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町おこしイベント
奇妙な鉱石
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金狼君の案内で、私とキャディは談話室へと通された。
普段なら会長室でふんぞり帰ってるらしいのだが、今日は誰かを呼んでプレゼンをしてるようだ。
その誰かは私も知ってる人らしい。
何で私をハブいて集合してるんでしょうかね。
「親父、客だ」
ノックもせずに開かれたドア。
いや、そこはノックしようよ金狼君。
「ああ、ようやくか。やっぱり嗅ぎつけてくると思った」
談話中の欽治さんも、私が来ることを予見していたような態度である。
と言うより、本当にそこに集まっていたのは知り合いだった。
「やぁ、笹井君」
「よぉ、親友」
「あら、あなた」
「流石の嗅覚ね」
「いつもうちの夫が世話になってます」
「お久しぶりです、笹井さん」
ハブなんてレベルじゃない。
私の妻どころかそこに集合してたのは桜町町内会の、幼馴染、親友、欽治さんとその奥様も含めての集まりだった。
「何で私だけハブられてるの!? おかしいでしょ!」
「だってあなた。どれだけお誘いの連絡入れてもコールに出ないんだもの」
「きっとこの人、若い子たちに混ざってダンジョンにこもってますよ」
「嫌だねぇ、年齢を勘違いした人は」
「そうだよ、親友。リアルでまで少年になる必要はない。ここは若いものに任せて我々は背中を押してやるに留めるべきだと思う」
長井くんが、柄にもないことを言う。
「AWOのイベントで忙しいと私の誘いを断った人が私のことを言えるんですか?」
「リアルとゲームを一緒にしないでよ。死んじゃったら元も子もないんだよ?」
たまに正論吐くからなぁ、この人。
「で、これは何の集まり?」
「これからはリアルで集まることも増えるだろうからさ、表立って催し物でもしようかなと。僕たち以外の自治体でも街をあげてのイベント催すらしいよ?」
「町内会の復活ってわけさ」
「なるほどねぇ」
「まぁ、あなたは呼んだところで企画を僕たちに丸投げする気がしてたし呼ばなくて正解だったんですが」
欽治さんの会心の一撃。
と言うか、ゲーム内で私にマスターを押し付けた人が何か言ってるよ。
言い出しっぺの法則でマスターにした癖にさ。
「全くもって正解だよ。私は企画を考えるのは得意じゃない」
「あ、会長は君に決まったから。四年制ね?」
「何でそうなるの!?」
「だって誰もやりたくなかったし」
「みんな忙しいからね。大丈夫、町内の看板としてデンと構えてくれたら良いから。いつも通りだよ」
この人達、絶対私を隠れ蓑にする気満々だ。
というか、ゲームでも私が目立ちまくったおかげで他のすごいプレイヤーが霞んだんだよね。それを狙ってるんだろう。
「くぇ♪ 」
「あら、この子は?」
「まーた珍妙なもの連れてますね」
「某お菓子メーカーのマスコットみたいだね。名前とかあるの?」
「この子はキャディ。私のキャディをしてもらおうと思ってつけたんだ。得意分野は採掘だけど」
「と、いうわけでうちのダンジョンに来るなり早速採掘してきたのがこれだ。じゃあ親父、あとは頼むな?」
キャディの自己紹介を終えると、私の責任追及でもするかのような成果物の提供と投げやりな態度で金狼君は出て行った。
「宝石?」
「のかけらだね。ほら、例のジョブで加工するやつだよ」
「ちなみにキャディの餌にもなる」
「少年、鉱物は好物じゃないんだよ?」
「あなた……流石にそれは……」
私とキャディを除く全員が私の事を人手なしみたいな冷たい目で見てくる。
「違うよ、テイマーになってから見えるようになったアイテム詳細に載ってたの。食べさせるんじゃなくて卵に近づけると消えるんだよ。それが成長値の糧になるの!」
「鉱物が溶ける? どんなものでもか?」
神保さんが食いついた。この人鍛治関連になると人が変わるよね。
「流石に餌と判明したものだけしか与えてないよ?」
「なんだ、つまらん。新しい炉の代わりにしようと思ったのに」
「そう言えばこっちに火炉はないんだっけ?」
