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55話 ダンジョン崩壊カウントダウン
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俺たちは城戸先生の言葉に従い、ちょっとだけ反省した。
単純にダンジョン内での飲み食いを(しない訳ではないが、呼び込みを含めた生配信を)規制した。
制限したと言ってもいい。
飲み会の延長線をダンジョン内でやるのは真面目に探索している人達にもよくないという常識を考えてのものだ。
飯は作るがアルコールはダンジョンを出てからという方針に変えた。
ので、配信方法はダンジョン内で調理工程を移す収録配信に留めた。
最初こそ飲み会を期待する声も上がった。
ヨッちゃんもやっぱりスタイル戻そうか? とすぐに飛びついた。
でも、いざモンスターの集団を相手取ったあとにその場で調理、からの実食は何かと隙が多くなる。
それ以前に、Bランクダンジョンのモンスターは群れるくらいに集落を持っていて、その集落の前で相手の死体を食うのは普通に宣戦布告だし、他の探索者にも迷惑がかかる。
ゴブリンと同等の知能だと思ってたけど、集落持ってる時点で知恵は人に近くなっているらしい。
たまたま討伐した個体がその集落の親分的ポジションの個体だったのもあり、やたらとヘイトを買ったのを覚えてる。
食事中でも普通に襲いかかってくるし、食う分以外の討伐もやらされた。
その上でオーク討伐部隊からもう二度とこのダンジョンに来ないでくれと非難をされたのである。
Bランクダンジョン自体は割とあるのだが、今回ここを選んだのは普通にオーク肉を食べたかったからだ。
そこそこ高級肉として宇都宮を中心に有名。
以前世良さんからオーク肉の焼肉食べ放題に連れて行ってもらってから、自分でも扱ってみたいとやってきたのだが、ここには暗黙の了解みたいなのが設定されていた。
俺たち以外は常連で、知ってて当然みたいな顔で特に教えてくれもしない。
その結果が出禁だ。
いや、俺たちも場の空気を読みきれないところがあったが、突入前にルール説明くらいはあってもいいと思う。
「キュッ(ダンジョンのモンスターなら放っておけばスポーンするのに人類というのは難儀なものだな。ほれ、向こう側からもう復活してきておる。お主がここで調理したことにより、リソースの確立はできておる。そもそも育ちすぎてるんじゃ、ここのダンジョンは)」
オリンは俺への助け舟をくれるが、ダンジョンが育ちすぎている詳細内容を明かしてくれるつもりはないみたいだ。
何か言えない規約でもあるのか?
いつか教えてくれる日が来ればいいが……それとも教えることで俺たちを巻き込まない為の優しさなのかもしれないが。
「なんかこのダンジョン、地元ルールでガッチガチじゃね?」
ヨッちゃんが不満を口にする。
俺も流石に身内ルールが強すぎるダンジョンもどうかと思うが、余所者の俺たちだからこそ思うのかもしれない。
「身内しか来ないから、余所者は嫌われるんだろうか?」
「キュー(ダンジョンは妾達のエネルギー採掘施設なんじゃが、勘違いも甚だしいの)」
オリンは全く別のことに対する愚痴を吐き出した。
エネルギー採掘施設。
これについては探索者に与えたスキルと守護者をぶつけ合うことで発生するエネルギーだったか。
「ダンジョン外に持ってかれると旨みはないんだったよな?」
「キュッ(ここは育ちすぎておるから、エネルギーが余っとるんじゃろう。成長の余地がない。コアがオーバーフローしておるな。契約者は何をしておるんじゃ!)」
契約者? 俺以外にもいるんだろうか?
