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序章 兄弟
アルフレッド、職能が文字化けする
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「アルフレッドおぼっちゃま、お時間にございます」
メイドのサリィがノックの後、外出の支度が全て済んだことを伝えた。アルフレッドは読んでいた本を閉じ、椅子から腰を上げた。
「兄さんは?」
「まだお部屋に閉じこもっていますよ。今日で全てが決まってしまいますからね、答えを聞くのが怖いのでしょう」
「全く仕方ないね」
「全くにございます」
サリィに限らず侯爵家の勤め人全てから双子の兄の方は穀潰しの疫病神と噂が広まっている。
弟のアルフレッドが同年代に比べてあまりにも出来が良すぎたためだ。兄コモーノだって同年代の子息の中にはいれば中の上。特に悪いというわけではないのだが、対抗馬が悪すぎた。
同じ環境で育ったとは思えないくらい弟のアルフレッドが優秀すぎたのだ。
「さて、審判の時間だよ。兄さん」
それはアルフレッドにとっては分かりきっている結末。
職能授かりの儀。
貴族社会に生まれた以上、死ぬまでついて回るステータスの獲得に臨むのだ。
スグエンキル侯爵家は代々優れた魔剣士を輩出している。
求められる職能はそれに連なる職。
だが逆に、そのどれもがつかなかった時点で落ちこぼれとなるのだ。
アルフレッドの努力は誰もが見知っている。
しかし逆立してもアルフレッドに勝てないコモーノはといえば……誰もが見限っていた。
アルフレッドに勝てないからと自分より立場の低いものへ当たり散らす様な男に誰が慕うというのか。
そんな出来レースの試合を見にいく。
そのつもりだったのだが……
「やった! やりましたよ、お父様! 俺が後継者に相応しいと証明されました!」
兄コモーノの胸に輝く『魔剣士』の職能。
それは侯爵にとっても意図していない幸運だった。
アルフレッドがダメだった場合の保険としてコモーノも連れてきたのが幸いしたと胸を撫で下ろす。
「よくやったぞコモーノ。今までの努力がようやく実を結んだか。これからも今まで以上に精進しなさい」
「はい!」
家を出る前まで、あんなに行きたくないと騒いでいたのに。
いざ当たりを引いて大はしゃぎだ。
「アルフレッドおぼっちゃまなら魔剣士以上の才がきっと手に入りますよ」
サリィはアルフレッドの表情が曇っているのではないのかと心配して声をかけるが、
「別に気にしてないよ。僕は僕、兄さんは兄さんだろ? では行ってくるよ」
「お気をつけていってらっしゃいまし」
大袈裟だな、と思いつつも侯爵やメイドの前で恥はかけないと全集中をしてオーブの前に手をかかげると……薄暗い室内が眩い光に染め上げられた。
コモーノが出した光よりも強く、範囲も広い。
これはきっといいものだ。誰もがそう思う中で現れた才能は……
「おぼっちゃま、その職能は一体なんと読むのでしょう?」
サリィの疑問系の言葉に、アルフレッドや侯爵、そして立ち会った司祭までもが困惑の声を上げる。
なんとアルフレッドの職能は文字が崩れて読めなかったのだ。
メイドのサリィがノックの後、外出の支度が全て済んだことを伝えた。アルフレッドは読んでいた本を閉じ、椅子から腰を上げた。
「兄さんは?」
「まだお部屋に閉じこもっていますよ。今日で全てが決まってしまいますからね、答えを聞くのが怖いのでしょう」
「全く仕方ないね」
「全くにございます」
サリィに限らず侯爵家の勤め人全てから双子の兄の方は穀潰しの疫病神と噂が広まっている。
弟のアルフレッドが同年代に比べてあまりにも出来が良すぎたためだ。兄コモーノだって同年代の子息の中にはいれば中の上。特に悪いというわけではないのだが、対抗馬が悪すぎた。
同じ環境で育ったとは思えないくらい弟のアルフレッドが優秀すぎたのだ。
「さて、審判の時間だよ。兄さん」
それはアルフレッドにとっては分かりきっている結末。
職能授かりの儀。
貴族社会に生まれた以上、死ぬまでついて回るステータスの獲得に臨むのだ。
スグエンキル侯爵家は代々優れた魔剣士を輩出している。
求められる職能はそれに連なる職。
だが逆に、そのどれもがつかなかった時点で落ちこぼれとなるのだ。
アルフレッドの努力は誰もが見知っている。
しかし逆立してもアルフレッドに勝てないコモーノはといえば……誰もが見限っていた。
アルフレッドに勝てないからと自分より立場の低いものへ当たり散らす様な男に誰が慕うというのか。
そんな出来レースの試合を見にいく。
そのつもりだったのだが……
「やった! やりましたよ、お父様! 俺が後継者に相応しいと証明されました!」
兄コモーノの胸に輝く『魔剣士』の職能。
それは侯爵にとっても意図していない幸運だった。
アルフレッドがダメだった場合の保険としてコモーノも連れてきたのが幸いしたと胸を撫で下ろす。
「よくやったぞコモーノ。今までの努力がようやく実を結んだか。これからも今まで以上に精進しなさい」
「はい!」
家を出る前まで、あんなに行きたくないと騒いでいたのに。
いざ当たりを引いて大はしゃぎだ。
「アルフレッドおぼっちゃまなら魔剣士以上の才がきっと手に入りますよ」
サリィはアルフレッドの表情が曇っているのではないのかと心配して声をかけるが、
「別に気にしてないよ。僕は僕、兄さんは兄さんだろ? では行ってくるよ」
「お気をつけていってらっしゃいまし」
大袈裟だな、と思いつつも侯爵やメイドの前で恥はかけないと全集中をしてオーブの前に手をかかげると……薄暗い室内が眩い光に染め上げられた。
コモーノが出した光よりも強く、範囲も広い。
これはきっといいものだ。誰もがそう思う中で現れた才能は……
「おぼっちゃま、その職能は一体なんと読むのでしょう?」
サリィの疑問系の言葉に、アルフレッドや侯爵、そして立ち会った司祭までもが困惑の声を上げる。
なんとアルフレッドの職能は文字が崩れて読めなかったのだ。
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