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ダンジョン学園
無能
しおりを挟む<side御堂凛華>
いきなり決闘の申し込みをされるなんて思ってもみやしない。
「あ、あなたのお姉さんと学園のポイントランキングになんの関係があるのですか?」
「知らんぷりしたって無駄だし? アンタ、例のゲームの新人っしょ? 証拠は上がってるし。よもやあんな卑怯な奴が同じオンナだなんて思わんかったけどなぁ!」
背中から抜き出したバットを構える関西首席。
いえ、犬飼さんと言いましたか。
ひどい言いがかりです。
全く、例のFクラス生のせいですよ!
上位に来ずにTPを荒稼ぎなんてするから、保身に走った学園側が大した功績も残さぬ私に全ての責任を押し付けてくるのです。
謎のFクラス生に対する怒りが一点追加されました。
「何か勘違いしてますけど、この学園のトップは私ではありませんよ? うちの学園の教師が勝手に私の名を騙ったのです」
「アンタ、Aクラスの首席なんやろ? なのに自分より上が居るっちゅーんか?」
「だから謎なんです。今のその方のポイント見ます? はっきり言って頭おかしいですよ?」
私は端末を使って現在のポイントと、トップのポイントを見せつけた。
「なんじゃこりゃ! あんた、大した事ない奴やな! まぁ一年生ならこんなもんやろ。あーしも踏破したの二年になってからやし」
「私はずっと一番でした。この相手がおかしいのです! まだ一学年の一学期終了でこれですよ?」
「へぇ、アンタんところの学校はアンタ以外敵なしやったんか。でも、実際は違う?」
「どこから話したものかしら。犬飼さん、だったかしら?」
「真希でええで」
「では真希さん。率直に言います。あなたはもしこのスコアをFクラス生が出したと聞いたら信じますか?」
「ジョークにしてはおもんないな。しかし目がマジって事はマジなん?」
「私より優れてる存在は今まで私のクラスには居ませんでした」
「大層な自信やな。けど二学期で100万クラスならそう思ってもしゃーないわ。うちらの方がスコアはちょっと上やけど、その上はおらんかった」
「クラス対抗戦でもB~Eクラスにも見かけません」
「なんやホラー染みてきたな」
「そしてFクラス生は現在一人を除いて全員が上位クラスへと編入してます。たった一人、いまだに才能が覚醒しない生徒を除き、です」
「そらおかしいわ。それなりにダンジョンに通ってるんなら一匹くらいスライムやゴブリン位いてこましてるやろ? 覚醒してないんやなくて、学園側に存在を秘匿されてるんちゃう?」
「わかりません。なんらかの要素があって学園側のセンサーに引っかからない手段を得たのかもしれません」
「謎やなぁ」
「ところで真希さん」
「なんや?」
「Aクラス生とFクラス生のトレジャー換金レートはどれくらいの差があると思いますか?」
「なんや、藪から棒に。Fクラスなんてどうせ大して功績上げられんやろし、パーティ推奨やから+10倍くらいか? Aに行くほど下がってくみたいな? 学園側も生徒を預かってるんやし、そんくらいは面倒見るやろ」
真希は快活に笑う。
実際は私もそう思っていた。
「これは兄様から聞いた話なのですが……」
「おう、噂のAランク探索者様やな? 姉貴のライバルや」
「この学園はAに至ってようやく通常レート。Fだと1/20にまでポイントが抑えられるそうです。9割5分は学園の運営費に回されるそうです」
「待て……それが本当やったら実際はもっとやばいポイントやっちゅーんか? 今で5000万てことは……」
「10億ではないか? 兄様はそう予測されました」
「そらプロなら誰でも欲しがるわ。ちゅーか、そのポイントを押しつけられたアンタはご愁傷様っちゅーわけやな?」
真希は他人事のようにカラカラと笑う。
「本当に。これからも真希さんのような方が訪ねてくるとなると頭が痛くなる思いです」
「でも、この相手が才能ありなら席順抜かれるんちゃうんか?」
「いっそ抜かせたほうが気苦労は減るのかもしれませんね」
「学園側はいい顔しなさそうやけどなー、アンタんとこのオトンはどうなん? 成績の維持をしろとか口出ししたりせーへんの? ウチのは煩いでー?」
「私は父とは袂を分かち、兄のギルドに拾い上げてもらう予定ですが……」
「お兄が例のランカー君を欲しがった?」
「はい。頭痛の種を手元に置く事でこれ以上勢力図が乱れるのを阻止する算段だそうです」
「そら、在学中に億稼ぐなんてどこも欲しがるやろ、姉貴でも欲しいと思うもん。なんだったらあーしも声かけよっかな。なんて子や?」
「それが先生は無能としか仰らず」
「迷宮入りっちゅーわけか。よっしゃ、あれこれ考えるのも性に合わん。今から教室に突撃しに行くで! 教室ならロッカーに名前ぐらい入れてるやろ!」
バシンと背を叩かれ、なぜか一緒に行くことに。
なんて自分勝手な人だろうか。
実際に年上だけど、推しの強さと言うか、一緒にいたらずっと巻き込まれそうな強引さを感じた。
「誰も居らへんな?」
「ええ、兄様もそれで手を焼いているようです。いつ訪ねても人は居ないと」
と、そこへ一人の少年が現れる。
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「私はこの学園の一年の首席をやらせて貰ってる御堂凛華と申します」
「僕は……」
彼は自らを無能と名乗った。
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