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三章 発足! 異世界旅行業

設立! ダンジョン学園2

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 二日目の授業はチームを組んで、例のダンジョンにアタックをかける事だった。
 先生達も血の気の多い生徒達に押されて計画を前倒しにしてる様だった。


「では磯貝さん、頼みますよ」

「あくまでもこれは仕事ですので、回数は制限させて貰いますから」

「ケチくさいこと言うなよ! 同じ学園生だろ?」


 声を上げたのは同じ特待生の真島だった。
 秋津一派の取り巻きである。


「同じ特待生だったら無条件で相手の要望を飲むのか?」

「あたりめぇだろ、ねぇ秋津君?」

「おうよ、俺の力はみんなの為にあるからな。そこの卑怯者と比べてもらっちゃ困るってもんですよ」


 先生の前ではおべっか入れて気に入られようとしているな?
 普段見せる凄みも何もあったもんじゃないが、果たしてどこまで虚勢をはれるものやら。


「そこまで自信あるなら組もうぜ? 俺の転移は金が掛かるが、お前らは無償で貸出してくれるんだろ?」

「テメェ……!」


 秋津はますます凄んでみせた。
 俺が全然ビビらないからつまらないのだ、こいつは。


 そしてダンジョンをアタックしてから30分が経過した。
 最初こそ勢いがあった秋津一派は、終わりの見えないゴブリンからの襲撃に疲弊しきっていた。

 他のクラスメイトは休憩に入り、俺は自分のチーム以外を一度学園に送り返した。
 今ここに居るのは俺と秋津一派のみ。
 他は敵だらけのダンジョンである。


「どうしたどうしたー? さっきまでの勢いが落ちてるぞ? 戦えばお前が勝つって話だろ? ほらもっと頑張れ」

「くそ! 俺はお前を殺すことだって出来るんだぞ?」

「え、どうやって?」


 凄む秋津に、俺はなぜそんな極端な回答に至ったかまるでわからないと言う顔をした。
 と言うより、俺を殺せば世界中の住民が困ることを気にしないのだろうか?
 そもそもの話、俺の能力なしでどうやって日本に帰るつもりなのか。


「秋津さん、もうやめましょうよ。こいつは勝てねぇ。気持ちだけじゃねぇって!」

「うるせえ! ここで負けを認めたら突っ張って生きてきた俺の人生が終わるんだよ!」


 終わっちまえよ、そんな人生。
 襲いくるゴブリンの攻撃を回避しながら、トラップを作動。
 ゴブリンと位置を交換して一網打尽にした。
 その様子を見ていた真島が諦めモードで秋津に説得している。
 俺は直接攻撃する手段を持たないだけで、戦闘経験値は意外とあるのだ。


「お前らさー、非戦闘員の俺にばかり戦わせて戦闘員としてのプライドはないの?」

「少し疲れてるんだ。休憩すればすぐにでも!」


 活躍できる! そう言いたいのだろうけど、ここはダンジョン。ゲームみたいに一時停止はさせて貰えないんだぜ?


「休憩なんてさせてもらえると思うか? ほら、お代わりが来たぜ?」


 それはゴブリンとは体格のまるで違う相手だった。
 肌は人間に近しいが、それ以外はまるで違う。
 背は天井に付くほどに高く、筋肉量がゴブリンの比ではない。
 それはホブゴブリンだった。
 それも一匹や二匹ではない。

 十匹まとめて現れた。
 不快にさせる鳴き声で、餌を見つけては殺すべく踊り出る。

 その光景に先ほどまで張り巡らせていた虚勢は遂には霧散し、秋津達は元北道を引き返していく。

 無論、ゴブリンがリポップするダンジョンだ。
 行くも地獄、帰るも地獄。
 ダンジョンになんの希望を抱いていたのかは知らないが、逃げた先で死にそうになってた秋津達を保護し、俺は学園へと帰還した。