「キュッ(この地域には妾の他に二体の使者が管理しておる。それぞれに契約者がついておる筈じゃ)」
「日本にそれだけダンジョンがあるのか」
「さっきからどうした、ポンちゃん。独り言が激しいぞ?」
「ん、ああオリンがさ」
俺はオリンの声が聞こえないヨッちゃんへと説明する。
ダンジョン側の異変。
溜まりすぎたエネルギーの吐き出す先がないことを報告する。
「それをされないと何かまずいのか?」
「キュッ(ダンジョンブレイクが起きるの)」
「ダンジョンが崩壊するらしい」
「えっ、大事じゃん!」
「キュッキュ(大事じゃ。マスターを通じて消費させねばダンジョンはエネルギーに変換齟齬を起こしてしまう。これほど膨大なプラントに成長させておきながら、なんと嘆かわしい)」
オリンの言うマスターとは、ダンジョンの生みの親の事。
以前聞いた時は本人がそれだと誤認したが、オリンは代行者。
つまり作られた存在であることを明かした。
俺たち人類が想像もできないほどの科学力を持つマスターとやらが一二つでも早く帰還できるようにオリン達代行者はエネルギーの変換を最優先しているらしい。
「キュッ(しかしおかしな話よ。妾の他の代行者もまた契約者を持つ。その者たちは何をしておるんじゃろうな?)」
俺以外の契約者。
オリンのような力を得た人間が、どのような行動に出るかは想像に難くない。
最初こそ一代で富を築いた八尾さんが怪しいと思った。
しかし調べてくうちに、もう一件、宇都宮地区で勢力を伸ばした個人企業があった。
そこが富井ミート。
世良さんに何か知らないかと話を持ちかけてみたところ、周囲を見渡したのち、忠告を受ける。
「その店を探るのはやめとけ」
そう言って、頬をなぞった。
その意味とは、背後に指定暴力団がついていることを意味する。
ステータス至上主義時代であるにも関わらず、そう言った類が消えることはない。むしろ名前を変えて増える傾向にあった。
半グレグループなどはその傘下の一つだろう。
きな臭くなって来た。
「余計怪しいじゃないですか、どうして問い詰めないんです?」
「怪しくても誰にも迷惑はかけてない。表向きはな」
「裏では?」
「こんな場所で話すことではないな」
世良さんが背後に向けて顎を向ける。
やたらと見られてると思ったら、そういう事か。
富井ミートの手のものが俺たちを見張って居たのだそうだ。
場所を移し、支部長室へ。
「お前は何かと動きが派手だ。今日のアタック以前から目をつけられてたようだな。心当たりは?」
「数えきれないくらいありますね」
八尾さんに関わり、そこから芋蔓式に富井さんに行き着いた。
給食センターに関わり、関連病院と懇意になった。
そこに加えてオーク肉の取得。
意図して本丸に近づいたわけではないが、相手が警戒するのもわかる気がする。
けどこれだけは忠告する必要があった。
「世良さん、ここのダンジョンが栄えて何年経ちました?」
「私が着任する前だから……60年程か。それがどうした?」
「それは八尾さんが現役を引退した頃ですね」
「確かにな。あの人がこの地域を活性化させた立役者の一人ではある」
「でももう一つの勢力があったんじゃないですか?」
「それが富井ミート? 考えすぎだろう。あの一族は確かに半グレと繋がっているが、確証がなさすぎる。オーク討伐が探索者向けだから生業にしているだけだろう?」
「そうですね、普通ならそう考えます。ですが現在のダンジョンの繁栄ぶりはどうでしょう? 随分と人類に、富井ミートに都合の良い作りではありませんか?」
俺の問いに、世良さんが考え込む。
「邪推したくなるのもわかるが……証拠はない」
「キュッ(それならば妾が提示しよう)」
「オリン!」
オリンの体表が輝き、代行者の姿が投影される。
「これはどういうことだ、本宝治」
「彼女は俺の味方です。そして、ダンジョンの代弁者でもある」
