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136話 ダンジョン封鎖計画 4
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さぁ、たこ焼きでも焼くか。
そんな感じで意気投合した俺たちだが、たこ焼きを焼く専用の鉄板を持っていないことに気がついた。
それ以前に作り方を詳しく知らない。
作る以前の問題だった。
「え、ポンちゃんたこ焼きの作り方しらねぇの?」
「ヨッちゃん知ってるの?」
「オレが知るわけねぇじゃん。ポンちゃんが知ってると思ってオレは食うつもりでいたんだぞ? どうするよ、この腹はもうたこ焼きを食う気でいっぱいになってるぞ?」
どうしてくれる、と悲しげな視線で訴えかけてくる。
なんでこういう時はオレだけの責任になるんだろうか。
これがよくわからない。
「それ以前に専用の鉄板すらないんだよな」
「あー」
<コメント>
:たこ焼きくらいいつでも食えるだろ
:残念ながらFにたこ焼きを食う資格は……
:そうなの?
:ソースはD、マヨネーズもD、鰹節がCなのよ
:つまり、普通に食えてるのはC以上ってこったな
:たこ焼きも自由に食えないこんな世の中じゃ!
:じゃあお好み焼きもダメじゃん
:天かすはFでもいけるぞ
:〝かす〟ってついてるのは謎に食える仕組み
:この仕組み作ったの誰よ
:金剛満
:誰?
:現役総理大臣の名前くらい覚えとけ!
:ここ、テストに出ますよー
:蛸自体がモンスター食材だからコストも当然高くなるわけで
:今って天然物入手できないんだっけ?
:ダンジョン産の方が高価買取されるから見向きもされなくなった説好き
:実際にダンジョンができてから野生動物凶暴化したもんな
:それってダンジョンの影響なのか?
:少なくともそう言われてる
:ダンジョンさんだろうとあまり気にしなくなったもんな
:それ!
:誰も2人のテンション降下具合気にしてなくてわろた
:この2人ならいくらでも作りようあるだろ
:ほんまやで
:基本的には鉄板に半球状の穴を作ってそこで手注ぐしでほじくりながら球状に仕上げていくんだ
:二度焼きカリカリのは美味いぞぉ
:最終的にタコ入ってなくても食える
:Fで食えるのはタコとソース、マヨ、鰹節、紅生姜の入ってない天かす玉だからな
:悲しい
:たこ焼きですらないんか
へー、世の中に実際にたこ焼きを食べたことのない人って結構いるんだ。
俺たちだけじゃなかったんだな。
普通に夜店で売ってるのに、実際に買えるのはC以上だったなんて。
通りで口に運んだ覚えがないわけだ。
<コメント>
:《鮮焼》焼き台と道具ならいつでも貸すぞ?
:鮮焼さんきた!
:いうてそこから脱出可能なの?
:そういえばダンジョンに閉じ込められてるんだった!
「ダンジョンの封鎖ですか?」
何やら盛り上がってるダンジョン外でのイベントに耳を向ける。
オリンは何も言ってこないし、大丈夫じゃないの?
