちゃんもガキってことになるよねー? 同い年だもんねー?」
無意識の煽り。総司さんは怒りの表情で手を上げて、妹はそれを戯れあい程度に受け止めた。
俺譲りの防御力じゃ、そんじょそこらの攻撃は通じないだろう。
向こうが手を抜いてくれたと勘違いした妹は、そのまま抱きついてくすぐり攻撃に移った。
のたうち回る、姿形を変えた従兄弟に俺は合掌しながら起き出してきた他の二人の為にも食事の準備を早めるのだった。
腹でも空いてるのか、口端から涎を垂らしている。
「お、起きたか寝坊助め」
「ウルセェぞ。海斗の癖に」
「ん? 俺の癖にとは随分な言いがかりだなぁ」
なんとなく、そんな言葉をどこかで聞いたような気がした。
──無能の癖に、俺様に楯突くなんて烏滸がましい!
あれは確か従兄弟の五味総司の言葉だ。
もし兄妹だとしたら、口調が似通っていても仕方ないが……どうにも引っかかる。
「随分と手際が良いじゃねーか。どこで覚えたんだ?」
口は悪いが、俺の素性が気になるのかグイグイとくる。
俺を敵だ、と言っておきながらどこか実力を認めてくれたのだろうか?
まぁあれだけ叩きのめせば少しは反省したかな?
「ん? どうしてそんなことを聞くんだ?」
「別に、俺が飯に興味持つのはおかしいかよ? 金がねーから食い扶持を少しでも増やしたいんだ。悪ぃか」
「いやいや、結構なことだ。俺も貧乏で稼いでもすぐに売り上げを持ってかれちまったからな。君と同じ五味という苗字の人達に……」
「あ……」
「俺はさ、君をその一族の一員じゃないのかと勘繰っている。やたらと俺たち兄妹に突っかかってくる性根。さっきの態度もそうだ。俺は君に何かしたのか? 不躾な質問で悪いが教えてくれないだろうか?」
黙りこくった彼女に、俺は質問を重ねた。
彼女は言葉を紡げずに苦悶の表情を浮かべていた。
言えないのか、または言いたくないのかは定かではない。
が、こうも黙られちゃ平行線の水掛け論。
何かクッションでもあれば良いなというところへ明海が空腹によって起き出した。
「あたし、復活! あ、お兄何作ってんの? あたしの分は?」
「先に手洗いして来い。そこに簡易給水所を建てた。トイレとかシャワーとか浴びたければご自由に」
「わっ! 至れり尽くせりだ!」
「着替えの準備まではしてないから尽くしてはいないな」
「ちぇー、汗臭いお洋服で続行かー」
「においが気になるなら消臭スプレーがあるぞ?」
「お兄大好き!」
「ったく、現金なやつめ」
ダンジョンに入ったら普通この手のサービスは存在しない。
一部疾風団では通常運転だが、あれはあそこの徹底ぶりがおかしいのだ。俺はそこで得たノウハウをさらに過剰にして提供してるだけに過ぎない。
「良い具合に焼けたが、食うか?」
「俺には手洗いしろって言わねーのかよ?」
紫色の瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。嫌われてるね、どうも。
「なんかこういうの慣れてそうだったから。うちの妹は逆に初めての学園生活だ。俺の前でだけ元気でも、やっぱり心配なんだよ。兄貴としては」
「過保護だな」
五味初理はそう吐き捨てながら串焼きを一口。
すぐに両目を見開いて、自分の手元にある串と俺を見比べた。
「口にあったかな?」
「なんだこの肉!? うめぇえええ! 高級和牛だってこんな旨味発揮しねぇぞ? ただの肉を串に刺したってぜってぇこうはならねぇ! 教えろ、この肉はなんの肉なんだ!?」
「ホーンバイソン」
「はぁ? あのキモいクソ牛がこんな美味いなんて知ってたらもっと絶滅危惧種に追い詰められても仕方ねーだろ。つぅか、そもそもダンジョンモンスターは肉をドロップしねーぞ? ガキでも騙されねー嘘で俺をハメようったってそうは行かねーぞ?」
やはり、年齢の割にはダンジョンを熟知してるような口振りだ。
実は探索者だったり?