「鍛治なら持っとるぞ。取得はしておらんがの。アホみたいにスキルポイントを持っていかれるだろう? スキルポイントを得る手段がモンスター討伐しかないが、ワシの扱う武器の類は鍛治しか作れん。どうにかワシ好みの武器を作ってくれないかと武器のメッカに尋ねにきたんじゃが」
神保さんが欽治さんに一瞬顔を向け、すぐさま肩をすくめて首を横に振る。
鋳造しかしてないと嘆いていた。
神保さんは鍛造したものが欲しいのだとか。
流石神保さんだ。私以上に嗅覚が鋭い。
「作ってあげれば良いじゃないですか」
「そんな簡単に言わないでくださいよ、この人自分が作れるからってそのレベルのものを鍛造のなんたるかもわからぬ我々に作れっていうんですよ? これがこの人の持ってきた設計図です。AWOの基準すぎて頭が痛いったらありゃしません」
スッとテーブルの上に差し出された設計図は、アニメの企画かと思うほど荒唐無稽だった。
なぁに、これぇ。
ベルトと刀が繋がってて、まるで某マスクドライダーの変身ベルトの構造を模している。その上で武器が巨大化、変形。
所持者を飲み込んで一匹のクリーチャーを作り上げた。
「ね、無茶でしょ?」
「アニメの企画かと思いました」
「それで一本作れるくらいの設定の凝り具合だよね」
作家の長井君が食いつく。
「設定も何もAWOなら出来るぞ?」
「あんな無茶無起動神話生物盛りだくさんRPGとリアルを一緒にしちゃダメでしょ」
「実際に無茶やってる少年が無自覚なのは笑う所かな?」
「キャディは無茶じゃないでしょ!」
「生態系はゲームのそれだって自覚しなよ。卵から足が突き破ってるのもそうだし、足に見合わない嘴が出てるのがその証拠だよ。絶対生き物図鑑に該当しない生物が出てくるやつでしょこれ」
「キャディは私の為に自らの成長の方向性を変えてくれたんです!」
決して神話生物でも旧支配者でも外なるものでもないから!
「それはともかく、この子はその宝石のかけらを食べるのよね? 餌をあげてみても良いかしら?」
「サファイアだけはやめてね?」
今後の私の気持ちが死ぬから、そこだけは死守しておく。
「好き嫌いがあるの?」
「あげすぎると性格が変わる。今は温和だから懐いてくれるけど、クール系にしすぎると距離感が遠すぎていうこと聞かなくなるんだよ」
「よし、サファイアをガンガン投入してやろう」
「長井君さぁ、私が嫌がる事を率先してやろうとしないで! あと投入とか言わないでよ、この子だって生きてるんだよ? ちゃんと考える意思もあるんだから!」
「ちなみに温和以外には何があるんです?」
「ルビーだと勇敢。サファイアはクール。どれも10個あげるとその特徴が出てくる。温和は唯一懐いてくれてる感じがするから好きだ」
「勇敢だと?」
「モンスターに向かいやすくなる」
「クールだと?」
「私の心が死ぬ」
ねぇ、その説明聞いてなんでみんなサファイア探し出すの?
意地悪するのやめてよ。流石に私も泣くよ?
過去のやらかしについては今は水に流してよ。ねぇったら!
「はいはい、おふざけはそこまで。うちの主人に思うところある人もいるでしょうが、この人が来てから全く話が進んでないわよ」
柏手を打ち、うちの妻である昭恵が全員の注目を集めた。
「あなたもキャディちゃんも、今はこの町内会の一員なんだから良い子にしていてちょうだい」
「はーい」
「くぇ」
こういう場面では女性は強いね。
妻の一括で悪ふざけの雰囲気は一蹴された。
そして催し物の話に戻る。
我が町内会では、始まりのダンジョンで最近横行しているルール無用の光苔窃盗犯の注意勧告をしようということになった。
ルールを守った探索者にはスタンプを押し、スタンプラリーよろしくポイントに応じて豪華賞品を出す事にしたようだ。
そして私の役割は、企画の呼びかけとイベントの案内となった。
「あなたそう言うの得意でしょ?」
「まぁ不得手ではないよね」
「流石笹井さんですね」
「僕が動くとどうしても会社の利権関係がチラついてイベントだと忘れ去られてしまう」
「ワシはそう言うのはあまり得意ではなくてな」
「僕もどっちかと言えば引きこもり気質だ」
欽治さんはともかく、神保さんと長井君はギルティだよ。
何その姿勢に胡座をかいてるの、もっと人付き合いしなさい!
