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【ヨルダ編2】元落ちこぼれ令嬢の魔法革命
王国北部平原での戦い
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中央都市の北西の平原にて、ネタキリー率いる第四騎士団が牛獣人の兵士と切り結んでいる後方で、第一魔導兵団のノコノサートは妙な胸騒ぎを感じている。
「第二魔導師団の到着はまだか?」
「先程オメガ様が伝令を授けに向かいました。しかし情勢は悪くないように思いますが?」
部下が戦況を見抜けないことにほんの少しの苛立ちを感じ、もしヨルダがそばにいてくれたら頼もしいのになと、感慨に耽る。
それでもノコノサートは一団を率いる長として気丈に振舞ってみせる。
己の研鑽に力を注ぎすぎたか? それとも平穏が人を愚かにしたか。
少なくとも過去において猛威を振る舞っていた王宮魔導士としての権威は地に落ちていた。
嘆かわしいことである。
「わからないか? 前方に押し入ってきてる部族は力自慢だ。だが、後方には弓を担いだ足軽部隊が左右に展開している。騎士団が今は持ち堪えてくれてるが、左右から攻められたら私たちの元まですぐに駆けつけてくるぞ?」
「流石にそれは心配し過ぎでは?」
心配などしすぎてもし足りないくらいだと言うのに。
何を呑気に構えているのか。
「君は、うちに来て何年経ったかね?」
「三年であります!」
「少しは兵站を学んできたらどうだ」
「仰られる意味がわかりません。あんな奴ら、大魔法で一撃では?」
「そうですよ、隊長。所詮は獣人、我々ヒューマンとは頭の出来が違います。力任せのサルどもなんて我らの魔法で一撃です!」
一撃必殺が自慢の魔法も、騎士団が時間を稼いでくれるから詠唱をする余裕が生まれるというのに。
前提条件が崩された後の立ち振る舞いを何も考えちゃいない低脳さに苦笑しか出てこない。
せめて、戦が長引かないようにと今は祈ることしかできぬノコノサートであった。
戦において魔法使いは後方に置くだけで脅威となりうるが。
しかし置くだけで勝手に相手がビビってくれる時代はもう随分と過去の話。
相手が人類ならば通用する戦術であることを部下達は理解してないのだ。
獣王国という存在を、脅威を脚色されまくった吟遊詩人の伝承でしか知らぬ部下達。
そこには国のプロバガンダも加味された、下に見た脚色が付随される。
教会自慢の的を外した脚色で、すっかり部下は油断しまくっていた。
魔獣と呼ばれ恐れる祖たる存在を。
そこから独自進化し、人類と同じ共通言語を操る存在を。
どうして貶められようか。
ノコノサートの見下ろす平原の中腹では。
ガキィン! ギィン!
剛腕によって振るわれた棍棒と何枚もの鋼を繋ぎ合わせた盾が正面からぶつかり火花を散らしていた。
見上げるほどの巨体の獣人と、第四騎士団ネタキリーの部隊が正面からぶつかる場面であった。
「第四騎士団、全進! ギルバート師の教えを思い出せ!」
「「「おおぉ!!!」」」
文字通り地獄の特訓を乗り越えてきた第四騎士団である。
しかしそれをねじ伏せようと無骨な腕で騎士ロイの兜を掴んで力任せに横に放つ。
無造作で振るわれたそれだが、人類には大きなダメージ。
易々とやってのけるその膂力こそが、獣人の最たる能力だった。
凄まじき膂力である。
体格差もさることながら、圧倒的な力量差に全員の足が竦んだのは確実だった。
それでも一歩前に踏み出す男がいる。
腰に溜めた剣で牛獣人の胸を貫く。
横たわる巨体は地面に真っ赤なシミを作った。
先ほどまで圧倒的な死の宣告者だった牛獣人を屠ったのはネタキリーその人である。
「ロイ、無事か!」
「申し訳ありません、隊長。油断しました」
「疲れが出ているな。第一魔導師団からの連絡はあったか?」
「戦況を維持せよと繰り返すばかりで」
「所詮私達は奴らからしてみれば消耗品か。だが案ずるな、我らにはヨルダ嬢がついている!」
