劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)

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大罪の権能

立ち入り封鎖区画への潜入

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「海斗、わかってるとは思うが、お前はその件には関わるな」

「でも、あのままじゃあワーカー達は仕事を潰されかねないんですよ!?」

「ワーカー以外にも働き口はある。探索者じゃなくてもなれるのが魅力だが、別にそれをしなくたって今すぐ死ぬわけじゃない。今は耐えてくれ」


 ワーカーギルドからの帰り、勝也さんに掛け合うと手出し無用の釘を刺された。

 確かにダンジョンを封鎖されて困るのは探索者の方だ。
 一般人枠のワーカーは、そこに需要があるからまだ仕事としての価値がある。

 勝也さんのいう通り、ワーカーは副業でやってる人が多いのだ。
 今すぐにどうこうとはならない。


「それじゃあ抱えてる幹二先輩達はどうするんですか?」

「俺からも探索者以外のアルバイト先を斡旋してる。人を集めるって事はもう既にお前一人をどうこうしようって話ではない様に思うんだ」

「そう言えば恭弥さんはどこへ?」

「あいつは秘密裏にダンジョンに潜って調査してもらってる」

「俺も潜入する事は……」

「やめておけ、と言っても勝手に行きそうだな。じゃあこれだけは忠告しておく。集めるのは情報だけにしておけ。その日は稼ぐな。それならば許可してやる」

「ありがとうございます」

「言わなくてわかるとは思うが、変装くらいはしておけよ? お前の面はウロボロスに連中に割れてるからな」

「はい」


 季節はちょうどクリスマス。
 俺は仮装グッズを仕入れてダンジョンに向かった。

 



 ダンジョンの出入り口は前回同様数名の見張り。

 認識阻害の指輪を嵌め、素通りする。

 潜入したダンジョンはDランク。
 敢えて高い方に行ったのは扱えるモンスターの幅が多岐にわたるからだ。

 そこら辺に歩いてるパラライズモスをテイムし、風上からウロボロスメンバーのいる方へ痺れ鱗粉を散布。

 これくらいはDランクダンジョンでは日常茶飯事なのか、対応も素早い。
 ここら辺の雑魚の攻撃パターンくらいは熟知してるだろうが、俺が指示出ししたモンスターは厄介さが上回る。

 俺の才能はこういった奇襲にとことん向いていた。

 
「ぐあ、なんだ? パラライズモスが風上に?」

「あんな場所に生息してたっけ?」

「大方下手くそな探索者が釣った奴が迷い込んだんだろ」

「キュアパライズ。ヨシ、これで平気だ。あとで飯奢れよ?」

「くそー、ちょっとした油断が高くついたぜ」


 回復手段を持たない探索者同士ではこう言ったやりとりが多く行われる。回復スキル持ちはこう言った点で引く手数多だ。

 一瞬できた隙。

 差し込む様にレッドスライムをブーツ内に忍び込ませる。

 仮テイムは指示だし後解除。
 最大五枠しか扱えないのでテイムと解除は同時進行で行う。


「熱っち! くっそー今日は厄日か!?」

「どうした?」

「ブーツの中にスライム入ってたわ」

「うわー、赤じゃん。最悪」

「ランクが低かったら死んでたぜ」


 痛いですむだけランクが高い証拠か。

 わちゃわちゃしてるタイミングで再度パラライズモスの鱗粉攻撃。

 災難続きだとくしゃみと足の痛みで意識を散らす見張りの横を俺はさっさと通り抜けて二階層へ。

 二階層はワーム系の巣窟。

 アント、コックローチ、センチピード。

 虫が苦手な女子は嫌がりそうなフィールドだが、うろつくのはむさい男達なので気にせず仕掛ける。

 アント系はテイムした事はあるが、コックローチとセンチピードは初めて出会う。

 けど今日は稼ぎじゃなくて調査のみ。

 手札に加えられないのは惜しいが、その勇姿は目に焼き付けさせてもらうぜ。

 アント系を仮テイムして仲間呼び後、見張りの居場所に突撃後解除。

 ヘイトをチェインさせてモンスタートレインさせてなすりつけた。
 面白いのはアントに混ざってコックローチとセンチピードも混ざってきたことか。


「なんだ!? 誰がモンスターの擦り付けをしやがった!」

「おい! ここは俺ら以外誰もいないはずだぜ?」

「じゃあなんで今こんな目に遭ってるんだ!」

「襲撃者か?」

「テイム系なら直接仕掛けてくんだろ。俺のサーチには引っかからねぇぜ?」

「バーストフレア!」


──ギキィイイイイ!!
──ギチギチギチ!!


 流石、対応には手慣れてるか。
 送り込んだモンスタートレインはあっという間に殲滅された。


「そこ!」


 サーチ持ちが俺の居場所に矢を射掛ける。
 当然、既に場所は移した後だ。

 足跡を残すなんて馬鹿な真似はしない。
 グリーンスライムを踏んづけて足跡消しを徹底している。


「誰かいたのか?」

「直感に反応があった。よく分からんが俺たちを監視してる奴がいるぞ? 気をつけろ」


 勘の鋭い奴が居るな。

 ウロボロスの連中にしては随分と手練れだ。
 これは寄せ集め部隊ではなく、それなりの目的を持って何かしてると思った方がいいだろう。

 本命は三階層か?


 Dランクの三階層……
 もしかして本命はドライアドの命の雫か?

 Cランクダンジョンでは見かけないと恭弥さんは言っていた。
 どこからか目撃情報が入ったのか?

 いや、もっと別の目的もあるのかもしれないな。
 俺は慎重に様子を見守り、どうやってこの階層を抜けようか迷っていた。



 ◇◆◇◆



 その頃恭弥は、Eランクダンジョンの最下層で夥しい量の血と、やたら活性化したモンスターが何かを貪っている場面に遭遇していた。


「これは、子供? なんでこんな場所に? 今助けるぞ!」


 手早くモンスターを始末して、救い出そうとするも、既に命は事切れていた。
 恭弥はもう少し早く潜入していればと自身の間の悪さを嘆いたが、抱きかかえた子供の額が抉れていることに気がついた。

 まるでした跡だ。

 その形状には見覚えがあった。

 魔石病患者の額に埋め込まれる魔石。
 その部位と全く同じ位置に切開痕。


「まさか……あいつら、ダンジョン内で実験を!?」


 すべての点がつながった。
 恭弥はウロボロスとは別の件でもグリードポッドを追っていた。

 それはSNSで話題になるも即座にもみ消される連続失踪事件。
 探索者の二世を狙った失踪に勝也が食いつき、恭弥がその事件を追っていたのだ。

 その事件にウロボロスが関わっていて。
 そしてこの度の招集にはこの実験が関わっていたのだとしたら?

 大元はグリードポッドと言うことになる。
 表向きは今まで通りウロボロスが好き勝手占領しているだけで、実際は……


「クソ、グリードポッドめ! 海斗が救った命の補填をここでしたか! どこまでも自分勝手な!」


 悔しげに拳を壁に叩きつける恭弥。
 写真を撮り、遺体を埋葬して祈る。

 仇は絶対に取ってやる。
 今は眠れ。
 それだけ言って恭弥はEランクダンジョンを後にした。
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