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60話 業務提携
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「いやぁ、すっかり世話になってしもうたの」
「こちらこそ、珍しいお酒をいただいてしまって」
八尾さん、富井さんの両名から頭を下げられて、俺たちも会釈し返す。
一番の収穫はなんと言っても酒だろう。
俺たちが死んでも治らないレベルの呑ん兵衛であることは確定的に明らかだし、その先駆者からお墨付きをいただいたのだ。
これらがこの地域に来たことの一番の収穫と言っても過言では無い。
「最初来た時はどうなることかと思ってたけど、終わりよければ全てよしってな?」
ヨッちゃんは調子のいいことを言うが、今回ばかりはその通りなのでここは頷いておく。
「まさか流れでAランクライセンスの支部長紹介までしてもらえるとは……」
いちばんの収穫は先ほど幻の銘酒だと言っておきながら、
こっちもこっちで世界に向けての準備に必要だ。
連絡を取り付けから、なんだかんだ一ヶ月近く経とうとしている。
もうすぐミィちゃんに会いに行ける(向こうから呼びつける形になるので、俺たちが会いに行くわけじゃないが)
……こう言う場合、パスポートの取得は必要なんだろうか?
それ含めてミィちゃんが何かしてくれる?
まぁそこは出発前に支部長に聞けばいいか。
そして俺の適合食材、まだ見ぬモンスター食材との出会い。
楽しみなことばかりだ。
「それとは別に、どうじゃ、ここは一つワシらと業務の提携もせぬか?」
「業務の提携、ですか?」
「そうとも。ワシの八百屋とシゲちゃんの富井ミート。この二つと居酒屋ポンちゃんの業務を提携してみてはどうかと言う提案じゃ。もちろん乗らなくてもワシらは特に困りはせんが……」
本日入手したアルコールの類は飲めば消える。
しかし、提携すればいつでも取引ができる。
俺たちは迷う暇なく頷き、握手を交わした。
「こちらとしても新鮮な野菜とお酒が手に入るのは嬉しいです!」
「なんじゃ、うちのオーク肉は要らんのか?」
「そういえば富井さんには見せてませんでしたね。俺の特殊スキルは肉体の存在しないモンスターからもミンチ肉を摂取するミンサーというスキルでして……」
そう言って、目の前のゴーストをソーセージに変える。
「他に派生スキルの腸詰めで、腸のあるモンスターから接収、のち腸詰めが可能となっています。あ、こいつは生やボイルだと微妙なので、俺流のアレンジで頂きます」
どれ、と手を伸ばそうとする富井さんを制し、天ぷらを仕上げる。
それの他に同様のゴーストソーセージの網焼き、ボイルも添えて提供。
「まずは通常のボイルからいただこうか。茹でただけでどこまでの味わいが出るか……ふむ、水気が多いの」
「俺もこいつが調理で上手くなるのか半信半疑でした」
「じゃが、正解を見つけたと言う顔をしておる」
「これがゴールかと言われたら疑問符が浮かぶところでしょう。しかし、その中でも、酒のつまみの最適解を選択しました。お口に合えば良いのですが……」
耳を傾けた後、富井さんは網焼きを口にする。
俺の酒のつまみという言葉を聞き入れたのち、最後に回すことにしてくれたのが地味にプレッシャーだ。
肉には現状困りはしないが、ある意味では肉のスペシャリスト。その御大から太鼓判を押されれば、料理人としての自信にもつながるところだ。
「こっちもボイルと大差はなし。さて、ポンちゃんスペシャルを頂こうか。付け合わせは日本酒? それともワイン? なんだったらビールかの?」
「俺たちはお金のない人相手に商売をする傾向にあるので、安価なビールが基準なところがあります。ですが日本酒にも合うと思っています。ひとまずお召し上がり後、飲み比べてください」
「自信作ということじゃな?」
「はい!」
最高傑作か? と言われたら首を横に振るだろう。
しかし自信がないかと言われたらNOだ。
料理人としてのプライドがそれを許さず、声高々に返答。
それが聞きたかったとばかりに口に入れ、目を閉じて咀嚼する。
たっぷり二分は堪能していただろうか?
