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籠の中の鳥
籠の中の鳥
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秀人は屋敷内を注意深く見ながら歩いていた。
財政難であるが調度品は質のよいもので揃えられ、趣きもある。優子を囲っておくには最適だ。深層のご令嬢よろしく引きこもってきた優子は秀人からすると風切羽を切った鳥も同然。柔らかに揺れる黒髪を一房掴もうとしたところ、優子が振り向く。
「こちらがわたしの部屋です」
「あっちは?」
「あちらは姉の部屋ですね」
優子の私室は良子より狭く、陽の当たらない角となる。この家が優子の将来性で成り立っていたのは誰もが知っており、部屋の割り当てが不当に思える秀人は傾げた。
「何故、一番良い部屋を使わない?」
「何故って……」
優子も質問の意図が分からず傾げ返す。だが扉が開けられ、秀人は答えを自分で見つけた。部屋には沢山の書籍が並べられている。
「すごいな」
「両親が揃えてくれました」
「一日中、本を読んでるのか?」
「そういう日もあります」
秀人が先に入室し、書庫といっても過言ではない空間へ好奇心を巡らす。棚へ手を伸ばし、中身を吟味し始めた。
「暁月様も本がお好きですか?」
優子はその態度に少々期待を込め、尋ねてみた。
「いいや、まったく。これだけあれば価値のあるものがあるだろう? 知り合いに本に目がない男がいてな、好みなら大金を払うのもいとわないんだ」
開いていた項がぱたん、と閉じられる。
「断っておくが俺に学はない。こんな薄暗い部屋で知識を貪る神経など分からんし、ここが年頃の女が生活する場所とは到底思えない」
部屋の入口で立ち止まる優子へ、こちらに来いと顎で指示を出す秀人。
奥の寝台までの距離がまるで処刑台に続く道程みたい。優子は浅い呼吸を繰り返す。
「扉は閉めろよ。見せつけてやりたいなら構わないが」
「あ、あの、ところでお姉様とは、その」
「嫉妬か? はは、そんな訳無いか。お前にそういう感情があれば、まだ可愛気があるのに」
秀人は寝台に腰掛け、襟をくつろげる。着崩した姿から雄臭さが漏れ、優子をますます追い込む。
「可愛くないと思わるなら、こういう事はしなくとも」
「可愛くないが綺麗だとは思う。あんたは綺麗なものに囲まれ生きてこれたんだ。都合がいい物語ばかり読んできたからか、誰にでも等しくお優しい」
秀人は優子を引き寄せ、そのまま組敷いた。抵抗する間もなく押さえ付けられ、呆然と見上げる優子。
秀人が優子を綺麗と言い表すのは揶揄半分、本音半分だろう。優子はそれこそお伽噺より抜け出してきた、大事に大事に育てられたお姫様。
ごくり、唾を飲む秀人。
「や、やめて下さい」
「悪いが最高に興奮してる。俺みたいな男があんたを好きにできるなんてな」
優子の懇願は秀人の口付けによって吸い込まれていった。
財政難であるが調度品は質のよいもので揃えられ、趣きもある。優子を囲っておくには最適だ。深層のご令嬢よろしく引きこもってきた優子は秀人からすると風切羽を切った鳥も同然。柔らかに揺れる黒髪を一房掴もうとしたところ、優子が振り向く。
「こちらがわたしの部屋です」
「あっちは?」
「あちらは姉の部屋ですね」
優子の私室は良子より狭く、陽の当たらない角となる。この家が優子の将来性で成り立っていたのは誰もが知っており、部屋の割り当てが不当に思える秀人は傾げた。
「何故、一番良い部屋を使わない?」
「何故って……」
優子も質問の意図が分からず傾げ返す。だが扉が開けられ、秀人は答えを自分で見つけた。部屋には沢山の書籍が並べられている。
「すごいな」
「両親が揃えてくれました」
「一日中、本を読んでるのか?」
「そういう日もあります」
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「暁月様も本がお好きですか?」
優子はその態度に少々期待を込め、尋ねてみた。
「いいや、まったく。これだけあれば価値のあるものがあるだろう? 知り合いに本に目がない男がいてな、好みなら大金を払うのもいとわないんだ」
開いていた項がぱたん、と閉じられる。
「断っておくが俺に学はない。こんな薄暗い部屋で知識を貪る神経など分からんし、ここが年頃の女が生活する場所とは到底思えない」
部屋の入口で立ち止まる優子へ、こちらに来いと顎で指示を出す秀人。
奥の寝台までの距離がまるで処刑台に続く道程みたい。優子は浅い呼吸を繰り返す。
「扉は閉めろよ。見せつけてやりたいなら構わないが」
「あ、あの、ところでお姉様とは、その」
「嫉妬か? はは、そんな訳無いか。お前にそういう感情があれば、まだ可愛気があるのに」
秀人は寝台に腰掛け、襟をくつろげる。着崩した姿から雄臭さが漏れ、優子をますます追い込む。
「可愛くないと思わるなら、こういう事はしなくとも」
「可愛くないが綺麗だとは思う。あんたは綺麗なものに囲まれ生きてこれたんだ。都合がいい物語ばかり読んできたからか、誰にでも等しくお優しい」
秀人は優子を引き寄せ、そのまま組敷いた。抵抗する間もなく押さえ付けられ、呆然と見上げる優子。
秀人が優子を綺麗と言い表すのは揶揄半分、本音半分だろう。優子はそれこそお伽噺より抜け出してきた、大事に大事に育てられたお姫様。
ごくり、唾を飲む秀人。
「や、やめて下さい」
「悪いが最高に興奮してる。俺みたいな男があんたを好きにできるなんてな」
優子の懇願は秀人の口付けによって吸い込まれていった。
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