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二章 ダンジョンアタック!

ダンジョン出現!

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 自棄になってやらかした翌日。
 全人類がスキルを入手できる準備が整ったと同時に、異世界からダンジョンがやってくる事件が起こった。


 それは翌朝のニュースで、突如現れた渦が写されており。
 その内側にはまるで別世界の光景が映し出されていた。
 軍隊が大挙して制圧できるかの偵察をしてるが、まだそれらしい成果は上がってないようだ。

 とーちゃんが新聞を広げ、他人事のように視線を逸らす。
 何せこのニュースは海外の出来事だ。
 日本にもその手のものが現れただなんて話は上がってない。


「章、昨晩何か騒いでたけど、何かあったのかい?」

「何もないよ」


 俺は真顔で返事をする。
 すっかり嘘をつくのが上手くなったなと内心ぼやきつつ、かーちゃんの話題をスルー。


「そう言えば昨日近所の野良犬が吠えてたなあ。それと何か関係が?」


 とーちゃんがおっかないことを言う。
 犬が騒ぐってもしかして?
 ここら辺にもダンジョン出ちゃった感じ?

 まさかな、と思いつつ教室に転移すれば、すぐに俺の周りにワッとクラスメイトが集まった。


「磯貝!」

「磯貝君!」

「磯っち、やっちゃったねー?」


 全員が全員、ダンジョンが現れた原因は俺にあると言いたげに責め立てる。


「酷いぜみんな! どうして俺だって決めつけるんだよ!」

「だって、ねぇ?」

「他にこんな大仰なイベント起こせるスキル持ちっていないし?」

「磯貝くらいだぜ? 校舎ごと異世界に送り込めるのは。だからきっと異世界からダンジョンを持ってくるぐらいやりそうって思っちまうよ」


 確かにそうだ。
 実際異世界の惑星と地球を取り替えてしまった実績のある俺。
 ワンチャンやってやれないと思ってしまう。


「それでも俺じゃない! 信じてくれよ!」

「良いか磯貝、犯人はみんなそう言うんだ」

「木村、お前そっちの方が面白くなりそうだからって適当に言ってないだろうな?」

「そ、そそ。そんなわけないじゃん。なぁ、伊藤?」

「俺に振るなよ。でも磯貝じゃないとしたら何で急に?」

「そんなん俺だって知りたいわ」


 そうこう言ってると昨日異世界から帰ってきたばかりの桂木先生がダルそうに教室に入ってくる。
 出席をとりつつ、注意喚起とばかりに例の話題を上げてくる。


「あー、お前ら。例のダンジョンが近所にも一件出たっぽいので近づくのはやめるように。スキルがあるからと油断すれば足を掬われるかもしれんとのことだ。今警察関係者が調べてるから、いよいよになったらこっちにオファーが来るかもしれんが、それまでは手を出さないように、以上」


 やっぱり近所にもあるのか。
 HRが終わると例の話題で盛り上がる。
 近づくなと言われたら中が非常に気になる連中がこのクラスには特に多い気がする。
 その筆頭は木村だ。
 奴は動画リスナー獲得のためなら他人の迷惑も考えない害悪だ。
 逆に言えばリスナー獲得に協力さえすれば迷惑はかけないので最近は仲良くやれている。


「しっかしダンジョンね。普通ならこれの登場で人類がもう一段階進化するためにステータスとか獲得したりするんだが」

「何だそれ、漫画か何かか?」

「いんや、小説だ。最近アニメ化されたぜ」

「あ、それ知ってるよ! でもモンスターもスキル使ってきたりと結構人がいっぱい死ぬ奴だよね? おんなじ世界観じゃないと良いなー」


 笹島さんてば結構オタクなのね。
 俺でも知らない情報を木村と一緒に語ってる。
 まぁ全く同じだと俺も役立たず一直線なので違うことを願うばかりだ。

 その翌日、みたことのない大型犬が学校の通学路を徘徊すると言う事件が発生し、怪我人が続出する事件が起きた。
 ダンジョンのモンスターが表に出てきているのか?

 しかしどうしてこの学校の近くにこうも事件が集中するのだろう?

 まるで何か目的があって行動しているみたいだ。
 もしかしなくても、強力なスキル持ちが狙われてるのだろうか?


「まさかな」


 俺の独り言は、誰の耳にも届くことなく空気に溶けた。



 ◇◇◇


 <side???>

 暗い闇の中で人影が三つ、浮かび上がる。


「ダンジョンの設置は滞りなく済んだか?」

「ハッ、現地人は危機意識が低いらしく。我らの先兵を前に何も対処する様子を見せません」

「如何なさいましょう?」


 上司に伺いを立てるように影の二つが畏まる。


「予定通り、この地を我が#__魔族__我ら#の植民地とする。そのためにもマナの木を植え付ける作業は慎重にな」

「ハッ」


 闇の中の人影が二つ消え、残された一つが憂いの表情を浮かべる。


「我らの計画に何の不備もないと言うのに、この拭えぬ不安感はなんだ? いったいこの地に何があると言うのだ……」


 動揺するように揺めき、やがてその姿を闇と一体化させる。

 ダンジョンの出現は地球にとんでもない危機の訪れを示していた。
 しかしスキルを手に入れた一部の地球人(主に磯貝章近辺)は普段あまり発散できないストレスを解消したくてうずうずしていた。

 それは磯貝章の転移には明確に回数が決められている為である。
 授業にそれらが使われることによって枠を一つ消費。校舎ごと異世界に飛ばせる反面、自由時間など皆無。

 要はスキルの熟練度上げ、自分が何を得意としてるかの判別が主でそれを用いての戦闘など夢のまた夢なのである。

 ダンジョンの登場に興奮を隠せないメンツは来る時に備えて牙を研ぎ澄ましているだなんて、魔族たちは当然知らない事であった。
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