お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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五章 巻き込まれて異世界

ハーレム勇者とモブ

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「よくぞきていただきました、勇者様!」


 あれ? 確か俺は嫁さんとイチャコラしていたはず。
 ここはどこだ?
 さっぱりわからん。知らない天井、見知らぬ景色。

 けれどどこかで聞いたことのあるフレーズに、見たことのある召喚魔法陣。

 スキルの召喚陣解析が勝手に発動して、新しい転移先が追加される。
 オートで追加されるのでぶっちゃけ俺がなんかする暇もない。

 見たところ日本人の高校生風四人組。
 その中に一人混ざる俺。どこか興味を惹かれる場所があっただろうかと、ふと自分の容姿を思い出す。
 金髪碧眼、そのくせ日本人特有の顔立ち。
 最も特徴的なのは横に尖った長い耳か。
 そりゃ見られるわって顔してた。
 その上服装はまんまファンタジーのそれだし、異物扱いされて然もありなんと言った感じ。

 そこへ広角泡を飛ばすように躍り出る太ったおじさん。
 国のお偉い人だろうか?


「どうしてこんなところに亜人が? 汚らわしいエルフめ! どのように侵入した!」


 なんだか嫌われてる模様。人間至上主義国かな?
 まあクラセリアにもそういう国あるからね。
 
 小うるさく騒ぐ人達を転移で異世界ストリームに飛ばす。
 飛ばした。


「消えた!? おい! 亜人め! 我らが大臣をどこへやった!」

「なんで俺のせいだって決めつけるんだよ?」

「なに!? そのような手品は貴様らの専売特許だろう!」

「あーうるせーうるせー。お前も消えろ」


 転移。と同時に、同じ地球人にまで警戒されてしまった。
 明らかに魔法を使ったと思われたっぽい。

 これはまずいぞ。せっかく仲良くしようとしてるのに、あらぬ疑いをかけてくるもんだからつい、な?


「あー……こんなナリしてるが、俺は日本人だ。磯貝章、高卒で会社を起業してる。よろしくな?」

「日本人!? どう見たってエルフなのに!」


 おや? 
 エルフ化を知らないとなると同じ地球出身かどうか怪しくなってくるな。
 もしや並行世界の地球だったりするのか?
 白い塔は出張ってきてないタイプだったり。
 興味が出てきた。
 もしかしたらうちの会社の新しい転移先に使えるかもしれん。
 金の匂いがする、という奴だ。


「……って地球人て本当か? ゲームとかは知ってる?」

「もちろん、スマホだって持ってるぜ。ほら」

「本当だ。でもその姿は一体……仮装とかじゃないんだよな?」


 少年の方は信じてくれてるのに、取り巻きの女子達はどこか疑わしげな視線を向けてきていた。
 なんだろうか、この疎外感は。とても惨めな気分になるぜ。


「そうだな。地球の日本といっても、どうやら俺の世界とお前達の世界は辿ってきた経緯が違う様だ」

「聞いたことある、確か並行世界とか言うやつだよな?」

「ああ」

「僕たちは私立セイレーン高校に通う三年生だ。俺とこいつは幼馴染で、あとはクラスメイトだ」


 先頭に立つ男が進藤エイジ。
 なんだ、そのセイレーンて。小説の設定か何かか?
 聞いたこともない学校名に頭を捻りつつも話を促す。

 その幼馴染が御堂雪乃。
 仲の良いクラスメイト1がクリスティーナ・シェルフ。
 仲の良いクラスメイト2が伊達香。

 名前のニュアンスでわかる通りエイジ以外全員女だ。
 俗に言うハーレムってやつだな。

 それをクラスメイトで誤魔化してる時点でエイジにその気はないようだ。
 幼馴染とはそういう雰囲気で、非常に羨まけしからん。


「その、アキラは向こうに彼女とかは……?」


 エイジは非常に言いづらそうに聞いてくる。
 これはあれか? 
 見た目エルフだけど俺がモテないと決めつけての質問か?


「彼女じゃなくて嫁がいる。なので気を使わなくていいぞ。お前より一足先に大人の階段は登らせてもらってるからな」

「そ、そうか。いや、同じ男として非常に心苦しかったんだ。ウチは女ばかりだろう? 俺は雪乃一筋だが、クリスや香も大切な友人だ。その気になられても困ると言うか」

「あー……言わんとすることはわかるからその先は言わんでいいぞ。俺だって嫁さん一筋だ。間男みたいに思われるのは不本意だ」

「そ、そうだな。ごめん、彼女達は高確率でそういう目にあってきてるので、その、悪気はないんだ」


 何か歯に物が引っかかる物言いをする奴だな。
 なんだろう? 俺が状況に合わせて嘘をついているように思ってるのか? 
 気に食わないので美玲さんを強制召喚する。
 会うなりいきなり抱きついてきた。
 瞳に涙を溜めている。よほど心配させてしまったんだろう。
 よしよし。


「あ、あっくん! どこいっちゃったとおもったら! って、ここどこ!?」

「なんか俺の召喚阻害を掻い潜ってサーチする凄腕召喚主が現れてな、拉致られた」

「まぁあっくんは優秀だもんね。でもすぐにあたしを喚んでくれてよかったよー」


 嫁との再会にホッとする俺のすぐ横で、エイジ達が俺に嫁がいたことが本当だったのかと瞠目している。
 全く失礼な奴らだぜ。


「本当に……奥さんいたんだ?」

「だからそう言っただろうが。信用してなかったのかよ、傷つくぜ」

「って言うより今どこから?」


 キョロキョロと周囲を見渡す幼馴染の少女。


「なにもないところから現れるとは面妖な……妖怪の類か?」

「次元神クラウディアの先兵? いえー、まさかね?」


 クラスメイト2は制服の上から甲冑を着込んだ女子だ。
 腰に下げた脇差に手をかけている。
 なに、そういうゲームのキャラなの?
 クラスメイト1も、虚空を見つめながら何事かと呟いている。

 随分とキャラ設定の濃い子達だ。
 もしかしなくてもそういう宿命を背負ってる設定かよ。
 ハーレムものかな?


