ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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33話 ミサミサコラボ②

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「早速食ってて草」などと見慣れないコメントなど気にせずに目的の場所まで向かう。

 その過程で作り上げた調味料と料理がこちら。


 <ゾンビドッグ>
 ノーマル:粉チーズ
 活け〆 :ブルーチーズ
 ★ゾンビドッグとゴーレムのミートスパゲティ

 <スケルトン>
 ノーマル:ミルク
 活け〆 :ヨーグルト
 ★ゴブリンとスケルトンのお手軽フレンチトースト

 <ワイト>
 ノーマル:春雨
 活け〆 :春巻きの皮
 ★ゾンビドッグとワイトのチーズ春巻き

 <ジャンボラット>
 ノーマル:藻塩
 活け〆 :抹茶塩
 ★ワイトソーセージの天ぷら


「ふぅ、目的のものを食べる前にお腹いっぱいになっちゃいそうです」

「これらは非常食だし、全部食べなくてもいいよ。過剰に作ってるのは帰りにダンセンで捌いてもらうためだし、全部食べるつもりでいた?」

「うっ」

 俺の指摘に、図星とばかりに呻くミサちゃん。

 どのみち日に10回しか使えないクララちゃんのスキルもあって、次こそは空ウツボと遭遇するぞ、と言う気概があった。

「クララちゃん、スキル使用回数は?」

「午前に9回使ってるので残り16回ですね」

「あれ? 増えてる!」

 回数って増えることあるんだ。

「何馬鹿なこと言ってるんだポンちゃん、スキル使いまくってれば上限は増えるぞ? そんなことも知らないのかポンちゃん」

「確かにヨッちゃんに料理手伝ってもらってるけど、その分は残してくれてるのかと思うじゃんよ。ちなみに今何回使えるんだ?」

「風25、火30、水50、雷1、土25だ」

 意外と使えた。
 でも雷、いつの間に使えるようになったんだ?
 土は竈門を作ってもらう時ようにお願いしたことがあったが。

 <コメント>
 :は? 五属性持ち?
 :なんでこんな場所で飲み食いしてるんでしょうかねぇ
 :飲み食いしてたら育ったの間違い
 :そよ風みたいなスキル使ってるのみてたから成長したんだぞ
 :飯食ってるだけで強くなってるんですがそれは
 :もしかして料理バフ?
 :そんな、ゲームじゃあるまいし

「オレのは戦闘用と言うより飯特化だから属性が多く使えてもなって。雷は沢で魚を乱獲する時用に取った!」

 <コメント>
 :食うのに特化してるよこの人
 :今更何言ってんだ?
 :料理人の相棒に求められるのは殺しすぎない不殺の極意
 :あとテーブルと椅子制作
 :十分魔法使いとしての上澄なんよ
 :水はダンジョンで必要不可欠
 :俺ダンジョンで火を起こす奴は馬鹿だと思ってる
 :魔法の火で二酸化炭素は出ない定期
 :この人の場合、火+水で熱湯作るのに特化してるから
 :茹で上がりのパスタ美味そうだった
 :素材がゾンビドッグじゃなけりゃな
 :春巻きは見た目がそう見えないから素材知らなきゃ食えそう
 :全部そうだよ
 :ポンちゃん食堂は全部ダンジョンモンスターが食材

「まだ10回しか使えないと思ってたので大量に作れるなら寄り道できるな。まぁそこは後回しにするとして、先に空ウツボに行くか」

「また気になる場所発見したか?」

「ここに来るまで二箇所、不自然な繋ぎ目があった」

 <コメント>
 :不穏で草
 :この間のミノタウロスまた出る?
 :ミンサー大活躍回きたー?

「そっちはどうしようかな。護衛対象がいるときはあまり行きたくないから報告だけ入れるね。行くならSかA5クラスの人と行くのがベスト。俺らだと対処しきれない」

「全部食っちまうからな! 素材よこせと言われても無理なんだ。うはは」

 <コメント>
 :草
 :目利きと素材回収班が別に必要ってことね
 :倒すのは容易なんだ?
 :前回ゴールデンゴーレム調理してたからこの人達
 :は?
 :は?
 :は?
 :は?

「カレー味で美味でした。本宝治さん、今度コロッケであれ作ってください! お弁当にしますので」

「いいよ、帰ったら作ろうか。スパイスはまだ余裕あるし」

「やったー」

 <コメント>
 :そうだ、この子戦犯だった
 :戦犯扱いはやめて差し上げろ
 :普通にゴーレム系を適合食材に持つ人歓喜の働きしてるから
 :ゴーレムって食えんの?
 :クララちゃんのスキルでスパイスにできるんだよ
 :おすすめはチャーハン、俺の適合食材だった まじ神
 :クララちゃん、こんなふうに笑う子だったんだ
 :ずっと表情豊か
 :クラスでは居場所なかったもんね