最初にビールを一口飲み、首を横に振り。
懐から出したまた別の日本酒であろう酒と比べて一本を取り出した。
「これに合うのは、こいつだな!」
「ほう、メタルシザーのか。蟹酒が合うとは珍しいな。ワシにも一本くれんか?」
「ヨッちゃん、素材確保よろしく!」
「ゴーストここにはいねーんだけど?」
「ならベッドタウン行きますか。準備運動も兼ねて」
「良いねぇ」
「以前食った時はそれはそれで美味いと思ったが、シゲちゃんのオススメする蟹酒と合わせて食べたいという欲が湧いてきたわ!」
「俺も! その酒超気になる!」
「なら早速場所の移動だ!」
呑兵衛が集まると話が早いな。
オークの屯するBランクダンジョンを後にし、急遽Cランクダンジョンへ。
支部長の世良さんは頭を抱えていたっけ。
Aランクへのルートが確定してるんなら、先にダンジョンをクリアするべきじゃないのかって。
もちろんそっちが最優先事項ならそうするけど、なんだかんだこれを先に終わらせておくことで、店としてもレパートリーの開拓につながると、直感が働いた。
ここは乗るしかない! この予感を無視することは俺にはできそうもない。
そしてベッドタウンのゴーストを乱獲した後天ぷらを大量生産!
道ゆく探索者からは奇異の目で見られたが、慣れたもんだ。
「うわっ! この酒単品でもやばいけど、まさにゴーストフライに合わせたかのような味わいだ。クリスピーのようにサク、カリッとした衣の絶妙にマッチする。こりゃ何杯も行けるぜ!」
ヨッちゃんは高評価だ。
もちろん俺も、こんなに美味い酒は飲んだ試しがない。
マンドラゴラのような複雑な味わいではなく、まずかに肉の旨みが凝縮したネットリとした甘み、続いてカッと火が入るような辛味が交互に押し寄せる。
そこに淡白だがサクサクのクリスピーを纏ったゴーストフライが加わると、生きててよかった! と思わせる高揚感に全身が打ち震えるようだった。
富井さんはお肉のスペシャリストどころか、利酒の名手でもあるようだ。
これは業務提携する事で美味い酒が飲めるのはもちろん、俺のレベルアップにも繋がるぞ!
結局一も二もなく飛びついた。
これを蹴るなんて勿体無い。
ただ提携内容が、向こうがアルコールを卸す時、俺の加工した肉を富井ミートの販路で販売することを許諾させられてしまった。
別にダンジョン支部にも卸してるのでこれと言って無理強いさせられてるわけではない。
大量に加工して寄越してくれと言われたわけではないしね。
ただ、優先順位が各支部より富井ミートに軍配が上がっただけ。こっちは優先的にお酒を回してくれるので、是非もない。
ダンジョン内で野菜の調達も難しい中、転送陣一つで出張配達!料理人として有難い限りだ。
「こちらこそ、珍しいお酒をいただいてしまって」
八尾さん、富井さんの両名から頭を下げられて、俺たちも会釈し返す。
一番の収穫はなんと言っても酒だろう。
俺たちが死んでも治らないレベルの呑ん兵衛であることは確定的に明らかだし、その先駆者からお墨付きをいただいたのだ。
これらがこの地域に来たことの一番の収穫と言っても過言では無い。
「最初来た時はどうなることかと思ってたけど、終わりよければ全てよしってな?」
ヨッちゃんは調子のいいことを言うが、今回ばかりはその通りなのでここは頷いておく。
「まさか流れでAランクライセンスの支部長紹介までしてもらえるとは……」
いちばんの収穫は先ほど幻の銘酒だと言っておきながら、
こっちもこっちで世界に向けての準備に必要だ。
連絡を取り付けから、なんだかんだ一ヶ月近く経とうとしている。
もうすぐミィちゃんに会いに行ける(向こうから呼びつける形になるので、俺たちが会いに行くわけじゃないが)
……こう言う場合、パスポートの取得は必要なんだろうか?
それ含めてミィちゃんが何かしてくれる?