『この姿での挨拶は初めてじゃの、人類。妾はダンジョンを作った存在の使い、今は代弁者と名乗っておる』
「ダンジョンの!?」
驚きっぱなしの世良さんだったが、俺の側で行動していることで敵対意識がないことを理解。
納得できないながらも、飲み込んだ。
「話を詳しく聞かせてもらうぞ? お前と、そこの存在の」
「勿論ですよ。俺たちは彼女の言う危険状態を知らせに来ました。近い将来、宇都宮全土のダンジョンは崩壊します!」
「な、なんだってーーー!!」
単純にダンジョン内での飲み食いを(しない訳ではないが、呼び込みを含めた生配信を)規制した。
制限したと言ってもいい。
飲み会の延長線をダンジョン内でやるのは真面目に探索している人達にもよくないという常識を考えてのものだ。
飯は作るがアルコールはダンジョンを出てからという方針に変えた。
ので、配信方法はダンジョン内で調理工程を移す収録配信に留めた。
最初こそ飲み会を期待する声も上がった。
ヨッちゃんもやっぱりスタイル戻そうか? とすぐに飛びついた。
でも、いざモンスターの集団を相手取ったあとにその場で調理、からの実食は何かと隙が多くなる。
それ以前に、Bランクダンジョンのモンスターは群れるくらいに集落を持っていて、その集落の前で相手の死体を食うのは普通に宣戦布告だし、他の探索者にも迷惑がかかる。
ゴブリンと同等の知能だと思ってたけど、集落持ってる時点で知恵は人に近くなっているらしい。
たまたま討伐した個体がその集落の親分的ポジションの個体だったのもあり、やたらとヘイトを買ったのを覚えてる。
食事中でも普通に襲いかかってくるし、食う分以外の討伐もやらされた。
その上でオーク討伐部隊からもう二度とこのダンジョンに来ないでくれと非難をされたのである。
Bランクダンジョン自体は割とあるのだが、今回ここを選んだのは普通にオーク肉を食べたかったからだ。
そこそこ高級肉として宇都宮を中心に有名。
以前世良さんからオーク肉の焼肉食べ放題に連れて行ってもらってから、自分でも扱ってみたいとやってきたのだが、ここには暗黙の了解みたいなのが設定されていた。
俺たち以外は常連で、知ってて当然みたいな顔で特に教えてくれもしない。
その結果が出禁だ。
いや、俺たちも場の空気を読みきれないところがあったが、突入前にルール説明くらいはあってもいいと思う。
「キュッ(ダンジョンのモンスターなら放っておけばスポーンするのに人類というのは難儀なものだな。ほれ、向こう側からもう復活してきておる。お主がここで調理したことにより、リソースの確立はできておる。そもそも育ちすぎてるんじゃ、ここのダンジョンは)」
オリンは俺への助け舟をくれるが、ダンジョンが育ちすぎている詳細内容を明かしてくれるつもりはないみたいだ。
何か言えない規約でもあるのか?
いつか教えてくれる日が来ればいいが……それとも教えることで俺たちを巻き込まない為の優しさなのかもしれないが。
「なんかこのダンジョン、地元ルールでガッチガチじゃね?」
ヨッちゃんが不満を口にする。
俺も流石に身内ルールが強すぎるダンジョンもどうかと思うが、余所者の俺たちだからこそ思うのかもしれない。
「身内しか来ないから、余所者は嫌われるんだろうか?」
「キュー(ダンジョンは妾達のエネルギー採掘施設なんじゃが、勘違いも甚だしいの)」
オリンは全く別のことに対する愚痴を吐き出した。
エネルギー採掘施設。
これについては探索者に与えたスキルと守護者をぶつけ合うことで発生するエネルギーだったか。
「ダンジョン外に持ってかれると旨みはないんだったよな?」
「キュッ(ここは育ちすぎておるから、エネルギーが余っとるんじゃろう。成長の余地がない。コアがオーバーフローしておるな。契約者は何をしておるんじゃ!)」
契約者? 俺以外にもいるんだろうか?