「いまだにそのお姿が見られませんが?」
「ああ見えて恥ずかしがり屋な一面を持つのだ」
「そんな可愛らしい人には見えませんでしたが?」
ネタキリーの所感と部下の感想はどうやら異なるようだ。
妹であるキアラに見せる素顔とそれ以外への対応の差かもしれないなと内心で飲み込んだ。
「だが、向こうが攻めあぐねている理由はどうやらあの部隊の奇襲が成功したからだと思う。こちらが思っている以上に敵兵は疲弊してるようだ。先ほどサイドに分かれた兵隊の姿が一向に見えてこない。それが動き出してたら、今頃我々は槍衾だ」
「確かに、魔導師団が何かしたようには思えませんが……まさか!?」
「力自慢を前方に、その隙を弓兵が狙うのがセオリーだが、今までに両端から矢は飛んできたか?」
「いえ、防衛に集中できてました」
「なら既にこの戦はあの方に手入れされている」
「そうなんですか?」
「以前派遣された場所では当たり前のように防衛させてもらえなかった。相手が獣人とはいえ、力技ばかりでくる相手だと思わない方がいい。奴らは魔法こそ使えないが、肉体強化の技術が優れている。もしもそれが十全に扱えて居たのなら……」
この防衛網はとっくに抜かれて居たとネタキリーは語る。
なぜそう言い切れるか?
ここにいる騎士団はほとんどが平民上がり。
その上で第二~第三騎士団の殆どがヨルダの部隊に引き抜かれてしまった。
騎士団と呼べる存在は第四と第五騎士団しか居ない。
それなのに持ち堪えられてる方がおかしいのだ。
何せ、以前の戦いより騎士団の総数が半数以下にまで落ち込んでいるのだから。
「なら、どうして表に出て戦果を誇らないのですか?」
ロイは疑問に持つ。
貴族であるならば、自分の魔法こそが世界一だと謳うだろう。
以前までの王宮魔導士ならばそれが当たり前だった。
「まだ戦が終わってないからだろう。私達が気を抜かないように、向こうもまたそれ以上に気を張っている頃だ。が、私達はここから離れられない」
元王宮魔導士、現第一魔導師団の護衛こそが任務であるとばかりに。
「守ってるのがボンクラばかりでこっちは張り合いがないですけどね」
「言うな。騎士団に属してる以上、目を瞑らなければならん事だ。今はまだ、あの方が戦果を上げるのを見守る事しかできない」
「本当にできるのでしょうか?」
僕、心配ですとロイ。
今のところ一切の活躍している姿の見えない第二魔導師団。
開戦から二時間が経過するが、本当に表に出てきてないのである。
その頃ヨルダは。
あんまりにも紅茶を楽しむのをやめない為、オメガに引きずられながら戦場に出てきて居た。
「あら、防衛網はまだ維持できてますね」
高台から一目見ただけで頷く。
作戦通りであると。
部下は己の仕事を果たしていると。
満足気ですらあった。
「だが左右に散開した兵士がいるとの報を受けている。今の所潜伏しているようだが、いつ動き出すか分からないと来ている。こう言う時こそ、小回りのきく第二魔導師団の出番ではないのか?」
詰め寄るオメガの顔を片手で払い、ヨルダは言い切る。
「そこはとっくに対処済みですよ。やられたと双方に分からないように手を打ったのでしょう。そして、いまだに動き出さない弓兵に痺れを切らして第二陣を送り込んできた時がわたくしどもの出番です」
「本当にそんなのが来るのか?」
「機密情報でしたがこちらを。部下からの報告書です」
そう言うのは部隊長に前もって報告するものでは? と疑いの目を向けるオメガ。
そして報告に目を落とし、ギョッとする。
「ワイバーン騎兵!? 本当か?」
「まぁ、遠目でしたがまず間違いないでしょう」
「こんなのがきたら魔導師団など一網打尽じゃないか!」
「ええ、ですので何も知らせてません。逃げ出したら王国民として後ろ指を差されることになりかねません」
「そんなことを言ってる場合では無いだろう! 亜竜といえど単体で街を破壊し尽くす魔獣だぞ!」