でも探索者にしては異様に練度が低いのが気になる。
まるで本来の自分の肉体とは違う体に押し込められたような歪さだ。
だがそんな事、あり得るのか?
左近時さんは魔法少女モードの時と別の肉体を持つのに、彼女はそのままだ。だから本当にこの歳で魔法少女に抜擢されたのだと思うのだ。
しかし違うとしたら?
【嫉妬】はとんでもない能力を隠していることになる。
俺たちに手札を見せない相手に、少しだけ警戒度を上げるのだった。
それはともかくとして、隙あらばメンチを切って威嚇してくる少女だ。彼女は俺を敵対的に見ているのは明らかだろう。
そのように教育されているか、はたまた全く別の……その直感は俺にあり得ない解答を導き出した。
だって、あり得ない。あの人は鑑別所送りになった筈だ。
ここで呑気に学生どころか魔法少女をやってるなんて。
だが事実確認はしておきたい。
今妹がシャワーを浴びてる隙に、俺は彼女に一つの質問を投げつけた。
「もしかして貴方は、五味総司さんご本人ですか?」
「は、はぁ!? 何をもってそう決めつけやがる!」
驚きの声。同時に焦ったように発汗している。緊張と羞恥で体感温度が上がったせいだろう。目の前に異性がいるのに関わらず、制服を捲ってバサバサとお腹に空気を送っていた。
一般の女子なら男の前でまずやらない行為。相手を異性として見てないならともかく、こうもあからさまに同性感を出されたらまず間違いない。
「実はずっと不思議でした。なぜこの子は初めて会ったはずの俺や妹をやたらと目の敵にしているのだろう、と」
「う゛っ!」
「そして初対面、または数度しか顔を合わせてない間柄にも拘らずまるで旧知の仲のような接し方。俺でなくたって不審に思いますよ」
「うぐ……!」
「極め付けは俺と二人きりなのに、まるで同性かのような振る舞いです。俺の周りには普段から女子が多いので俺の前だと何を我慢するかがよくわかるんです。けど貴方にはそれらの反応が見られない」
「は、はぁ? そりゃそいつらがお前に惚れてるっつー話の問題だろ? 勘違い乙!」
「いや、初対面だからこそ其処まで距離感の近い態度は取りません。好き、嫌い以前の問題です。貴方は最初から俺に馴れ馴れしすぎるんです。まるで幼い時から知ってる従兄弟みたいな距離感でしたよ?」
「クソ! お前にだけはバレたくなかったのに!」
やっぱりこの人総司さんか。
しかし問題はその姿形がまるで別物である点だ。
よもや性別の変更までしてみせるとは【嫉妬パワー】とはもっと恐ろしいものじゃないのではないかと推測を浮かべる。
「まぁ貴方の正体が何者でも構わないんですが」
「何を!」
「これ以上この件に関わらないほうがいいですよ。まぁ、もう後戻りできない場所にまできてしまったみたいですが」
あまりにも相違点のない肉体に押し込められた魂に、憐れみの視線を送ると、もう自分でもどうして良いかわからないように食べ終わって何もついてない串を、苛立ち任せに地面に突き刺した。
「ウルセェ、言われなくたって分かってんだ、んな事は!」
「問題はこの後ですね。俺や妹は貴方とは訣別したいです」
「だろうな、俺だってそんな都合よく仲間に入れろなんて言えねぇよ」
「ですが今の貴方は見た目がもう五味総司ではなくなっている。妹も仲良くしたがってるし、俺としては貴方次第のところではあります」
「俺がまた徒党を組んで襲うかもって思わねぇのか?」
「既に【嫉妬】の王から聞いてるでしょうが、俺は既に【強欲】の王、御堂と手を組んでます。以前まであなた方のバックに御堂が居たように、次も同じ力で襲ってきても俺の権力で揉み消せるんですよ。そんな相手に怖がるだなんて時間の無駄じゃないですか?」
「チッ、嫌味な野郎だ」
「お陰様でメンタルは徹底的に鍛えられましたんで。あの日があったから今の俺がいます。そういう意味では感謝してるんですよ?」
「俺の才能のおかげでお前のような化け物が産まれたってわけか?」
