ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)

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171話 奇抜な性格は料理のせい!?

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『これはまた、新しい知見を得てしまった。まさか眷属達がこれほどまでに美味だったとは。本国に持ち帰って色々検討するとしよう。いやぁ、馳走になった』

 食後、ずっとライオンの人形のふりをしていた存在が球に喋り出した。
 よく見たら全然ライオンじゃない。
 炎のように燃え広がる五つの目が、ライオンの鬣に見えてるだけだった。全然可愛げがない。
 人形だから俺の技術じゃミンチ肉にしかならないけど、食べたらきっと怒られるんだろうなー。
 瑠璃もそういう意味合いでは試せてない。
 どうにかして味見したいものだが。

「ホテップがそこまでいうほどだった?」

 ホテップという名前らしい。
 ニアちゃんは、ついさっきまで自分が何をしていたのかすっかり記憶を消してしまったのだろうか?

 イストくんにご馳走した、カエル君。
 ムーンビーストというんだっけ?
 それとサハギンとマッドアングラーのコンソメスープとつみれ汁を鍋ごとラッパ飲みしたときは周囲の反感を買っていたよね?

 それに対抗してか、ミーアちゃんが出てくる料理を片っ端から平らげていたっけ。
 美味しく食べてくれたんなら嬉しいけど、あろそい合う必要まではなかった気がするよ。

 もしここが店だったら普通に出禁認定間違いないとこだよ?

「お褒めに預かり光栄です。それで、本国というからにはこことは違う国にあるのですか?」

『いいや。国どころか世界が違う。我らは増えすぎた同胞の次なる移住先を求めてやってきた、いわば先遣隊でな。煮ても焼いてもくえんあいつらがここまで上手くなると知ってもらえれば、無理してここを攻める必要は無くなった。どうだろう、一度我々の世界へ来てはもらえぬか?』

 そう言って、15センチ程度の銀色の鍵を手渡される。アラベスク模様で描かれたその鍵は、緻密な細工がされており、すごく貴重品という感じだ。

「わざわざ招待ありがとうございます。しかし俺にはまだこの地でやり残したことがたくさんあるのです」

『そうか、残念だ。では、再びコチラん日軍勢を率いてやってくる際、彼らに最高のもてなしをしてやってはくれないか?』

 それくらいだったらいいかな?