 さっきからクララちゃんへのなんとも言えないお気持ちコメントが増えている。

 まだ高校生くらいだ。子供達の輪から抜けて大人の中に飛び込んでいくのはそれなりに勇気がいる。
 クララちゃんは臆面にも出さずにそれを行い、実行した。

 俺がレストランから追い出され、ヨッちゃんに誘われて配信者になろうとしたくらいの決意をこの年で。

 少し配慮が足りなかったか?
 でもあまり配慮しすぎるとこの子は遠慮しちゃう。
 ミィちゃんとかそうだったもんな。

 人の生き方はそれぞれ。俺と同様に彼女は今の暮らしに胸を張って生きている。
 だったらそれでいいんだ。何も臆することはない。

「居た! 居ました! アイツです!」

 それから随分と歩いてダンジョンの中層。
 天井に張り付くように浮かぶ白い物体。
 生きてる空ウツボを見るのは初めてだ。

 けどその下には河原があり、見上げるほどの巨体を持つカニがのっしのっしと歩いていた。

「鍋かな?」

「ボイル一択でしょう」

「ミソを煮込んで日本酒で一杯と行きたいもんだ」

 <コメント>
 :誰も脅威と思ってない件
 :ダンジョンクラブはそこそこの脅威なんよ
 :空ウツボはダンジョンクラブに守られて生きてるから

「いつも捕獲をしようと近づくと、あのカニさんが邪魔をしてきて……」

「それがなければいける?」

「だと思います」

 <コメント>
 :作戦を語ってものの十分で討伐完了!
 :過剰戦力もいいところだろ
 :普通は勝鬨を上げるところ
 :空ウツボもそりゃビビりますわ

 新しい食材を得て、俺たちがやることなんて一つしかない。
 調理の時間ダァああああああ!


 <ダンジョンクラブ>
 ノーマル:岩塩
 活け〆 :ダンジョンソルト
 ★ダンジョンクラブのボイル
 ★ダンジョンクラブの甲羅焼き
 ★ダンジョンクラブのカニクリームコロッケ
 ★ダンジョンクラブの春巻き
 ★ダンジョンクラブのメンチカツ

「ムキー、なんで捕まえられないの! せっかく邪魔者を退治してもらったのにぃ!」

 ミサちゃんが手間取る相手なのだろう。

 時間をかければかけるほどにメニューが一品増えていく。
 すっかり飲み会と化した会場に、ヤジが飛ぶ。

 ヤジを出す相手はいつだって飲兵衛だ。
 ヨッちゃんは飲んでない。飲んでるのは卯保津さんだけだった。

 おい、保護者。
 クララちゃんは呆れ返っている。

「ちょっと代わりにオレがやってみていい?」

「絶対に傷つけないでくださいよ?」

「わかってるわかってる。よっと」

 ヨッちゃんは空ウツボの逃げ場を無くすように水で追い込んでからの雷光一閃。
 空ウツボは失神し、水に包まれた状態で俺たちの手元に来た。
 ミサちゃんは口をあんぐりと開いている。

 物理的に釣りをしようとしていたミサちゃんと、魔法の力で手にしたヨッちゃん。
 どちらが合理的か考えるまでもなかった。

「これは死んでませんね、活け〆されてるようです」

「お、ヨッちゃんも活け〆マイスターになったか?」

「今んとこ魚介類特化だけどな」

「俺としては助かるよ」

「ならば早速、えい!」

 クララちゃんのスキルによって現れたのは……空ウツボの魚卵だった。

 誰もみたことのない、透明な魚卵はプルプルとしていてなんとも言えない珍味だ。

 普段は瓶に入ってる調味料だが、今回はパックに詰められていた。
 これは海鮮丼も夢ではないか?

「悔しいけど美味しいです。ご飯が捗るー」

 出来ることなら自分で捕まえたかったと息巻くミサちゃんだったが、彼女が挑戦してるだけで時間は虚しく過ぎ去っていったからね。
 ヨッちゃんと選手交代するのは仕方なかった。

 それでノーマルは空ウツボの肝だった。

 苦味の代表格である肝だったが、スライムに苦味成分を覚え込ませて吸わせたら……大化けした。

「これ、やばいな。酒が恋しくなる味だ」

 ほろ苦さの中に混じる甘み。
 とろりとした食感が魚卵と一緒に口にすることでさらに昇華される。
 ここに新鮮な刺身を湯掻いて白飯の上に乗せたらどうなるか?

 椀の中で蒸されて一気に旨みが凝縮するに違いない。
 あとは思考の導くままに腕を振るい、そして完成する。

 蓋を開けて出てきたのは、キラキラと艶めく空ウツボ丼(全部のせ)だ。

 あとは特に語るべきこともない。
 目の前のどんぶりが空っぽになった。それで喧嘩になった。
 いつもの事だけど。

 今まで白焼きが定番になっていた空ウツボは、新たな一面を今日俺に見せてくれた。
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