まぁそこは出発前に支部長に聞けばいいか。
そして俺の適合食材、まだ見ぬモンスター食材との出会い。
楽しみなことばかりだ。
「それとは別に、どうじゃ、ここは一つワシらと業務の提携もせぬか?」
「業務の提携、ですか?」
「そうとも。ワシの八百屋とシゲちゃんの富井ミート。この二つと居酒屋ポンちゃんの業務を提携してみてはどうかと言う提案じゃ。もちろん乗らなくてもワシらは特に困りはせんが……」
本日入手したアルコールの類は飲めば消える。
しかし、提携すればいつでも取引ができる。
俺たちは迷う暇なく頷き、握手を交わした。
「こちらとしても新鮮な野菜とお酒が手に入るのは嬉しいです!」
「なんじゃ、うちのオーク肉は要らんのか?」
「そういえば富井さんには見せてませんでしたね。俺の特殊スキルは肉体の存在しないモンスターからもミンチ肉を摂取するミンサーというスキルでして……」
そう言って、目の前のゴーストをソーセージに変える。
「他に派生スキルの腸詰めで、腸のあるモンスターから接収、のち腸詰めが可能となっています。あ、こいつは生やボイルだと微妙なので、俺流のアレンジで頂きます」
どれ、と手を伸ばそうとする富井さんを制し、天ぷらを仕上げる。
それの他に同様のゴーストソーセージの網焼き、ボイルも添えて提供。
「まずは通常のボイルからいただこうか。茹でただけでどこまでの味わいが出るか……ふむ、水気が多いの」
「俺もこいつが調理で上手くなるのか半信半疑でした」
「じゃが、正解を見つけたと言う顔をしておる」
「これがゴールかと言われたら疑問符が浮かぶところでしょう。しかし、その中でも、酒のつまみの最適解を選択しました。お口に合えば良いのですが……」
耳を傾けた後、富井さんは網焼きを口にする。
俺の酒のつまみという言葉を聞き入れたのち、最後に回すことにしてくれたのが地味にプレッシャーだ。
肉には現状困りはしないが、ある意味では肉のスペシャリスト。その御大から太鼓判を押されれば、料理人としての自信にもつながるところだ。
「こっちもボイルと大差はなし。さて、ポンちゃんスペシャルを頂こうか。付け合わせは日本酒? それともワイン? なんだったらビールかの?」
「俺たちはお金のない人相手に商売をする傾向にあるので、安価なビールが基準なところがあります。ですが日本酒にも合うと思っています。ひとまずお召し上がり後、飲み比べてください」
「自信作ということじゃな?」
「はい!」
最高傑作か? と言われたら首を横に振るだろう。
しかし自信がないかと言われたらNOだ。
料理人としてのプライドがそれを許さず、声高々に返答。
それが聞きたかったとばかりに口に入れ、目を閉じて咀嚼する。
たっぷり二分は堪能していただろうか?
最初にビールを一口飲み、首を横に振り。
懐から出したまた別の日本酒であろう酒と比べて一本を取り出した。
「これに合うのは、こいつだな!」
「ほう、メタルシザーのか。蟹酒が合うとは珍しいな。ワシにも一本くれんか?」
「ヨッちゃん、素材確保よろしく!」
「ゴーストここにはいねーんだけど?」
「ならベッドタウン行きますか。準備運動も兼ねて」
「良いねぇ」
「以前食った時はそれはそれで美味いと思ったが、シゲちゃんのオススメする蟹酒と合わせて食べたいという欲が湧いてきたわ!」
「俺も! その酒超気になる!」
「なら早速場所の移動だ!」
呑兵衛が集まると話が早いな。
オークの屯するBランクダンジョンを後にし、急遽Cランクダンジョンへ。
支部長の世良さんは頭を抱えていたっけ。
Aランクへのルートが確定してるんなら、先にダンジョンをクリアするべきじゃないのかって。
もちろんそっちが最優先事項ならそうするけど、なんだかんだこれを先に終わらせておくことで、店としてもレパートリーの開拓につながると、直感が働いた。
ここは乗るしかない! この予感を無視することは俺にはできそうもない。
そしてベッドタウンのゴーストを乱獲した後天ぷらを大量生産!
道ゆく探索者からは奇異の目で見られたが、慣れたもんだ。
「うわっ! この酒単品でもやばいけど、まさにゴーストフライに合わせたかのような味わいだ。クリスピーのようにサク、カリッとした衣の絶妙にマッチする。こりゃ何杯も行けるぜ!」
ヨッちゃんは高評価だ。
もちろん俺も、こんなに美味い酒は飲んだ試しがない。
マンドラゴラのような複雑な味わいではなく、まずかに肉の旨みが凝縮したネットリとした甘み、続いてカッと火が入るような辛味が交互に押し寄せる。
そこに淡白だがサクサクのクリスピーを纏ったゴーストフライが加わると、生きててよかった! と思わせる高揚感に全身が打ち震えるようだった。
富井さんはお肉のスペシャリストどころか、利酒の名手でもあるようだ。
これは業務提携する事で美味い酒が飲めるのはもちろん、俺のレベルアップにも繋がるぞ!
結局一も二もなく飛びついた。
これを蹴るなんて勿体無い。
ただ提携内容が、向こうがアルコールを卸す時、俺の加工した肉を富井ミートの販路で販売することを許諾させられてしまった。
別にダンジョン支部にも卸してるのでこれと言って無理強いさせられてるわけではない。
大量に加工して寄越してくれと言われたわけではないしね。
ただ、優先順位が各支部より富井ミートに軍配が上がっただけ。こっちは優先的にお酒を回してくれるので、是非もない。
ダンジョン内で野菜の調達も難しい中、転送陣一つで出張配達!料理人として有難い限りだ。
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