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本編
新しい門出
しおりを挟むその日、地図上から一つの国が物理的に消えた。
しかしそれほどの災害がありながら死傷者は0人。
王族やそれに連なる者は謎の失踪を遂げており、各国の首脳達はこの件を重く受け止めた。
かつて国があった場所には、大きな岩が鎮座している。
大きく陥没した地盤の底に、たくましく暮らす人たちもいたとかいないとか。
奇跡的に危機を逃れた人たちは難民となり、他国へと流れていく。
その中の一団の一つに、やたらと目を引く集団の姿があった。
「いやぁ、スッキリしたわー」
「あれやったの茉莉さんなんですか?」
「どうしてそう思うの?」
「だって一人だけ明らかにテンションおかしかったですし。凛は怖がってました」
「ぶるぶる」
口でぶるぶる言ってる凛ちゃんがかわいい。
「まぁねー、自分でもやり過ぎたと思うところはあるわ」
「力を隠してたことですか?」
「うんにゃ、そっちはもうバレてるじゃん?」
「まぁ、おかしいとは思ってましたよ。冒険者のお話を聞いてても、魔法の同時操作なんて魔法使いにはできないと言ってましたし」
「だよねー。温水シャワー出しながらお香を炊いてエアコントローラーも同時に行えばおかしいと思われるわ」
「でも、それが当たり前になってた私たちもいます」
「ないと、暮らすのもたいへん。茉莉さんに、助けられてた」
「そう言ってくれると助かるわー。こう言う細かい頑張りって気づいてくれる人あんまりいないの。やって当たり前だー、自慢するなーってお小言ばっかり」
「よしよし、よく頑張りましたねー」
「うわぁあん、つかれたもぉん!」
なんだかんだ甘えさせてくれるキサラちゃん好き。結婚しよ。
「そろそろリンツァー領に到着するから、その漫才やめてくれる? 紹介する身にもなってよ」
「ぶーぶー」
「ダメですよ、茉莉さんちゃんとしないと」
「あうあう」
空気の読めないカーミラに咎められた。
まぁいいけどね。なんだかんだ私の恩人のほとんども含めて引き取ってくれると言ってくれたリンツァーを新しい仕事場とするのだから。
ガタガタと揺れる馬車の旅はお尻には拷問もいいところだけど、筋肉疲労は凛ちゃんのマッサージでなんとかなる。
窓の風景の先には、断崖絶壁に守られた幻想的なお城があった。
うーん、ファンタジー。
「ようこそ、リンツァー国へ。あなたの来訪を我が国は歓迎するわ」
カーミラからの掛け声に、私達は新しい生活の息遣いを感じ取っていた。
最初この世界に呼び出された時はどうなることかと思ったけど、なんだかんだ楽しいことになりそうだ。
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