奥様方も、声掛けはそこまで得意じゃないとのこと。
絶対嘘だ。私に責任を押し付ける為にヨイショしてるんだ。
とは思うけど、全く無視されるよりはマシ。
実際にハブにされた今があるからこそ、今ヨイショされて悪い気はしないし。
「仕方ないね。案内は受け持つよ。どうせダンジョンに潜りに行くし」
「流石だ少年、期待を裏切らない!」
「その代わり豪華賞品は大丈夫?」
「それは君の持ってきた情報を入れるから大丈夫。息子に手渡した情報の内から、ヤバいのは捌けてあるから」
「あなた、頑張って!」
「ちょっと、案内も豪華賞品の手配も全部私なの!?」
「もちろんそのネタは拡散されても問題ないようにバラして組み合わせて一つの情報にするつもりだ」
相変わらず長井君は狡いことするよなぁ。
流石専門分野の人はわかってるよね。
きっとテイムモンスターの餌事情も1~5で分割して、その上でいろんな情報も含めてくじ引き形式で抽選させるに違いない。
少ない情報でも完結させないようにわざと情報を抜いてくじ引きに仕込むんだ。
学園祭ではものすごく顰蹙を買ったが、情報社会の今では正当防衛とも言えるか。だって即時検索で情報出し合えるもんね。
「もちろんワシらもレベルが上がり次第参加する」
「あんまりやばすぎるオーパーツみたいなのは出さないでくださいよ?」
あの企画物を作って見せると意気込む神保さん。
あんなのが量産されたら町中めちゃくちゃだよ。
「それはワシの技術次第だがな!」
「絶対この人に鉱石関連渡しちゃダメだ」
「ちなみに鉱石はもう出てますよ。なんかよくわかんないの。ギンが発掘してくれました」
ゴトリ。テーブルに置かれた虹色に輝く鉱石が怪しく周囲を染め上げる。
わぁ、怪しい。
「もしかしてダンジョンを封鎖してるのって?」
「こんなのが出土されたもんですから急遽ですよ」
「でもこの色、キャディの殻の色に似てますね」
「あら、比べてみたら本当ね」
片や石。もう一つは卵。
ダンジョンの不思議がまた深まったな。
それはさておき私は私の仕事をしますかね。
私はすっかりクールになった(餌投入を阻止できなかった)キャディと共に、欽治さんの会社を後にした。
普段なら会長室でふんぞり帰ってるらしいのだが、今日は誰かを呼んでプレゼンをしてるようだ。
その誰かは私も知ってる人らしい。
何で私をハブいて集合してるんでしょうかね。
「親父、客だ」
ノックもせずに開かれたドア。
いや、そこはノックしようよ金狼君。
「ああ、ようやくか。やっぱり嗅ぎつけてくると思った」
談話中の欽治さんも、私が来ることを予見していたような態度である。
と言うより、本当にそこに集まっていたのは知り合いだった。
「やぁ、笹井君」
「よぉ、親友」
「あら、あなた」
「流石の嗅覚ね」
「いつもうちの夫が世話になってます」
「お久しぶりです、笹井さん」
ハブなんてレベルじゃない。
私の妻どころかそこに集合してたのは桜町町内会の、幼馴染、親友、欽治さんとその奥様も含めての集まりだった。
「何で私だけハブられてるの!? おかしいでしょ!」
「だってあなた。どれだけお誘いの連絡入れてもコールに出ないんだもの」
「きっとこの人、若い子たちに混ざってダンジョンにこもってますよ」
「嫌だねぇ、年齢を勘違いした人は」
「そうだよ、親友。リアルでまで少年になる必要はない。ここは若いものに任せて我々は背中を押してやるに留めるべきだと思う」
長井くんが、柄にもないことを言う。
「AWOのイベントで忙しいと私の誘いを断った人が私のことを言えるんですか?」
「リアルとゲームを一緒にしないでよ。死んじゃったら元も子もないんだよ?」
たまに正論吐くからなぁ、この人。
「で、これは何の集まり?」
「これからはリアルで集まることも増えるだろうからさ、表立って催し物でもしようかなと。僕たち以外の自治体でも街をあげてのイベント催すらしいよ?」
「町内会の復活ってわけさ」
「なるほどねぇ」