「とはいえ災害級程度ですよ。どうと言うこともありません。空を飛んでるのが厄介な程度でしょう?」
オメガは再びヨルダに何言ってんだこいつと言う目を向けた。
「あら、今頃怖気付きましたの? これは領土の奪い合いですのよ? これぐらいの戦力投入ぐらいはしてくるでしょう。何せ勝てば全ての要望が通るのです。負けたら相手のいいなり、世の常ですわ」
「そうだが……勝てるのか?」
「相手はこちらにはそれで十分と思っているでしょうが、正直モノの数ではありません。わたくしの師匠でしたら晩御飯のおかずにしていたでしょう」
「まぁ、あの人ならやりそうだ」
「はい」
何せ神話級を単独撃破。
かつての世界で封印する事しかできず、封印してもなお瘴気を森にばら撒き続けた悪魔の眷属通りがかりに倒して鍋にして食べようとする人だ。
その人の元で一年一緒に過ごしたヨルダにとって、伝説級どころか災害級なんてモノの数では無い。
なんならベア吉ぐらいの難易度だ。
いや、あれは普通に怖いな。なんというか目が怖い。
確実に何人か人を食ってる目をしていた。
たまにこちらに向ける視線が、好物を目にした時のルディと酷似していたのだ。
気のせいだと思いたいが、きっと気のせいではないだろう。
「なんにせよ、第一魔導師団が慌てふためいた時にようやくわたくしたちの出番がくると思っておいていいでしょう。それまではゆっくりいたしましょう」
いつの間にか取り出したグラスに、ワインを注いでいく。一緒にどうですかともう一つのグラスにも注ぐが、ワイバーン騎兵の投入を察知しながらもそんな余裕をかます程、オメガに余力が残されていなかった。
キリキリと痛む胃に、持ってくれよと鎮痛剤を投与し始める始末である。
「第二魔導師団の到着はまだか?」
「先程オメガ様が伝令を授けに向かいました。しかし情勢は悪くないように思いますが?」
部下が戦況を見抜けないことにほんの少しの苛立ちを感じ、もしヨルダがそばにいてくれたら頼もしいのになと、感慨に耽る。
それでもノコノサートは一団を率いる長として気丈に振舞ってみせる。
己の研鑽に力を注ぎすぎたか? それとも平穏が人を愚かにしたか。
少なくとも過去において猛威を振る舞っていた王宮魔導士としての権威は地に落ちていた。
嘆かわしいことである。
「わからないか? 前方に押し入ってきてる部族は力自慢だ。だが、後方には弓を担いだ足軽部隊が左右に展開している。騎士団が今は持ち堪えてくれてるが、左右から攻められたら私たちの元まですぐに駆けつけてくるぞ?」
「流石にそれは心配し過ぎでは?」
心配などしすぎてもし足りないくらいだと言うのに。
何を呑気に構えているのか。
「君は、うちに来て何年経ったかね?」
「三年であります!」
「少しは兵站を学んできたらどうだ」
「仰られる意味がわかりません。あんな奴ら、大魔法で一撃では?」
「そうですよ、隊長。所詮は獣人、我々ヒューマンとは頭の出来が違います。力任せのサルどもなんて我らの魔法で一撃です!」
一撃必殺が自慢の魔法も、騎士団が時間を稼いでくれるから詠唱をする余裕が生まれるというのに。
前提条件が崩された後の立ち振る舞いを何も考えちゃいない低脳さに苦笑しか出てこない。
せめて、戦が長引かないようにと今は祈ることしかできぬノコノサートであった。
戦において魔法使いは後方に置くだけで脅威となりうるが。
しかし置くだけで勝手に相手がビビってくれる時代はもう随分と過去の話。
相手が人類ならば通用する戦術であることを部下達は理解してないのだ。
獣王国という存在を、脅威を脚色されまくった吟遊詩人の伝承でしか知らぬ部下達。
そこには国のプロバガンダも加味された、下に見た脚色が付随される。
教会自慢の的を外した脚色で、すっかり部下は油断しまくっていた。
魔獣と呼ばれ恐れる祖たる存在を。
そこから独自進化し、人類と同じ共通言語を操る存在を。
どうして貶められようか。
ノコノサートの見下ろす平原の中腹では。
ガキィン! ギィン!