「キュッ(この地域には妾の他に二体の使者が管理しておる。それぞれに契約者がついておる筈じゃ)」
「日本にそれだけダンジョンがあるのか」
「さっきからどうした、ポンちゃん。独り言が激しいぞ?」
「ん、ああオリンがさ」
俺はオリンの声が聞こえないヨッちゃんへと説明する。
ダンジョン側の異変。
溜まりすぎたエネルギーの吐き出す先がないことを報告する。
「それをされないと何かまずいのか?」
「キュッ(ダンジョンブレイクが起きるの)」
「ダンジョンが崩壊するらしい」
「えっ、大事じゃん!」
「キュッキュ(大事じゃ。マスターを通じて消費させねばダンジョンはエネルギーに変換齟齬を起こしてしまう。これほど膨大なプラントに成長させておきながら、なんと嘆かわしい)」
オリンの言うマスターとは、ダンジョンの生みの親の事。
以前聞いた時は本人がそれだと誤認したが、オリンは代行者。
つまり作られた存在であることを明かした。
俺たち人類が想像もできないほどの科学力を持つマスターとやらが一二つでも早く帰還できるようにオリン達代行者はエネルギーの変換を最優先しているらしい。
「キュッ(しかしおかしな話よ。妾の他の代行者もまた契約者を持つ。その者たちは何をしておるんじゃろうな?)」
俺以外の契約者。
オリンのような力を得た人間が、どのような行動に出るかは想像に難くない。
最初こそ一代で富を築いた八尾さんが怪しいと思った。
しかし調べてくうちに、もう一件、宇都宮地区で勢力を伸ばした個人企業があった。
そこが富井ミート。
世良さんに何か知らないかと話を持ちかけてみたところ、周囲を見渡したのち、忠告を受ける。
「その店を探るのはやめとけ」
そう言って、頬をなぞった。
その意味とは、背後に指定暴力団がついていることを意味する。
ステータス至上主義時代であるにも関わらず、そう言った類が消えることはない。むしろ名前を変えて増える傾向にあった。
半グレグループなどはその傘下の一つだろう。
きな臭くなって来た。
「余計怪しいじゃないですか、どうして問い詰めないんです?」
「怪しくても誰にも迷惑はかけてない。表向きはな」
「裏では?」
「こんな場所で話すことではないな」
世良さんが背後に向けて顎を向ける。
やたらと見られてると思ったら、そういう事か。
富井ミートの手のものが俺たちを見張って居たのだそうだ。
場所を移し、支部長室へ。
「お前は何かと動きが派手だ。今日のアタック以前から目をつけられてたようだな。心当たりは?」
「数えきれないくらいありますね」
八尾さんに関わり、そこから芋蔓式に富井さんに行き着いた。
給食センターに関わり、関連病院と懇意になった。
そこに加えてオーク肉の取得。
意図して本丸に近づいたわけではないが、相手が警戒するのもわかる気がする。
けどこれだけは忠告する必要があった。
「世良さん、ここのダンジョンが栄えて何年経ちました?」
「私が着任する前だから……60年程か。それがどうした?」
「それは八尾さんが現役を引退した頃ですね」
「確かにな。あの人がこの地域を活性化させた立役者の一人ではある」
「でももう一つの勢力があったんじゃないですか?」
「それが富井ミート? 考えすぎだろう。あの一族は確かに半グレと繋がっているが、確証がなさすぎる。オーク討伐が探索者向けだから生業にしているだけだろう?」
「そうですね、普通ならそう考えます。ですが現在のダンジョンの繁栄ぶりはどうでしょう? 随分と人類に、富井ミートに都合の良い作りではありませんか?」
俺の問いに、世良さんが考え込む。
「邪推したくなるのもわかるが……証拠はない」
「キュッ(それならば妾が提示しよう)」
「オリン!」
オリンの体表が輝き、代行者の姿が投影される。
「これはどういうことだ、本宝治」
「彼女は俺の味方です。そして、ダンジョンの代弁者でもある」
『この姿での挨拶は初めてじゃの、人類。妾はダンジョンを作った存在の使い、今は代弁者と名乗っておる』
「ダンジョンの!?」
驚きっぱなしの世良さんだったが、俺の側で行動していることで敵対意識がないことを理解。
納得できないながらも、飲み込んだ。
「話を詳しく聞かせてもらうぞ? お前と、そこの存在の」
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