「まぁ、あなたは呼んだところで企画を僕たちに丸投げする気がしてたし呼ばなくて正解だったんですが」
欽治さんの会心の一撃。
と言うか、ゲーム内で私にマスターを押し付けた人が何か言ってるよ。
言い出しっぺの法則でマスターにした癖にさ。
「全くもって正解だよ。私は企画を考えるのは得意じゃない」
「あ、会長は君に決まったから。四年制ね?」
「何でそうなるの!?」
「だって誰もやりたくなかったし」
「みんな忙しいからね。大丈夫、町内の看板としてデンと構えてくれたら良いから。いつも通りだよ」
この人達、絶対私を隠れ蓑にする気満々だ。
というか、ゲームでも私が目立ちまくったおかげで他のすごいプレイヤーが霞んだんだよね。それを狙ってるんだろう。
「くぇ♪ 」
「あら、この子は?」
「まーた珍妙なもの連れてますね」
「某お菓子メーカーのマスコットみたいだね。名前とかあるの?」
「この子はキャディ。私のキャディをしてもらおうと思ってつけたんだ。得意分野は採掘だけど」
「と、いうわけでうちのダンジョンに来るなり早速採掘してきたのがこれだ。じゃあ親父、あとは頼むな?」
キャディの自己紹介を終えると、私の責任追及でもするかのような成果物の提供と投げやりな態度で金狼君は出て行った。
「宝石?」
「のかけらだね。ほら、例のジョブで加工するやつだよ」
「ちなみにキャディの餌にもなる」
「少年、鉱物は好物じゃないんだよ?」
「あなた……流石にそれは……」
私とキャディを除く全員が私の事を人手なしみたいな冷たい目で見てくる。
「違うよ、テイマーになってから見えるようになったアイテム詳細に載ってたの。食べさせるんじゃなくて卵に近づけると消えるんだよ。それが成長値の糧になるの!」
「鉱物が溶ける? どんなものでもか?」
神保さんが食いついた。この人鍛治関連になると人が変わるよね。
「流石に餌と判明したものだけしか与えてないよ?」
「なんだ、つまらん。新しい炉の代わりにしようと思ったのに」
「そう言えばこっちに火炉はないんだっけ?」
「鍛治なら持っとるぞ。取得はしておらんがの。アホみたいにスキルポイントを持っていかれるだろう? スキルポイントを得る手段がモンスター討伐しかないが、ワシの扱う武器の類は鍛治しか作れん。どうにかワシ好みの武器を作ってくれないかと武器のメッカに尋ねにきたんじゃが」
神保さんが欽治さんに一瞬顔を向け、すぐさま肩をすくめて首を横に振る。
鋳造しかしてないと嘆いていた。
神保さんは鍛造したものが欲しいのだとか。
流石神保さんだ。私以上に嗅覚が鋭い。
「作ってあげれば良いじゃないですか」
「そんな簡単に言わないでくださいよ、この人自分が作れるからってそのレベルのものを鍛造のなんたるかもわからぬ我々に作れっていうんですよ? これがこの人の持ってきた設計図です。AWOの基準すぎて頭が痛いったらありゃしません」
スッとテーブルの上に差し出された設計図は、アニメの企画かと思うほど荒唐無稽だった。
なぁに、これぇ。
ベルトと刀が繋がってて、まるで某マスクドライダーの変身ベルトの構造を模している。その上で武器が巨大化、変形。
所持者を飲み込んで一匹のクリーチャーを作り上げた。
「ね、無茶でしょ?」
「アニメの企画かと思いました」
「それで一本作れるくらいの設定の凝り具合だよね」
作家の長井君が食いつく。
「設定も何もAWOなら出来るぞ?」
「あんな無茶無起動神話生物盛りだくさんRPGとリアルを一緒にしちゃダメでしょ」
「実際に無茶やってる少年が無自覚なのは笑う所かな?」
「キャディは無茶じゃないでしょ!」
「生態系はゲームのそれだって自覚しなよ。卵から足が突き破ってるのもそうだし、足に見合わない嘴が出てるのがその証拠だよ。絶対生き物図鑑に該当しない生物が出てくるやつでしょこれ」
「キャディは私の為に自らの成長の方向性を変えてくれたんです!」
決して神話生物でも旧支配者でも外なるものでもないから!