剛腕によって振るわれた棍棒と何枚もの鋼を繋ぎ合わせた盾が正面からぶつかり火花を散らしていた。
見上げるほどの巨体の獣人と、第四騎士団ネタキリーの部隊が正面からぶつかる場面であった。
「第四騎士団、全進! ギルバート師の教えを思い出せ!」
「「「おおぉ!!!」」」
文字通り地獄の特訓を乗り越えてきた第四騎士団である。
しかしそれをねじ伏せようと無骨な腕で騎士ロイの兜を掴んで力任せに横に放つ。
無造作で振るわれたそれだが、人類には大きなダメージ。
易々とやってのけるその膂力こそが、獣人の最たる能力だった。
凄まじき膂力である。
体格差もさることながら、圧倒的な力量差に全員の足が竦んだのは確実だった。
それでも一歩前に踏み出す男がいる。
腰に溜めた剣で牛獣人の胸を貫く。
横たわる巨体は地面に真っ赤なシミを作った。
先ほどまで圧倒的な死の宣告者だった牛獣人を屠ったのはネタキリーその人である。
「ロイ、無事か!」
「申し訳ありません、隊長。油断しました」
「疲れが出ているな。第一魔導師団からの連絡はあったか?」
「戦況を維持せよと繰り返すばかりで」
「所詮私達は奴らからしてみれば消耗品か。だが案ずるな、我らにはヨルダ嬢がついている!」
「いまだにそのお姿が見られませんが?」
「ああ見えて恥ずかしがり屋な一面を持つのだ」
「そんな可愛らしい人には見えませんでしたが?」
ネタキリーの所感と部下の感想はどうやら異なるようだ。
妹であるキアラに見せる素顔とそれ以外への対応の差かもしれないなと内心で飲み込んだ。
「だが、向こうが攻めあぐねている理由はどうやらあの部隊の奇襲が成功したからだと思う。こちらが思っている以上に敵兵は疲弊してるようだ。先ほどサイドに分かれた兵隊の姿が一向に見えてこない。それが動き出してたら、今頃我々は槍衾だ」
「確かに、魔導師団が何かしたようには思えませんが……まさか!?」
「力自慢を前方に、その隙を弓兵が狙うのがセオリーだが、今までに両端から矢は飛んできたか?」
「いえ、防衛に集中できてました」
「なら既にこの戦はあの方に手入れされている」
「そうなんですか?」
「以前派遣された場所では当たり前のように防衛させてもらえなかった。相手が獣人とはいえ、力技ばかりでくる相手だと思わない方がいい。奴らは魔法こそ使えないが、肉体強化の技術が優れている。もしもそれが十全に扱えて居たのなら……」
この防衛網はとっくに抜かれて居たとネタキリーは語る。
なぜそう言い切れるか?