「あ、あのー。それで勇者様方には私の国を助けていただきたく……」


 目の前の状況に軽く目眩を覚えつつも、王女様! と思われる少女が表情筋を引き攣らせながら前に出た。

 恫喝役の大臣と、威圧役の騎士団長は揃って異世界ストリームで“超! サバイバルアクション”を体験中。
 残された王女様はそれでもまだこちらを誘導しようと頑張っている。
 若干膝が震えているし、笑顔はぎこちないが。


「僕たちにできることなら!」

「うん」

「ええ」

「拙者達の力がお国のためになるのならば!」


 エイジはそれを安請け合いし、その仲間達も覚悟を決めたように頷いた。
 そのあとこっちにも手伝えみたいな雰囲気で顔を向けるが……


「え、なんでそこで俺の顔を見るわけ? さっき俺がそこの人達になんて言われてたか忘れちゃった? たしかに俺は日本人だけどさ、この国では亜人、つまり敵対視されてるわけ。そこで「ハイわかりました!」っていうほど俺はお人好しではないぞ?」

「あっくんカッコ悪ーい」

「美玲さんは黙ってて」

「しかし、元の世界に帰る術もないんだぞ? ここは協力して、帰還する為の術を探すところだろう!?」


 まぁ普通はそう思うよな?
 って言うかその手の小説読み込んでる口だな?
 妙に手慣れてやがる。
 女達もエイジの言葉に全く疑問符を浮かべない時ている筋金入りだ。
 普通はもっと泣き叫ぶとかするだろうに。


「ああ、俺は自力で帰れるから。どうぞお構いなく。美玲、帰るぞ」

「はーい、では一足お先にバッハッハーイ」


 足元に転移ゲートを開きその上に乗ろうとした瞬間、エイジに腕を掴まれた。
 そして取り巻きの女性陣からこれまたキツく睨まれている。


「待て!」

「なに?」

「僕たちも、元の世界に戻れるのか!?」

「俺はお前達の世界の転移先を知らないぜ?」


 嘘だ。
 本当は知ってるがタダで教えてやる義理はないので黙ってる。


「そんな!」

「ちょっとあんた魔法を使えるんでしょ、なんとかしなさいよ!」


 そんなに帰りたいのね?
 だというのにこの態度。
 人に物を頼む態度じゃない。

『力ある物は与えよ』って?

 それは弱者なら強者に無償でお願いしていい免罪符じゃないぞ?
 力の価値をわかっているから出し惜しみするんだ。
 なんでかって?
 実際に俺はこれで商売してるわけだ。
 こいつらにとっては偶然知り合った俺がたまたまその使い手だった。

 同郷のよしみで使ってくれてもいいと軽く考えてるのがダメなんだ。
 しかも初対面でこちらを見下してきたのを棚に上げて、やってもらって当たり前な態度を崩しもしない。

 ここは異世界だって常識はすっぽ抜けてるみたいだ。
 それとも自分は可愛いから男なら誰だって言うことを聞くって思ってるのかな?
 そういうお願いは身内だけで頼むぜ。
 俺は美玲さんのお願いを聞くので精一杯だからな。

 タダでやれば次も次もっていうのが目に見えている。
 会社の社長としてもどこかの誰かを優遇するのは待ってもらってる顧客に悪いんだよね。


「そもそも俺とあんたらは今日初めて顔を合わせたばかりだ。なんでタダで何かしてもらえると思ってるの? まあ、平和な地球から来てるんなら日和ってるのも分からんでもないが」

「そこをなんとか!」

「その前にこの国の悩みを聞くことから始めたらいいじゃん。俺たちに頼る前に困ってる人たちは放っておけないんだろ? そっちの子達も賛同してたじゃん」

「絶賛私たちも困ってるんですけど?」

「だって俺にお前達の願いを叶えるメリットないもん。言っとくが嫁さん一筋だから色仕掛けとか通用しないぞ?」

「きゃー、あっくんのえっちー」


 さっきから横で美玲さんが煩い。
 が、いい感じに煽れているので王女様もエイジ達もポカンと口を開けている。


「ま、と言っても俺たちも暇だ。手伝いくらいはしてやるよ。ただ、お前達の頼みを100%聞くとは限らんがよろしくな?」

「僕達を見捨てくれないでありがとう、と言えばいいのかな?」

「どうとってもらっても構わん」


 あとで木村を呼ぼう。
 あいつこの手の状況に飢えてるからな。

 せいぜい再生回数稼ぎに付き合ってもらうさ。
 まさかそれを嫌がるとは思わないが……木村だからなぁ。
 ハーレム君にとても嫌な顔しそうだ。
 あいつもさっさと彼女作れば良いのにさ。
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