「菊池さん、借りられるならいくらでも借りたいです。今伺いますね」
そう言ってからワープポータルで菊池さんのお店に行こうとしたら、普通にいけた。
「すいません、セット一式借り受けます」
「お、普通にやってこれたな? ダンジョンに出向くのはオレは無理だった。それを知ってか、大輝は言ったら最後と思ってるようでな。セットはこいつだ。予備はいくらでもあるからな。どれ、作り方もここで教えてやるか」
「助かります」
「具材は普通のだけどな。あっちの坊主、じゃなかった嬢ちゃんにも食わしてやんな。多少は食欲も満たされるだろうぜ?」
ヨッちゃんのことまで気にしてもらってすいません。
俺も事前に女性だと言ってなかったのでこういう混乱をもたらす。
ずっと死ぬまで男装していくと思ったから、あえて明かさなかったんだけどな。
もうすでに作ってあったたこ焼きを土産に、しっかり火の入った鉄板にタネが投じられる。
それを専用の鉄串で半回転させながら焼き上げていく。
焼き上がる頃には綺麗な球場に早替わりだったが、見て覚えただけでうまくできるとは思えなかった。
お土産を持ち、帰り際に。
「このゲート、ダイちゃんだけは出入りできるけど、菊池さんは無理だったってことですか?」
「ああ、うんともすんとも行かねぇ」
「けどダイちゃんは入れる?」
「もしかしたら洋一の扱う加工スキル持ちなら入れる資格があるとかじゃないのか?」
「なら行き来できる人は限られてきますね」
「選りに選って戦闘力皆無の人選ばかりだ」
「一応ミィちゃんも加工組ですけどね」
「あのハリケーンミキサーが?」
「ミキサーなので。オレのミンサーよりねっちり系のミンチを作れますよ。多分ユッケやネギトロを作るのに向いてるんだと思います。問題はそれを活かす知識を持ってないってことですね」
「そうか、政府がダンジョンをどうしていくのかは心配だが、洋一が行き来できるんならそれでいい。ただ相方の方はどうだ? マジックキャスターなんだろ?」
加工系じゃないことを気にしている菊池さん。
「地面でだって眠れますし、別に潔癖症でもないですし。食って寝れる環境があればなんとかなりますよ」
「そうか、F生まれってのはそう悪いもんじゃなかったか」
「今にしてみたら、そう思うこともできるってだけです」
「いつでも協力する。あ、鉄板や道具は返さなくていいぞ。オレはいつでも購入できるからな」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
それだけ残して菊池さんのお店を去る。
戻るまでに十数分かかったものだから、ヨッちゃんは待ちくたびれていた。
「おーそーいー! 鉄板もらいにいくだけで何時間かかってるんだよ!」
「そんなに経ってないだろ? それに機材だけもらっても扱い方も知らないんじゃ意味がないって焼き方のレクチャーをしてもらってたんだ。というわけでお土産だ」
「たこ焼きか!」
「ご名答。こっちの食材のが焼き上がるまでそれで我慢しててくれ」
2パックもらった内、1つをヨッちゃんに、もう一つを自分のもとに。
そうそう、この味だ。
どこで食べたっけかなと思えば、菊池さんのところのメニューで食べたのを思い出す。
きっとヨッちゃんも初たこ焼きは菊池さんのお店だろう。
モーゼではこういう俗っぽいメニューは好まなかったからな。
蛸を扱う機会がなかったのだ。
調理は滑りをとってボイルするだけとは聞いたが、菊池さんがそれだけの仕事で済ませるわけがないって信頼がある。
焼きながら出来上がったのを味見して、その後に菊池さんのを食べ比べ。
やっぱりな、という感想と共に、茹で以外の何かのヒントを探せないかと失敗を繰り返す。
有に数百個は出来上がったんじゃないかと思うくらいの試行錯誤の果て、ついに自分だけの一皿が完成する。
「もうたこ焼きは見たくねぇ」
ヨッちゃんはお腹を大きく膨らませながら、その場でダウンした。そりゃ作ったやつをその場で平らげたらそうでしょうよ。
菊池さんへのお土産は無事に死守されたし、それはそれでいいかと考えておく。
「これが、オレの出した答えです」
「わざわざ持ってきてくれたのか? 食材の方の味は?」
「生とボイル、そして熟成乾燥の三種を持ち込んでます。どちらもまだ神経が生きてるのか動きます。その際に吸盤は外しました」
「まーた生命力が強い系か」
「どうやらまた世間をお騒がせするタイプの食材ですが」
「いや、そいつを使いこなすのも料理人の仕事だ。こいつはありがたくいただいとくよ。大輝! 修行は一旦辞めてお前も食え!」
