ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)

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24話 腸詰め始めました

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 結局あれから何回か挑戦したところ、最適解は窒息による気絶からの脱出だった。

 窒息してる時間が長いと、消えてしまうので時間の問題だ。

 窒息攻撃はヨッちゃんに任せ、卯保津さんが担いで俺が出口を切り開く。

 これでボス部屋からのボス誘拐は安定した。

 言ってることや、やってることにツッコミがたくさん入ったが、もともと無理のある作戦。
 しかしやってできないことはないと配信を通してリスナーも痛感していることだろう。

 まずは血抜きをしてからの肉を食す。

 屋良さんは血抜きはしないでと言っていたが、俺たちは素人なので血抜きありで。その後血抜きなしの調理人取り掛かろうと調理の工程を語る。

 カシュッ!

 言ってる側から卯保津さんがアルコールを開けた。
 お疲れ様です、とコボルトの耳を一度湯掻いて焼いて漬け汁に浸す焼き浸しを刻んでから提供する。

「耳は不味くはないんだが、一度美味いモン食った後だとな」

 贅沢な悩みだよな、と言いつつ腹肉をミンチして湯掻いた腸で包んで消毒殺菌した作りたてのソーセージを出したらビールを開けて一人祝杯を始めた。
 調子のいい人だよ。

「ポンちゃん、いつのまにか腸詰めなんて専用器具が必須な料理作れるようになったんだ?」

「Cランクダンジョンで頭痛になったろ?」

「ああ」

「あの時スキルとして取得してたっぽい。その時は利用用途が分からなかったのと、てんやわんやしてたからな。で、よく考えなくてもモンスターに直接作用する系スキルだと思ってさ。指定したら普通に使えた」

「モンスターを指定するスキル? どんなだ」

「腸詰めに使う腸を、モンスターから直接奪う。無くなったら新しく調達する必要があるな。肉に関しては、さっきのミンチ肉を指定したら勝手に出来上がった。それを茹でたのがそれだ」

 なお、皿の上には何一つ残っちゃいなかった。
 卯保津さんが全て平らげたのである。
 ちなみに、これらの二つは他のスキルと根本から違っていた。

 ──────────────────────
 名称:本宝治洋一ぽんほうちよういち
 年齢:30
 職業:ダンジョンシェフ
   配信者
   ジャイアントキラー
 ──────────────────────
 レベル50/100
 筋力:B★
 耐久:C★
 魔力:D★
 精神:A★
 器用:A★
 敏捷:B★
 幸運:B★
 総合ステータス:A-
 ──────────────────────
 <固有スキル:特殊調理>
 ★包丁捌き+
 ★目利き+
 ★料理バフ
 ☆ミンサー【モンスターを選択してください】
 ☆腸詰め【選択:キングコボルド】
 ──────────────────────

「オッサン、オレたちの分も残しとけこのやろー!」

「本当ですよ。でもどうして急にそんな食いつきが良くなったんです?」

 ソーセージが作れるようになったからと言っても、そこまで美味かったか?

「いや、お前らも食ってみろ。市販のソーセージがチープに見えるぞ? ポンちゃんのスキルだからか? それともボスモンスターだからか? 今まで味わったそのどれよりも極上だった。気づいたら皿から消えてたって言うのか? そんな感じでさー」

 悪気はなかったんだよ、と言う卯保津さん。
 この人がボスを背負ってくれなければ誘拐して来れなかったとしても、全部食うのはあんまりだ。

「次は、ちょっと使ってみたいスキルがあるんです。それでソーセージを作りたいんですが良いですか?」

「どんなスキルだ?」

「ミンサーと言う、モンスターをミンチ肉に置き換えるスキルなんですが……」

「待て、それって轟美玲の十八番の?」

「そうなんですか?」

 まさかミィちゃんも持ってるスキルだったとは。
 それが俺に生えた? どんな理由で……

 考えても分からないことばかりだが、俺の中で芽生えたこれは俺に新たな知見を見せてくれた。

「あの隠し部屋で頭痛に悩まされた後、芽生えたんです。それまでは全く持ってなかったので、どう扱おうものか迷ってたんですが」

「それだけ他のスキルと毛色が違うのか?」

「俺の持ってるスキルは、全て包丁で解決できるモノなんですよ。けどこれは……」

「全く別系統ってことか」

「しっかしモンスターの腸と肉でお手軽にソーセージができちゃうとはな。新しいスキルに感謝しねーと」

「次は俺たちの分も残しといてくださいよ?」

「わーってるよ」

 先ほどのボスは全部卯保津さんの腹にな言ったので再走。

 <コメント>
 :ポンちゃんつえーーーー!!?
 :ワンターンキル!
 :これ、ボス消えないで肉に変わるの?

「ミンチ肉確定だから、ハンバーグかソーセージにしかならないんだよねぇ。ステーキが食いたいなら今まで通り誘拐が良さげ」

 <コメント>
 :言いながら調理を始めるポンちゃん
 :そこ、ボス部屋ですよ?
 :ヨッちゃんの有用性
 :果たしてメシオさんは待った出来るのか?
 :無理じゃねーかなー?

 コメントからのツッコミで卯保津さんは撮影にかかりきりで、俺とヨッちゃんで分けて食べた。

 その前に乾杯。
 ソーセージだから付け合わせは塩やケチャップ、マスタードで。
 欲を言えば、ここにポテトも欲しいところだが、あいにく持ち合わせがない。
 脂っこいのに目を瞑って一口。

 あっ、うんうん。こうきたかぁ。

 ヨッちゃんも適合食材と出会ったときのような反応。
 味変するまでもなく、次に茹で上がったソーセージを手に取る。

 噛み切った時のパキッという食感。溢れる肉汁。
 普通にビールが進む。

 ああ、これは卯保津さんを責められない。
 やめられない止められないって奴だ。

 気がついたら何も乗ってない皿の上で俺とヨッちゃんの手がぶつかった。
 お互いに、俺の分をどこにやった? という顔。

 次いで正気に戻り、口々に感想を述べる。

「ボスとはいえ、Eランクでこれか?」

「それ、俺も思った!」

「言ったろ? 気づいたら消えてるって俺言ったよな!?」

 なんで俺の分を残してくれねぇんだ! と憤る卯保津さんを宥めるためにもう一度再走。

 そこで卯保津さんの思いつきで、ボス以外のモンスターで作ったらどうなるのか? という提案で入口からスタート。
 外に出るついでに酒やジャガイモの追加購入もした。

「これ、ゴブリンにしては食えなくもないが……」

「そもそもランクが合わずにソーセージになりませんね」

 腸詰めの不思議の一つに、ランクが離れすぎてるとソーセージにならないという仕様があった。
 包む腸のランクが高い分にはいいが、肉より腸のランクが低いと弾ける。

 そう簡単に旨いソーセージを食わせるかという強い執念を感じた。

 ちなみにキングコボルドの腸でもミィちゃんからプレゼントされた肉はソーセージにならなかった。
 いったいこの肉がなんなのか、そこから調べる必要があるな。

「取り敢えず」

「ああ」

「さっさと上位ランクのダンジョンに行こうか!」

 俺たちは強く頷き合い、今後のホームを鞍替えした。
 Eランクダンジョンは食べ尽くした。
 次はDだ!
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