「それくらいでしたら」

『おお、引き受けてくれるか! ならば早速上に掛け合ってみよう。それで、掛け合うにも現物をいくつか見繕わなければならぬ。その都合をつけていただきたいが構わぬか?』

「手持ちの物の中からでしたら」

 そう言って、加工したシャン、ムーンビースト、サハギンを見せる。先ほど提供した料理は全てこれが使われているのだ。
 
『待て。なんでそんな大事な話を地主の許可なく進めているのだ?』

 瑠璃だ。遅れてルゥちゃんもやってくる。

「ちょっと、瑠璃。急にどうしたの? あ、本宝治さん。またあなたですか?」

 俺を見るなり憤慨してるが、誤解だ。

「客をもてなしてただけで酷い言われようだ」

「軒先の挨拶だけで終わらせようっとせず、そういう話は私に持ってきてくれないとですね!」

「そういうのは伝令係の仕事だぜ? ポンちゃんにいうことじゃねぇよ」

 激昂するルゥちゃんにヨッちゃんの助け舟。
 そうそう、そういうのは見張り係の仕事だって。

 言いながらも壁からこっち見てたサボりの兵士がそれだったのではないかと思い出して、そっと記憶を消す。

 美味しくいただいてもらったので、彼らは役目を果たしたと言っていいだろう。俺は悪くない。
 真面目に仕事をしてないあいつらがいけないんだ。

『突然割り込んできて、話の腰を折るな。クトゥルフの模造品』

『そっちこそ、我々の本懐を忘れて勝手なことをされては困るな。ナイアルラトホテップの飼い犬よ』

「なんかいがみあってる感じだね」

「昔から仲が悪いのよ、こいつら」

 ニアちゃんが他人事のように吐き捨てる。

「お互いの付き人みたいなもんじゃなかったのか?」

「ホテップ? 違うよ。こいつらは情報伝達係だから。本国に情報を与えて、本国から情報をもらう係。あたし達はその情報を元に行動してるんだよね」

 とミーアちゃん。

「そうですね、彼女のおっしゃる通りです。ですが、それを伏せてあまり情報をくれないのが瑠璃でした」

 ルゥちゃんもなんだかんだ苦労してるような立ち位置のようだ。

「と言っても、本国も情報を小出し小出ししてるから。無理もないんじゃないかしら?」

「部下が言うことを聞いてくれないのも含めてですか!?」

「あなたが弱いのを人のせいにしないでちょうだいな」

『|◉〻◉)やめてー! 僕のために争わないでー!』

「邪魔よ!」

 パシンと跳ね除けられ、サハギンは悲劇のヒロインみたいな顔で同胞に解放されてた。

『|ー〻ー)あふん』
『|◉〻◉)しっかりしてー』
『|◉〻◉)寝るな、寝たら死ぬぞー』
『|◎〻◎)ちーん』
『|◉〻◉)死んだーー!』

 なんだ、この茶番。

「こんなの違うでしょ! そりゃ、確かに私は弱いけど、ここまで馬鹿にされる謂れはないはずよ!」

「なんていうか、ごめんなさい。サハギンってこんなに愛嬌あったかしら? シャン、ムーンビースト出ておいでなさい」

『┗Θ〻Θ)ノ チョリーッス』
『≦◎§◎) 主人殿、何用か! ニンニン』

 これまた濃い性格が付いてるな。
 さっきまではここまで濃くなかったよね?
 これは一体何事だろうか?
 
「さっきからなんで慌てふためいてるんだ?」

 事情が全くつかめないヨッちゃんが俺たちを変な目で見てくる。
 そりゃ、言葉が聞こえてないんならそうなるな。

 しかし聞こえてる俺たちからしてみたら、一大事だ。
 俺、というより私益者達がパニックになっていた。

「これ、もしかして同胞を料理して食わせたのが問題でしたかね?」

「え、ポンちゃんの料理? その前からこの腐れツミレはサボり癖あっただろ?」

「そうですよ、コミカルな個体は複数いました」

 じゃあ、俺のせいじゃないかー。

「とはいえ、黙して語らずだったシャンがこのように意思表示ができるようになったのは進歩ね」

 じゃあよかったのか?

『|◉〻◉)ノ 涙拭けよ、マスター』

 確かにサハギンはユニークなやつで特殊な個体だが、それなりに主人を思っているのか、慰めてくれている。
 それにしたって気安いが、ルゥちゃんはそこが気に入らないのだろう。

「だからってここまでおちょくられるのは違くないですか?』

「それは尊敬される功績をあげてないからであろう? せめて公式に手渡されたポイントレースとやらで人間達のトップに立ってみればいいんじゃない?」

「それが難しそうだったからこっちで頑張ってたのにー」

 その結果がこれじゃあ、やる気もなくすか。

「俺たちは詳しくないんですが、そのポイントって何をソースにしてるんですか?」

「加工よ。私たちに与えられた加工のスキルがあるじゃない? それで加工した回数を累計してるみたいなの。てっきりあなた達もその参加者だと思っていたのだけど?」

 だから仲間っぽい振る舞いでやってきてたのか。

「あいにくだけど、俺は参加してないよ。クララちゃんもそのことは理解してるはず」

「そういえば、知り合いだったようですね。して、その倉持さんからあなたはどのようにみられてるんですか?」

「できれば参加はしないでほしい。絶望でしかないから、とのことです。別にお金にも困ってないし、無理して参加するのもちょっとな、と思うわけですが」

「あれって底辺救済のスタートアップ職とかだろ? 今のオレたちにゃ無用の産物だもんな」

 ヨッちゃんのいう通り。

「あと2年早く開催してたら、俺たちが参加してた世界線もあっただろうが、そんな上手い話はなかったんだよな」

「むしろ俺たちの活躍があったから、あのおっさんが本腰入れたまであるぞ?」

 それはありそう。

『その男、こともなげにエネルギーを量産する手立てを持っておるぞ。加工スキルをすでに複数持ち合わせておる』

 瑠璃が俺の秘密を暴露した。
 ルゥちゃんがなんともいえない顔で瑠璃を睨みつけている。
 これはやらかしてるなぁ。

 それを聞いて、黙ってられないとばかりに口を開いたのはミーアちゃんだ。

「それ本当? どうやって?」

「支配下にあるダンジョンで料理してそのあと食事するだけでこのダンジョンんぽエネルギーを賄ってます」

「ああ、ダンジョン内で料理するだけなのね。たったそれだけでエネルギーがもらえるの?」

「俺以外の加工スキルも持ちでも、それが可能であると検証結果が出てますよ。現にクララちゃんがその証拠を持ってます」

「あの子が?」

「キュ(そこから先は妾が説明しよう)』

「あら、その子。ただのモンスターじゃないわね」

「気づいてなかったの、ミーア。そいつこの地のダンジョンの傀儡よ? 私たちがここにきてからずっとマークしてたわ」

「え、言ってよお姉ちゃん」

 オリンの奴、お客さんにそんな不躾なことしてたのか。ニアちゃんは気づかない方が悪いとミーアちゃんを叱りつけていた。
 俺は一体何に巻き込まれているんだろうな。
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