菊池さんが呼ぶと、奥からダイちゃんがやってくる。
以前別れた時より随分としっかりした顔つきになっていた。
「いやー、まいったぜ。これからランクを上げようというところでダンジョン閉鎖だろ? 修行に磨きがかかっちまってな。今も集中的にしてたんだ。やり始めたら楽しくなってきちまってさ」
「修行を楽しいって思えるうちはいいけどな。ほら、洋一が早速自分の味を見つけてきたぞ。早速いただこうじゃないか」
「お、たこ焼きか。たこ焼きなら一過言あるぜ?」
「うちの店の味とあんまり比べてやるなよ?」
「ポンちゃんがうちの店の味に劣るもんを持ってくるわけねーじゃん」
「それもそうだな」
2人してハードルを上げないでほしい。
「どうですか?」
「100点満点中、240点」
「それだけじゃねぇ、この衣との一体感。さらに仕掛けがしてあるぞ。付け合わせのアルコールも考えてやがるな?」
「さすがですね、これはハイボールと合わせて考えました」
「なるほどな、確かに美味いが、噛み締めるたびにどこかで少しもの寂しい気もしたんだ。それが、付け合わせの酒でさらに化けるのか」
「うちの仕掛けを見抜いた上で、この進化っぷりよ。たこ焼きの作り方すらしらねぇ洋一がだぞ? 大輝、お前はこの男の背中に追いつけるか?」
「もうとっくに空の上だが、後一歩でその空に飛び出すための羽が手に入る。あとは諦めずに突き進むまでよ!」
親子の仲睦まじい。
こういう親子関係が俺も欲しかったな。
それがよりによってあんなのが父親とか、世の中不公平だ。
「じゃあ、俺はこの辺で」
「ご馳走さん!」
「またな、洋一! こいつもうちの店風に改良しといてやるよ!」
菊池さん一家に別れを告げて、ダンジョンに戻る。
世の中に出回っても、菊池さんならこいつを上手い一品に仕上げてくれるのだろうなと信頼があった。
「こっちのダンジョンは相変わらず常夏だなぁ」
「お、おかえりー」
「ただいま」
「菊池さんなんだって?」
「ハイボールと合わせると飛び抜けてうまくなるって見抜かれた」
「へいへい! へーい!」
「何、その、何?」
威嚇するように俺へ謎のポーズをお披露目するヨッちゃん。
「それを相棒のオレに宣告なしで提供してたのか、お前! 真っ先に通達することだぞ!」
<コメント>
:腹一杯になってから教えるとか鬼かな?
:たこ焼きはソースとマヨネーズだけでも上手いから
:酒と合わせて進化するのは鮮焼さん仕込みか
:あそこのメニューにもう一品加わる日も近い?
「ごめんって、完成するまでに試行錯誤してたんだよ。完成品にそれが合うってだけで、それ以外のはそうでもないからさ。もう一回焼くけどいる?」
「くう!」
さっきまでたこ焼きを当分見たくないって言ってたのに、もっと上手い食い方があると知るなり現金なもんだ。
「美味い!」
今日一の笑顔で決めポーズ。
彼女なら、この場所に閉じ込められてもなんら問題なく生きていける、そんな予感がする俺だった。
そんな感じで意気投合した俺たちだが、たこ焼きを焼く専用の鉄板を持っていないことに気がついた。
それ以前に作り方を詳しく知らない。
作る以前の問題だった。
「え、ポンちゃんたこ焼きの作り方しらねぇの?」
「ヨッちゃん知ってるの?」
「オレが知るわけねぇじゃん。ポンちゃんが知ってると思ってオレは食うつもりでいたんだぞ? どうするよ、この腹はもうたこ焼きを食う気でいっぱいになってるぞ?」
どうしてくれる、と悲しげな視線で訴えかけてくる。
なんでこういう時はオレだけの責任になるんだろうか。
これがよくわからない。
「それ以前に専用の鉄板すらないんだよな」
「あー」
<コメント>
:たこ焼きくらいいつでも食えるだろ
:残念ながらFにたこ焼きを食う資格は……
:そうなの?
:ソースはD、マヨネーズもD、鰹節がCなのよ
:つまり、普通に食えてるのはC以上ってこったな
:たこ焼きも自由に食えないこんな世の中じゃ!
:じゃあお好み焼きもダメじゃん
:天かすはFでもいけるぞ
:〝かす〟ってついてるのは謎に食える仕組み
:この仕組み作ったの誰よ
:金剛満
:誰?
:現役総理大臣の名前くらい覚えとけ!
:ここ、テストに出ますよー
:蛸自体がモンスター食材だからコストも当然高くなるわけで
:今って天然物入手できないんだっけ?
:ダンジョン産の方が高価買取されるから見向きもされなくなった説好き
:実際にダンジョンができてから野生動物凶暴化したもんな
:それってダンジョンの影響なのか?
:少なくともそう言われてる
:ダンジョンさんだろうとあまり気にしなくなったもんな
:それ!
:誰も2人のテンション降下具合気にしてなくてわろた
:この2人ならいくらでも作りようあるだろ
:ほんまやで
:基本的には鉄板に半球状の穴を作ってそこで手注ぐしでほじくりながら球状に仕上げていくんだ
:二度焼きカリカリのは美味いぞぉ
:最終的にタコ入ってなくても食える
:Fで食えるのはタコとソース、マヨ、鰹節、紅生姜の入ってない天かす玉だからな
:悲しい
:たこ焼きですらないんか
へー、世の中に実際にたこ焼きを食べたことのない人って結構いるんだ。
俺たちだけじゃなかったんだな。
普通に夜店で売ってるのに、実際に買えるのはC以上だったなんて。
通りで口に運んだ覚えがないわけだ。
<コメント>
:《鮮焼》焼き台と道具ならいつでも貸すぞ?
:鮮焼さんきた!
:いうてそこから脱出可能なの?
:そういえばダンジョンに閉じ込められてるんだった!
「ダンジョンの封鎖ですか?」
何やら盛り上がってるダンジョン外でのイベントに耳を向ける。
オリンは何も言ってこないし、大丈夫じゃないの?
「菊池さん、借りられるならいくらでも借りたいです。今伺いますね」
そう言ってからワープポータルで菊池さんのお店に行こうとしたら、普通にいけた。
「すいません、セット一式借り受けます」
「お、普通にやってこれたな? ダンジョンに出向くのはオレは無理だった。それを知ってか、大輝は言ったら最後と思ってるようでな。セットはこいつだ。予備はいくらでもあるからな。どれ、作り方もここで教えてやるか」
「助かります」
「具材は普通のだけどな。あっちの坊主、じゃなかった嬢ちゃんにも食わしてやんな。多少は食欲も満たされるだろうぜ?」
ヨッちゃんのことまで気にしてもらってすいません。
俺も事前に女性だと言ってなかったのでこういう混乱をもたらす。
ずっと死ぬまで男装していくと思ったから、あえて明かさなかったんだけどな。
もうすでに作ってあったたこ焼きを土産に、しっかり火の入った鉄板にタネが投じられる。
それを専用の鉄串で半回転させながら焼き上げていく。
焼き上がる頃には綺麗な球場に早替わりだったが、見て覚えただけでうまくできるとは思えなかった。
お土産を持ち、帰り際に。
「このゲート、ダイちゃんだけは出入りできるけど、菊池さんは無理だったってことですか?」
「ああ、うんともすんとも行かねぇ」
「けどダイちゃんは入れる?」
「もしかしたら洋一の扱う加工スキル持ちなら入れる資格があるとかじゃないのか?」
「なら行き来できる人は限られてきますね」
「選りに選って戦闘力皆無の人選ばかりだ」
「一応ミィちゃんも加工組ですけどね」
「あのハリケーンミキサーが?」
「ミキサーなので。オレのミンサーよりねっちり系のミンチを作れますよ。多分ユッケやネギトロを作るのに向いてるんだと思います。問題はそれを活かす知識を持ってないってことですね」
「そうか、政府がダンジョンをどうしていくのかは心配だが、洋一が行き来できるんならそれでいい。ただ相方の方はどうだ? マジックキャスターなんだろ?」
加工系じゃないことを気にしている菊池さん。
「地面でだって眠れますし、別に潔癖症でもないですし。食って寝れる環境があればなんとかなりますよ」
「そうか、F生まれってのはそう悪いもんじゃなかったか」
「今にしてみたら、そう思うこともできるってだけです」
「いつでも協力する。あ、鉄板や道具は返さなくていいぞ。オレはいつでも購入できるからな」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
それだけ残して菊池さんのお店を去る。
戻るまでに十数分かかったものだから、ヨッちゃんは待ちくたびれていた。
「おーそーいー! 鉄板もらいにいくだけで何時間かかってるんだよ!」
「そんなに経ってないだろ? それに機材だけもらっても扱い方も知らないんじゃ意味がないって焼き方のレクチャーをしてもらってたんだ。というわけでお土産だ」
「たこ焼きか!」
「ご名答。こっちの食材のが焼き上がるまでそれで我慢しててくれ」
2パックもらった内、1つをヨッちゃんに、もう一つを自分のもとに。
そうそう、この味だ。
どこで食べたっけかなと思えば、菊池さんのところのメニューで食べたのを思い出す。
きっとヨッちゃんも初たこ焼きは菊池さんのお店だろう。
モーゼではこういう俗っぽいメニューは好まなかったからな。
蛸を扱う機会がなかったのだ。
調理は滑りをとってボイルするだけとは聞いたが、菊池さんがそれだけの仕事で済ませるわけがないって信頼がある。
焼きながら出来上がったのを味見して、その後に菊池さんのを食べ比べ。
やっぱりな、という感想と共に、茹で以外の何かのヒントを探せないかと失敗を繰り返す。
有に数百個は出来上がったんじゃないかと思うくらいの試行錯誤の果て、ついに自分だけの一皿が完成する。
「もうたこ焼きは見たくねぇ」
ヨッちゃんはお腹を大きく膨らませながら、その場でダウンした。そりゃ作ったやつをその場で平らげたらそうでしょうよ。
菊池さんへのお土産は無事に死守されたし、それはそれでいいかと考えておく。
「これが、オレの出した答えです」
「わざわざ持ってきてくれたのか? 食材の方の味は?」
「生とボイル、そして熟成乾燥の三種を持ち込んでます。どちらもまだ神経が生きてるのか動きます。その際に吸盤は外しました」
「まーた生命力が強い系か」
「どうやらまた世間をお騒がせするタイプの食材ですが」
「いや、そいつを使いこなすのも料理人の仕事だ。こいつはありがたくいただいとくよ。大輝! 修行は一旦辞めてお前も食え!」
菊池さんが呼ぶと、奥からダイちゃんがやってくる。
以前別れた時より随分としっかりした顔つきになっていた。
「いやー、まいったぜ。これからランクを上げようというところでダンジョン閉鎖だろ? 修行に磨きがかかっちまってな。今も集中的にしてたんだ。やり始めたら楽しくなってきちまってさ」
「修行を楽しいって思えるうちはいいけどな。ほら、洋一が早速自分の味を見つけてきたぞ。早速いただこうじゃないか」
「お、たこ焼きか。たこ焼きなら一過言あるぜ?」
「うちの店の味とあんまり比べてやるなよ?」
「ポンちゃんがうちの店の味に劣るもんを持ってくるわけねーじゃん」
「それもそうだな」
2人してハードルを上げないでほしい。
「どうですか?」
「100点満点中、240点」
「それだけじゃねぇ、この衣との一体感。さらに仕掛けがしてあるぞ。付け合わせのアルコールも考えてやがるな?」
「さすがですね、これはハイボールと合わせて考えました」
「なるほどな、確かに美味いが、噛み締めるたびにどこかで少しもの寂しい気もしたんだ。それが、付け合わせの酒でさらに化けるのか」
「うちの仕掛けを見抜いた上で、この進化っぷりよ。たこ焼きの作り方すらしらねぇ洋一がだぞ? 大輝、お前はこの男の背中に追いつけるか?」
「もうとっくに空の上だが、後一歩でその空に飛び出すための羽が手に入る。あとは諦めずに突き進むまでよ!」
親子の仲睦まじい。
こういう親子関係が俺も欲しかったな。
それがよりによってあんなのが父親とか、世の中不公平だ。
「じゃあ、俺はこの辺で」
「ご馳走さん!」
「またな、洋一! こいつもうちの店風に改良しといてやるよ!」
菊池さん一家に別れを告げて、ダンジョンに戻る。
世の中に出回っても、菊池さんならこいつを上手い一品に仕上げてくれるのだろうなと信頼があった。
「こっちのダンジョンは相変わらず常夏だなぁ」
「お、おかえりー」
「ただいま」
「菊池さんなんだって?」
「ハイボールと合わせると飛び抜けてうまくなるって見抜かれた」
「へいへい! へーい!」
「何、その、何?」
威嚇するように俺へ謎のポーズをお披露目するヨッちゃん。
「それを相棒のオレに宣告なしで提供してたのか、お前! 真っ先に通達することだぞ!」
<コメント>
:腹一杯になってから教えるとか鬼かな?
:たこ焼きはソースとマヨネーズだけでも上手いから
:酒と合わせて進化するのは鮮焼さん仕込みか
:あそこのメニューにもう一品加わる日も近い?
「ごめんって、完成するまでに試行錯誤してたんだよ。完成品にそれが合うってだけで、それ以外のはそうでもないからさ。もう一回焼くけどいる?」
「くう!」
さっきまでたこ焼きを当分見たくないって言ってたのに、もっと上手い食い方があると知るなり現金なもんだ。
「美味い!」
今日一の笑顔で決めポーズ。
彼女なら、この場所に閉じ込められてもなんら問題なく生きていける、そんな予感がする俺だった。
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