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序章 兄弟
アルフレッド、無能の烙印を押される
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「おい! この無能を今すぐに摘み出せ!」
アルフレッドの才能が文字化けしていたのを知ったと同時に大声を上げたのは兄コモーノであった。
「コモーノ、突然何を言い出すのだ」
「父上、いい加減目をお覚ましください! 俺はアルフレッドをずっとおかしいと思っていたのです。こいつは俺と同じ人間とは思えぬスペックを誇っております! きっと魔物が人間の子供に姿を変えたのがこいつの正体でしょう! 職能が読み取れないのがその証拠です!」
今がチャンスだ! とばかりに畳み掛けるコモーノ。
兼ねてからアルフレッドを疎ましく思っていたコモーノは、ここで追い出せば自分の天下だと思っているのだろう。
何としても追い出してやるぞという気迫で公爵に迫る。
だが侯爵は冷静に分析した。
コモーノの言い分が当たっていたとしても、そんな理由だけで手放すにはアルフレッドは優秀すぎたのだ。
貴族社会で生きていけぬとしても、コモーノの右腕として育てることだって可能なのだ。
だが当のコモーノがそれを良しとしないのが頭痛の種である。
なので縋るように司祭へと意図を尋ねた。
「それは本当か?」
「生憎と通例のないことでございます。ですがあのような光、まずお目にかかったことがございません。後日また教会にいらして頂けますか?」
「再度職能授かりの儀を執り行えと?」
「いえ、もしこれらの言語が古代語であった場合、私達では解読できません。専門の学者を呼びつけて参ります。侯爵様におかれましては、すぐに裁量を下さずにお待ちください」
「王国主催のデビュタントは来週なのだぞ?」
それに遅刻するなんて恥晒しもいいところだ。
今日で決着をつけるつもりで来ていると述べれば。
「でしたらコモーノ様を嫡男へとつければよろしいかと」
職能は素晴らしいものではございませんか。だがそれ以上の職能を遊ばせておくのはよろしくない。
どちらにせよどっちが後継者に選ばれようと司祭には関係のないことだった。
頼まれたからその方法を提示しただけなのだ。
それを待てぬからと損をするのは侯爵だけである。
「ぐぬぬ、では至急に呼び出すように。5日以上は待てん」
「ではそのように采配致します。準備がありますので今日のところはお引き取りください」
そう言って、追い出された。
帰りの馬車ではコモーノが幅を利かせた。
今まで散々煮湯を飲まされたアルフレッドより優秀だったから威張ってもいいと拡大解釈したかの様だ。
もしこのままアルフレッドが嫡子から外されるのなら……
アルフレッドと距離を置かねば巻き込まれるとメイドたちが噂を始め出す。
「サリィは、僕のそばにいてくれる?」
いつになく弱気なアルフレッドに、サリィはいつまでもご一緒させていただきますわとその手を握った。
アルフレッドの才能が文字化けしていたのを知ったと同時に大声を上げたのは兄コモーノであった。
「コモーノ、突然何を言い出すのだ」
「父上、いい加減目をお覚ましください! 俺はアルフレッドをずっとおかしいと思っていたのです。こいつは俺と同じ人間とは思えぬスペックを誇っております! きっと魔物が人間の子供に姿を変えたのがこいつの正体でしょう! 職能が読み取れないのがその証拠です!」
今がチャンスだ! とばかりに畳み掛けるコモーノ。
兼ねてからアルフレッドを疎ましく思っていたコモーノは、ここで追い出せば自分の天下だと思っているのだろう。
何としても追い出してやるぞという気迫で公爵に迫る。
だが侯爵は冷静に分析した。
コモーノの言い分が当たっていたとしても、そんな理由だけで手放すにはアルフレッドは優秀すぎたのだ。
貴族社会で生きていけぬとしても、コモーノの右腕として育てることだって可能なのだ。
だが当のコモーノがそれを良しとしないのが頭痛の種である。
なので縋るように司祭へと意図を尋ねた。
「それは本当か?」
「生憎と通例のないことでございます。ですがあのような光、まずお目にかかったことがございません。後日また教会にいらして頂けますか?」
「再度職能授かりの儀を執り行えと?」
「いえ、もしこれらの言語が古代語であった場合、私達では解読できません。専門の学者を呼びつけて参ります。侯爵様におかれましては、すぐに裁量を下さずにお待ちください」
「王国主催のデビュタントは来週なのだぞ?」
それに遅刻するなんて恥晒しもいいところだ。
今日で決着をつけるつもりで来ていると述べれば。
「でしたらコモーノ様を嫡男へとつければよろしいかと」
職能は素晴らしいものではございませんか。だがそれ以上の職能を遊ばせておくのはよろしくない。
どちらにせよどっちが後継者に選ばれようと司祭には関係のないことだった。
頼まれたからその方法を提示しただけなのだ。
それを待てぬからと損をするのは侯爵だけである。
「ぐぬぬ、では至急に呼び出すように。5日以上は待てん」
「ではそのように采配致します。準備がありますので今日のところはお引き取りください」
そう言って、追い出された。
帰りの馬車ではコモーノが幅を利かせた。
今まで散々煮湯を飲まされたアルフレッドより優秀だったから威張ってもいいと拡大解釈したかの様だ。
もしこのままアルフレッドが嫡子から外されるのなら……
アルフレッドと距離を置かねば巻き込まれるとメイドたちが噂を始め出す。
「サリィは、僕のそばにいてくれる?」
いつになく弱気なアルフレッドに、サリィはいつまでもご一緒させていただきますわとその手を握った。
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