「それはともかく、この子はその宝石のかけらを食べるのよね? 餌をあげてみても良いかしら?」
「サファイアだけはやめてね?」
今後の私の気持ちが死ぬから、そこだけは死守しておく。
「好き嫌いがあるの?」
「あげすぎると性格が変わる。今は温和だから懐いてくれるけど、クール系にしすぎると距離感が遠すぎていうこと聞かなくなるんだよ」
「よし、サファイアをガンガン投入してやろう」
「長井君さぁ、私が嫌がる事を率先してやろうとしないで! あと投入とか言わないでよ、この子だって生きてるんだよ? ちゃんと考える意思もあるんだから!」
「ちなみに温和以外には何があるんです?」
「ルビーだと勇敢。サファイアはクール。どれも10個あげるとその特徴が出てくる。温和は唯一懐いてくれてる感じがするから好きだ」
「勇敢だと?」
「モンスターに向かいやすくなる」
「クールだと?」
「私の心が死ぬ」
ねぇ、その説明聞いてなんでみんなサファイア探し出すの?
意地悪するのやめてよ。流石に私も泣くよ?
過去のやらかしについては今は水に流してよ。ねぇったら!
「はいはい、おふざけはそこまで。うちの主人に思うところある人もいるでしょうが、この人が来てから全く話が進んでないわよ」
柏手を打ち、うちの妻である昭恵が全員の注目を集めた。
「あなたもキャディちゃんも、今はこの町内会の一員なんだから良い子にしていてちょうだい」
「はーい」
「くぇ」
こういう場面では女性は強いね。
妻の一括で悪ふざけの雰囲気は一蹴された。
そして催し物の話に戻る。
我が町内会では、始まりのダンジョンで最近横行しているルール無用の光苔窃盗犯の注意勧告をしようということになった。
ルールを守った探索者にはスタンプを押し、スタンプラリーよろしくポイントに応じて豪華賞品を出す事にしたようだ。
そして私の役割は、企画の呼びかけとイベントの案内となった。
「あなたそう言うの得意でしょ?」
「まぁ不得手ではないよね」
「流石笹井さんですね」
「僕が動くとどうしても会社の利権関係がチラついてイベントだと忘れ去られてしまう」
「ワシはそう言うのはあまり得意ではなくてな」
「僕もどっちかと言えば引きこもり気質だ」
欽治さんはともかく、神保さんと長井君はギルティだよ。
何その姿勢に胡座をかいてるの、もっと人付き合いしなさい!
奥様方も、声掛けはそこまで得意じゃないとのこと。
絶対嘘だ。私に責任を押し付ける為にヨイショしてるんだ。
とは思うけど、全く無視されるよりはマシ。
実際にハブにされた今があるからこそ、今ヨイショされて悪い気はしないし。
「仕方ないね。案内は受け持つよ。どうせダンジョンに潜りに行くし」
「流石だ少年、期待を裏切らない!」
「その代わり豪華賞品は大丈夫?」
「それは君の持ってきた情報を入れるから大丈夫。息子に手渡した情報の内から、ヤバいのは捌けてあるから」
「あなた、頑張って!」
「ちょっと、案内も豪華賞品の手配も全部私なの!?」
「もちろんそのネタは拡散されても問題ないようにバラして組み合わせて一つの情報にするつもりだ」
相変わらず長井君は狡いことするよなぁ。
流石専門分野の人はわかってるよね。
きっとテイムモンスターの餌事情も1~5で分割して、その上でいろんな情報も含めてくじ引き形式で抽選させるに違いない。
少ない情報でも完結させないようにわざと情報を抜いてくじ引きに仕込むんだ。
学園祭ではものすごく顰蹙を買ったが、情報社会の今では正当防衛とも言えるか。だって即時検索で情報出し合えるもんね。
「もちろんワシらもレベルが上がり次第参加する」
「あんまりやばすぎるオーパーツみたいなのは出さないでくださいよ?」
あの企画物を作って見せると意気込む神保さん。
あんなのが量産されたら町中めちゃくちゃだよ。
「それはワシの技術次第だがな!」
「絶対この人に鉱石関連渡しちゃダメだ」
「ちなみに鉱石はもう出てますよ。なんかよくわかんないの。ギンが発掘してくれました」
ゴトリ。テーブルに置かれた虹色に輝く鉱石が怪しく周囲を染め上げる。
わぁ、怪しい。
「もしかしてダンジョンを封鎖してるのって?」
「こんなのが出土されたもんですから急遽ですよ」
「でもこの色、キャディの殻の色に似てますね」
「あら、比べてみたら本当ね」
片や石。もう一つは卵。
ダンジョンの不思議がまた深まったな。
それはさておき私は私の仕事をしますかね。
私はすっかりクールになった(餌投入を阻止できなかった)キャディと共に、欽治さんの会社を後にした。
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