 ちょっと脅すつもりだったのに、秋津ときたら漏らすぐらいびびってやんの。ばっちいたらありゃしない。
 これ以上戦闘続行は不可能とのことで、秋津一派は保健室に運ばれた。

 残りの時間は美玲さんとダンジョン内デートをしつつ探索。

 ゴールに控える巨大ゴーレムを岡戸が撃沈し、最後に美玲さんが世界樹にタッチして実を獲得。
 俺が入れ替えでそれを入手すると先生がそれを持ち帰った。


 どうやら政府に特定数の世界樹の実を持ち帰る見返りに資金を送ってもらう契約を交わした様だった。
 通りで俺たちが呼ばれたわけである。

 俺の転移能力と、美玲さんの補填能力を最大限に活用する気満々なのだ、この学園は。


「ダンジョンデート楽しかったね?」

「そうだな。俺たちがどの様に役立つかクラスのみんなにも把握できたと思うし。でも美玲さんもきちんとお金取らないとダメだぞ?」

「あたしのは勝手に溢れてくるだけだからー」

「それでも悪いこと考えてる奴はいるからさ」

「その時はあっくんが助けてくれるんでしょ?」

「そりゃいの一番に救出するさ」

「だからあたしは平気だよ?」


 そんな風に返されてしまってはぐうの音も出ない。
 搾取されるかもしれないって言う考えより、自分たちも楽しめばノーカンだよねと言う考えは俺のマイナス面を補填してくれる様でもあった。


 翌日、秋津達は俺に謝罪をし、舎弟になった。

 あんな態度で接していたのに、最後には助けてくれたあたりが良かったのだのなんだの言っている。
 不良の言葉は理解ができないが、美玲さんが貰っておけばとアドバイスしてくれた事によってボスの座を引き受ける事になった。

 これにより俺に舐めた態度をとっていた一派は沈静化し、ダンジョン学園に平穏が戻った。

 それから約半年間と言う短い生活を送れば無事卒業である。
 え? 早すぎるって?

 そもそもこの学園は世界の異変に向けて突貫で設立されている。表向きは異世界にあるダンジョンからの資源の持ち帰りが最優先事項。

 俺たちの活動は新入生に向けてのデモンストレーション以外の何者でもなく、これからの地球を支えていく戦闘要員育成の皮切りになるのだった。


 あとは、まあうちの会社の顧客への投資だな。
 ある程度お金をもらってるとはいえ、流石にポンポン異世界に飛ぶのは大盤振る舞いが過ぎる。

 学園側は俺が生徒だからと扱き使うつもりでいたのだろうけど、一度美味い思いをした人間がどういう行動に出るのか知っているので、転移回数は全てうちの会社を通して行われた。

 俺からすれば別にダンジョン学園に通わなくたってよかったんだ。
 なんせ俺は単独でダンジョンに渡れるからな。
 けど、その能力を学園以外に持たせたくなかったのだろう。
 要は俺の能力は学園にのみ使ってくれと要請を受けていた。
 当然突っぱねたけど。

 金になると知った権力者達からのあの手この手の策略が迫るも、水際で全部とーちゃんが食い止めてくれてるから俺に被害が及ぶ事なく卒業を果たせた。

 俺たちは卒業し、不安定な社会を見据えて同棲を開始した。

 流石に結婚するのは気が早すぎるだろ?
 いや、学生にしては十分稼げてるんだけどさ。
 年齢的に美玲さんの親御さんから許可が出てないのだ。

 なので同棲に留める。
 美玲さんはちょくちょく学園の卒業生としてお手伝いに駆り出されている。当然その時は二人でセットだ。
 学園は俺の能力の他に、美玲さんの能力の旨みに気がついた様で、どうにかして俺を引き剥がそうと努力してるがそうは問屋が卸さないおろさない。

 俺の強制召喚がある限り!
 離れ離れは永遠にないぜ。
 臭かったかな?
 
 ま、そんな感じで行く先々でイチャイチャを見せつけてるってわけ。
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