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一章 異世界クラセリア

スキル獲得は完全ランダム

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 クラスメイトが手元のスマホに夢中になる中を、次の授業の教師が席につけ~と促した。
 クラスの注目は突如現れたマスコミと、さっきの今で再召喚したであろう俺について。

 しかし俺と言えば、新しく増えた転移先に注目していた。

 なんで牢屋が追加されてんの?
 と言うか、この人達王国に捕まってた?
 だとしたら悪いことしちゃったな。

 授業中そんなことばかり考えてたので、ろくに授業内容が頭に入ってこなかったがいつもの事である。
 別に今日のことがなくても、また別のことで頭がいっぱいなのでそう変わらない。

 問題はそれよりも、その男女の集団が不可思議な能力を有していたことぐらいだろうか?

 あれ? 王国の召喚によって呼び出された勇者以外もスキルって入手できんの?
 だとしたら大発見だ。

 今ではその話題で持ちきり。
 今まで情報の入手に躍起になってたやつ全員が、今度は追い回される側になったのだ。

 そしてその噂を信じた学校の連中が、放課後俺の元にやってくるまでの流れを分かりきっていた。


「先輩! お願いします。俺どうしてもスキル欲しくて!」

「とは言ってもなー。必ずしも自分が欲しいスキルが手に入るわけじゃないんだぞ?」


 縋りよる後輩くんをなんとか宥めつつ、クラスメイト達にも話題を振る。
 当たりを引いたところで、向こうの世情は辛く苦しいものだ。
 憧れだけじゃやっていけないと打ちのめされた岡戸は苦々しい表情で頷いた。


「磯貝、多分彼はスキルを手に入れるまで諦めないと思う。僕が責任を受け持とう」

「ちょっ、木村との遠征につれてく気か!?」


 驚く俺に、ダメか? と聞いてくる。
 俺は別に人数が増えようと問題はないが、木村が許すかな?


「木村はどう思う?」

「配信に顔出しOKならワンチャンネタにする」

「お前はそう言う奴だったよ」


 こいつはリスナーが求めてる情報と合致すれば、クラスメイトすら売り渡す奴なのだ。


「じゃ、岡戸が責任持つなら俺の方で人数は制限しない」

「よっし! クラスのやつに声かけてきていいですか!?」

「あー、なるべく女子多めで」


 ここで待ったをかけたのは木村だ。
 男ムサイ絵面よりも女子多めの方がリスナー受けがいいと言う狙いである。
 そこで二の句が告げないのは後輩君だ。
 異世界に興味があって、スキルを欲しがる時点で現実になんの望みもないオタクの可能性は否定できない。

 心当たりがある岡戸は「そりゃあんまりだろ」と言いたげに木村を見つめていた。


「可能な限りな。最悪スキルをゲットしてモテモテになる可能性もある。今回は男が多くても、次までに女子が増えりゃ俺はそれでいいや」

「そっすね! 頑張ってみます。でも今日は男友達だけでいいっすか?」

「それを俺に聞くなよ。監督役はこいつだぜ?」


 転移斡旋業者の俺は転移先のことまで責任持てないからな。

 木村は岡戸と後輩君を三人ほど連れて異世界へと旅立った。
 時間は放課後から19:00まで。
 19:00に近所のコンビニに転移させる約束だ。

 なぜコンビニなのかと言うと、俺が所用で向かうときにストックを増やしておきたいと言う狙いがあるからだ。
 それと19:00なら部活終わりの高校生も割と立ち寄ることがあるので突然現れても怪しまれないと言う目的もある。

 マスコミのように大人数じゃないからこその転移だな。
 と、かーちゃんととーちゃんからのメールが来てた。
 引き上げ準備完了とのことだ。
 最近は仕事先まで普通にマスコミが張り込んでくるから大変なんだよ。
 自宅前はマスコミ予備軍が張り付いてるので、一人づつトイレに転移させる。

 ちなみにデパートのトイレから自宅のトイレだ。
 これは学校から家のトイレに直通で行きたいとき用のストックだった。


「おかえりー父ちゃん」

「母さんは?」

「次に転移してくるからサッと退いて」

「なるほど。日に日に見張りが厳しくなってるものなぁ。ご近所さんの目も誤魔化せなくなってきてる」


 ご近所さんが一番我が家のネタを垂れ込んでるまであるぞ。
 そういう意味ではあの人達は野生のパパラッチである。
 とーちゃんがトイレから出て行って居間でテレビをつけるのを確認してからかーちゃんにメールを送る。
 一応転移前は事前にメールを送る約束だ。

 かーちゃんの既読がついてから転移。
 買い物袋を大量に持ったかーちゃんがトイレから出てきた。
 この転移能力があるなら車が売り払えていいなととーちゃんは言うが、流石にストックの関係であんまり無駄遣いはできないぜ、と釘を刺していく。

 トイレに残された荷物を分担作業でキッチンに運び、出来合いの料理を皿に並べて夕食を頂く。
 テレビではスマホに流れてきた速報がニュースに流れていた。
 ローストチキンを頬張りながら他人事のように「怖いわねぇ」「そうだなぁ」なんて呟く。
 夕食を終えたらそれぞれの部屋にこもって時間を潰し、時間を見計らって放課後異世界組をコンビニに転移させた。

 さて、明日の話題が楽しみだ。
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