ここにいる騎士団はほとんどが平民上がり。
その上で第二~第三騎士団の殆どがヨルダの部隊に引き抜かれてしまった。
騎士団と呼べる存在は第四と第五騎士団しか居ない。
それなのに持ち堪えられてる方がおかしいのだ。
何せ、以前の戦いより騎士団の総数が半数以下にまで落ち込んでいるのだから。
「なら、どうして表に出て戦果を誇らないのですか?」
ロイは疑問に持つ。
貴族であるならば、自分の魔法こそが世界一だと謳うだろう。
以前までの王宮魔導士ならばそれが当たり前だった。
「まだ戦が終わってないからだろう。私達が気を抜かないように、向こうもまたそれ以上に気を張っている頃だ。が、私達はここから離れられない」
元王宮魔導士、現第一魔導師団の護衛こそが任務であるとばかりに。
「守ってるのがボンクラばかりでこっちは張り合いがないですけどね」
「言うな。騎士団に属してる以上、目を瞑らなければならん事だ。今はまだ、あの方が戦果を上げるのを見守る事しかできない」
「本当にできるのでしょうか?」
僕、心配ですとロイ。
今のところ一切の活躍している姿の見えない第二魔導師団。
開戦から二時間が経過するが、本当に表に出てきてないのである。
その頃ヨルダは。
あんまりにも紅茶を楽しむのをやめない為、オメガに引きずられながら戦場に出てきて居た。
「あら、防衛網はまだ維持できてますね」
高台から一目見ただけで頷く。
作戦通りであると。
部下は己の仕事を果たしていると。
満足気ですらあった。
「だが左右に散開した兵士がいるとの報を受けている。今の所潜伏しているようだが、いつ動き出すか分からないと来ている。こう言う時こそ、小回りのきく第二魔導師団の出番ではないのか?」
詰め寄るオメガの顔を片手で払い、ヨルダは言い切る。
「そこはとっくに対処済みですよ。やられたと双方に分からないように手を打ったのでしょう。そして、いまだに動き出さない弓兵に痺れを切らして第二陣を送り込んできた時がわたくしどもの出番です」
「本当にそんなのが来るのか?」
「機密情報でしたがこちらを。部下からの報告書です」
そう言うのは部隊長に前もって報告するものでは? と疑いの目を向けるオメガ。
そして報告に目を落とし、ギョッとする。
「ワイバーン騎兵!? 本当か?」
「まぁ、遠目でしたがまず間違いないでしょう」
「こんなのがきたら魔導師団など一網打尽じゃないか!」
「ええ、ですので何も知らせてません。逃げ出したら王国民として後ろ指を差されることになりかねません」
「そんなことを言ってる場合では無いだろう! 亜竜といえど単体で街を破壊し尽くす魔獣だぞ!」
「とはいえ災害級程度ですよ。どうと言うこともありません。空を飛んでるのが厄介な程度でしょう?」
オメガは再びヨルダに何言ってんだこいつと言う目を向けた。
「あら、今頃怖気付きましたの? これは領土の奪い合いですのよ? これぐらいの戦力投入ぐらいはしてくるでしょう。何せ勝てば全ての要望が通るのです。負けたら相手のいいなり、世の常ですわ」
「そうだが……勝てるのか?」
「相手はこちらにはそれで十分と思っているでしょうが、正直モノの数ではありません。わたくしの師匠でしたら晩御飯のおかずにしていたでしょう」
「まぁ、あの人ならやりそうだ」
「はい」
何せ神話級を単独撃破。
かつての世界で封印する事しかできず、封印してもなお瘴気を森にばら撒き続けた悪魔の眷属通りがかりに倒して鍋にして食べようとする人だ。
その人の元で一年一緒に過ごしたヨルダにとって、伝説級どころか災害級なんてモノの数では無い。
なんならベア吉ぐらいの難易度だ。
いや、あれは普通に怖いな。なんというか目が怖い。
確実に何人か人を食ってる目をしていた。
たまにこちらに向ける視線が、好物を目にした時のルディと酷似していたのだ。
気のせいだと思いたいが、きっと気のせいではないだろう。
「なんにせよ、第一魔導師団が慌てふためいた時にようやくわたくしたちの出番がくると思っておいていいでしょう。それまではゆっくりいたしましょう」
いつの間にか取り出したグラスに、ワインを注いでいく。一緒にどうですかともう一つのグラスにも注ぐが、ワイバーン騎兵の投入を察知しながらもそんな余裕をかます程、オメガに余力が残されていなかった。
キリキリと痛む胃に、持ってくれよと鎮痛剤を投与し始める始末である。
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