「どうとってもらっても構いませんが、俺を狙うという事はもう容易いことではなくなりました。俺を狙えば俺の契約者が貴方を排除すべく動きます。俺が止めてもきっと止まりません。そういう組織が出来上がりつつあります。妹はその末端に位置します」
「あのクソガキですら末端だと!?」
「まぁ、この訓練を汗一つ書かずに乗り越える子達なんで、今の妹と比べるのは酷というか、月とスッポンというか」
「チッ、通りでテメェに負けるわけだぜ。テメェ、あの時どれくらいの力で俺と戦ってた!? 俺は100%だった」
「俺ですか? 本来の力を活かせるのがダンジョン内なのでまずその時点で50%ダウンですよね」
「は?」
「そこから更に自分の正当性を見て分かるように攻撃も回避も封印したので更に半分の25%」
「マテマテマテマテマテ……」
「更に飛び出しそうな契約者を引き止めたりと思考の半分をそっちに奪われてたので半分の12%」
「おい……それ以上言うなよ、惨めな気持ちになんだろ」
「【暴食】の力は使ったので5%と言ったところでしょうか? いやぁ、殴る蹴るを気持ちいいくらい行ってくれたおかげで、俺は計画通り事が進んで万々歳ですよ」
「初めからお前の手のひらの上だったって事かよ?」
「出会ってすぐに因縁つけて来なければ見逃すつもりでいました」
「なら、俺の行いの結果がアレか……」
「そうなりますね。で、どうします。俺の協力者になってここで修行して行きますか? それとも【嫉妬】の悪魔エンヴィに唆されて俺と御堂さんの邪魔をしますか?」
「んなすぐに決められっかよ」
「すぐに答えを出せ、それを幼い俺に言ったのは貴方でしたよね?」
「どうでも良いことばっか覚えてやがる。ったく、分かったよ。俺もお前の塾とやらに通ってやる。そんで、飯の作り方とかも教えろ。そんくらいは融通してくれんだろ?」
「やる気がある限りは教えますよ。途中で投げ出せばそれきりです」
「乗った」
「じゃあひとまず停戦て事で。あ、一応言っておきますが今の戦力程度でしたらいつでも捻り潰せるくらいは念頭に置いておいて下さいね?」
「クソがよぉ」
「あれあれ? 初理ちゃん、いつからお兄と仲良くなったの?」
そんなやり取りを終えた後、タイミング悪く妹が帰ってくる。
身体中をサッパリさせて、ライムミントの香りを全身から漂わせていた。風呂上がりでもこうはなるまいって位に過剰に。
そして邪推する明海の指摘に総司さんが狼狽える。
「そんなんじゃねーって、ガキはあっち行ってろ」
「あれあれー? あたしがガキなら初理ちゃんもガキってことになるよねー? 同い年だもんねー?」
無意識の煽り。総司さんは怒りの表情で手を上げて、妹はそれを戯れあい程度に受け止めた。
俺譲りの防御力じゃ、そんじょそこらの攻撃は通じないだろう。
向こうが手を抜いてくれたと勘違いした妹は、そのまま抱きついてくすぐり攻撃に移った。
のたうち回る、姿形を変えた従兄弟に俺は合掌しながら起き出してきた他の二人の為にも食事の準備を早めるのだった。
11
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。
赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。
そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。
変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。
魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。
すべては気まぐれに決めた神の気分
新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。
そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。
不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる