ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)

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134話 ダンジョン封鎖計画 2

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「と、いうわけで、まずは持ち込み素材の処理からしていきましょうか」

「やった! 船上パーティの飯も美味かったけど。やっぱりポンちゃんの味付けの方が好きー」

「そうかー? 船での飯も俺は新鮮味があって好きだったけどな」

 カメラを網の上にセットして、そこに串打ちしたチョウチンアンコウの肉をセット。

 マッドアングラーという毒にも薬にもならないあの肉が、俺のミンサー+腸詰めから化けた香辛料を一振りした結果、どう化けたかの検証会である。

 <コメント>
 :船? ポンちゃんお船乗ってきたの?
 :今の時期船乗ってやるパーティーとかあるっけ?
 :口ぶりからヨッちゃんも乗ってたっぽい
 :確か近所の兄ちゃんが国主催のパーティ行くっていってた
 :国主催かー
 :轟美玲様もご招待らしかったね
 :Sランク以上かー
 :兄ちゃんAだったけどね
 :どういうことだ?
 :どうも35~25歳のA~Sランクで日本国籍の人だけ呼んだ謎のパーティーっぽい
 :謎すぎる
 :まるで見覚えのない親戚を洗いざらいするみたいなパーティやんな
 :生き別れの家族でも探してたんか?

「あー、やっぱりそういう目的もあるんでしょうかね? いきなり出てきて父親宣言されたのもそういう所以で」

「なー、びびったよな。開口一番私がお父さんですって言われて。はぁ? ってなったもんよ。で、俺とポンちゃんは生き別れの姉弟だって知れたんだよ。ちな、オレがねーちゃんな?」

「自称、な? 年齢が一緒で見てくれも違うのに急に姉貴風吹かしてきて困ってるんだよ」

 <コメント>
 :だから急に性を意識しちゃった?
 :まぁステ低い時の女性はただでさえ性被害に遭いやすいし
 :ああー
 :男装は誰もが通る道
 :それで胡散臭い優男ムーブが身についたってわけ

「胡散臭いは余計だよ、バーロー!」

 アルコールが入って、気が大きくなってるヨッちゃんがレスバしながら配信を盛り上げている。

 しかし焼けば肉汁が溢れる食材を前に、リスナーたちが動画にかぶりついた。

 上がる煙幕は果たして旨味の元か、食材が消失していくものか。
 炎に耐性のあった食材だけに、焼けるとは異なる変化を網の上で見せてくれた。

 なんか、骨髄が溶けて骨が成長するように。
 肉が変質して、まったく違うものに生まれ変わる瞬間を目の当たりにしてる様な。

 そこで黄金の星屑をタレとして仕上げていく。
 これ単体だと威力はお察し。
 ならば、合わせ調味料として組み合わせればどうか?

 ゴーストソルトの上に星屑をまばらに落とし、そこへヴァンパイア醤油、オーク豆板醤を合わせて串打ちした肉へ刷毛で塗り込む。

 炭火の上でジュワッと一層大きく煙をあげ、それだけでヨッちゃんは待てができない状態になった。

 <コメント>
 :そう言えばこれなんの肉?
 :圧倒的暴力! これが飯テロの力かー
 :あーー、だめです! これはだめです!
 :ガツガツガツガツ! ご飯おかわり!
 :涎が止まんねぇ!
 :カシュッ! こっちはビール三本開けた
 :まだ朝なんだよなぁ
 :見た目はただの焼き鳥なのに
 :ここでしか得られない栄養素はある
 :いずれ癌にも効く

 流石にそれは大袈裟すぎないか?
 刷毛で塗った反対側がいい感じに熱が入ったのを感じ取って、串をクルクルと回していく。

 そして焼き上がったもう片方にも刷毛でタレを塗りこんでいく。

 ジュワッ! パチパチ!

 上がった炎はまるで今生を惜しむようなマッドアングラーの魂がダンジョンに吸い込まれるような儚さを感じさせた。

 やっぱダンジョン飯はダンジョンの中でつくんないとな。

『さすがです、ご主人様。今のでもうエネルギーが500万ほど充填されましたよ!』

 うん、早い。
 まだ串を焼き終わってないのにこれか。

 マッドアングラーの素材の加工エネルギーがそもそも高いというのもあるだろうが、それとはまた別の要因か。

 まず間違いなく黄金の星屑効果だな。

 なんせ、内閣総理大臣からの横槍が入ったのはその後だからだ。
 急に身内発言してきたり、仲間に引き込もうとしてたのは安易にダンジョン内でこれを使わせないためだったとしたら、急遽案内されたパーティにも納得できる。

 それぐらい生み出されるエネルギー量が多かったのだろう。

 向こうが使う量が増えたとは考えずに、手に余ると理解して持ちかけてきた和解作。
 それが船上パーティなのだ。

 そして国が法外な値段をつけて「作ったら怒るぞ?」と釘を刺してきたわけだ。

 カラクリが解けたな。

 だからジュリを束縛して俺たちを物理的にダンジョンには入れ込めないようにした。

 ジュリそのものがダンジョンの案内人だとは理解していたようだが、よもやそこまで入れ込んでるとは思わなかったのだろうか?

 オリンはそこんところ一切教えてくれなかったが、それがうまい感じに向こうに伝わってジュリはお咎めなしだった?

 それか単純にジュリの信頼が地に落ちてるかだな。

 オリンですら、不信感抱くほどだったし。

「キュ(きっとそうなんじゃろうなぁ)」

 オリンからの弁明はない。
 やはりそうだったようだ。
 これに対してジュリからの弁明はない。
 お得意の引きこもりモードに入ったらしい。

 ちなみに三番迷宮管理者はどんな感じの人だったんだ?
 あの時船内で出会した、囚われの三番迷宮管理者が気になった。

 それとなしにオリンに尋ねる。

「キュー?(三番殿か? 粗暴でガサツ、問題児という点でならジュリ殿に引けを取らぬ暴れん坊。格付けチェックに余念がない御仁であった)」

 あー、うん。それは封印して正解だわ。
 ゴロウと同様に封印されてたから救出するべきか迷ってたけど、根がいい子ってわけでもないのか。

 そう考えると父親のあの判断も間違ってはない気がする。

 というか、好きにさせてたらエネルギーの枯渇も早かったのではないか? と思わなくもない。

 人類救済のために動いてるっぽいから馬が合わないとかはありそうだけどな。

 思考を加速させてる間に、炭火がいい感じに串焼きに熱を入れ、出来上がる。

 味のない食材がどう化けるか、いざ実食!

「いっただっきまーす!」

 待ちきれないとばかりに、焼きたてにもかかわらず果敢に攻め込むヨッちゃん。

「熱ちちちち!」

 案の定、火傷したようだ。
 こういう時くらい余熱は冷ませばいいのに。

 俺は熱々のご飯を椀に盛って、串を外した肉を上に乗せ、そこに卵黄、炒った白胡麻、辣油を合わせて混ぜ込んだ。

 ご飯は熱いが、それ以外が冷えてるので混ぜてるうちにちょうど良くなる。

 見た目は悪くなったが、思った以上にうまい。

 焼いてる時に感じたが、この肉は温度で形状変化する性質を持つ。だからそのまま口に放り込むのは良しとしない。

 ヨッちゃんをみて即座に判断した。
 なら熱を保ちつつ、安全に食べるにはどうするか?

 衣に包んでいただく、というのがそのうちの一つ。

 可能な限り泡立てた卵かけご飯。
 ここに行き着いた。

 食べてからその回答が正解とわかるが、どうにも一味足らない迷宮に迷い込む。

「あー、ずるいぞポンちゃんだけ!」

「今同じの作ってやるから待ってろって」

「早くな?」

 <コメント>
 :いつも通りじゃれついてるだけなのに、なんかこう……
 :っぱ、ビジュアルって大事だわ
 :いつも通りの光景だろ?
 :ヨッちゃんの女性アピールが強くなってポンちゃんもタジタジ
 :心底迷惑そうな顔してます
 :草
 :ここは色気より食い気のチャンネルだからな
 :圧倒的食い気ヒロインです
 :ヒロイン全員の胃袋をがっちり掴んだポンちゃんである
 :それは草
 :今もまだ見ぬヒロインの胃袋を刺激してるし

 ひどい言いがかりを聞いた。
 まだ見ぬヒロインも何も、別にそういうのは求めてないんだけどね。

 ミィちゃんやクララちゃん以外に増えても、対処できないぞ?

 新しい食材なら、いつでもどんとこいなのにな。
 どうしてこうなってしまったのか。
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