二人の魔法使い ~死が二人を分かつまで~

渡邊まさふみ

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一章

オリジナルポーションと木箱

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「それとこれも渡しておきますね。」

 各自に万が一のポーションを渡す。
 ポーションにもいくつか種類があり、主に流通しているのは、高い魔力を回復させる魔力ポーション、体力を回復させる回復ポーション、傷を治す治癒ポーションの三種類だがそれぞれに特徴がある。

 魔力ポーションは最も稀少性が高く、魔術協会でしか販売されていない、協会の収入源だ。
 稀少性が高いのはそもそも製作が錬金術を習得した者に限られ、絶対数が少ないことが理由だが、続けて服用しても効果が落ちる使い勝手の悪さが更に稀少性を高めている。
 しかし、魔術士にとっては魔力は生命線である事には変わりがない。
 そこで安全マージンを取るためにも必須でアイテムとして高額でも一定数が流通している。

 体力回復ポーションは最も安価で、即効性のある栄養ドリンクの様な者で、戦闘でのパフォーマンスを最大化する為に頻繁に使用される。
 また市民にも十分手が届く金額である為一般にも広く流通しており、病気にかかった時の体力低下を防いだり疲れにも効く滋養強壮剤など用途も豊富な常備薬として一家に一本はある。
 入手も容易で魔術協会、冒険者ギルド、協会はもとより、街の雑貨屋、武器防具屋、更には宿屋などでも売られていて、ポーションといえば体力回復ポーションを指すほど身近な物である。

 治癒ポーションは傷を治す特殊なポーションで、一般的に流通している物は魔力ポーションよりも安いが、その性能に応じて金額が変わる。
 傷の治りが劇的に早くなるのだが、その効果と時間で金額が違う。
 一般的な冒険者が使用しているのは、あまり深くない傷を徐々に癒す物だが、稼いでいる冒険者であれば、数分で切り傷、打撲を治す物や致命傷にならなければ、数日で回復するレベルの物も普通に持ち歩いている。
 ただし失った血液が戻る訳では無いので、体力回復ポーションと併用するのが常である。
 このポーションのみ服用と外用の両方が可能であり、即効性を高める為には外傷に振りかけ、更に飲用して相乗効果を促す。
 尚、欠損部位を修復してしまうレベルの物も古代魔法文明時代には存在した記録があるが、未だに再現されていない幻のポーションである。

「レオ、つかぬ事を聞くが」

「何でしょうか?ダズル」

「このポーションは先日の戦いの時のヤツとは違うよな?というか見たことのない色をしているのだが……何のポーションだ?」

 僕が渡したポーションは、魔力ポーションが薄紫、体力回復ポーションが緑、治癒ポーションが赤と一般的に色分けしているどれにも当てはまらない、黄色のポーションで少し輝いている。

「言うなれば、万能ポーションです。」

「万能???聞いたことが無い……」

「まぁそうでしょうね。オリジナルの非売品ですから。効果は失った魔力と体力、そして傷を纏めて回復します。」

 師匠以外が全員固まる。

「何だその規格外のポーションは聞いたことねぇぞ」

「ダメだ、付いていけねぇ、頭が……」

「効能聞いても良いか?」

 だんだんと師匠の非常識に免疫が生まれつつあるダブルが振り絞って聞いてくる。

「内服、外用どちらでもいけますが、一本で一分以内に全回復しますよ。流石に欠損部位は少ししか生えませんが、生きてさえいれば動けるまでには回復するはずです。」

「普通欠損部位は少しも生えねえ!」

「多分これ国宝級の代物だよな、ゲルド?」

「ああ、リックの言う通りこのポーション巡って戦争が起きてもおかしくねぇな……」

「やっぱりか!ダメだ、頭が痛い……」

 三人の様子を見て師匠がケラケラ笑っている。

「三人ともいい加減慣れろ!レオは非常識の塊だぞ!」

「歩く非常識が何言ってんですか!」

「ちょっ、ちょっと二人ともストップして下さい。レオ、確認だ。本当にこれ俺達が使っても良いのか?聞いての通り国宝級のお宝だぞ。」

「はい!使って下さい。国宝級の宝より皆さんの命の方が重要です。」

「泣かせること言うな!」

「ゲルド……泣きながら言うなよ。」

「うるさい!リックにはこの感動が分からんのか!」

「まぁまぁお二人とも。本当に問題無いですから、それにまだまだありますし。」

「まだある???」

「ええ、多分千本は。」

「国家予算が千本……」

「そんなに深刻じゃ無いですよ。普通に作れますし」

「作れるんかい!」

 三人が揃った。

「ええ、割と簡単に」

「いちいち突っ込んでられないな、これは。一応確認だけさせてくれ。このポーションは間違い無く国宝級の物だ。改めて問うが俺達に使わせて良いのか?」

「はい、必要と感じたら遠慮無く使って下さい。僕もこれの価値は分かっているつもりです。それだけにあの時は使う事が出来ませんでした。しかし、仲間の命がかかっている今は違います。不足の事態に備えておけば、僕らが周りを気にせず戦えます。それは結果的に全ての事態を好転させる機会を得る事にもなります。」

「分かった、そこまで言われれば是非も無い。有り難く使わせて貰う。」

「ようやく纏まったか。お前達はいちいち面倒だな。」

 師匠が微笑む。

「親しき仲にも礼儀ありって言いますから、俺達としては当然です。」

「感心な心がけだ。ならば私からはこれを渡しておこう。」

 師匠が杖を振るうと見慣れた木箱が現れる。

「何だ?どこから出てきたんだ?」

 初めて見るリックが驚いている。
 まぁこれだけの質量、普通のマジックバックには入らないから仕方無いが、今更ながらにダズルとゲルドも気づいた様だ。
 少し補足しておいてやるとするか。

「僕と師匠が使っているのはマジックバックでは無く収納魔法の一種です。沢山の物が収納出来る事は同じですが、通常のマジックバックとは全く別物です。」

「そんな物があるのか?」

「ええ、それこそ特殊すぎるので、まぁそんなの持ってるぐらいに思っていて下さい。旅に必要な物は全て持っているぐらい優秀ですけどね。」

「なるほど、それでこれか。」

「二人は知ってたんじゃ無いのか?」

「いや、それ以上にインパクトがあって、失念してた。リックも驚くぞ。」

「これ以上何かあるのか……」

「私の方で見繕っておいた。使え!」

 三人のやりとりはスルーして、木箱から片手剣をダズルに両手剣をゲルドに放る。

「今の装備はこの中に入れておけ、戻って来るまで預かっておく。リックはこれだな。」

 リックに二本のダガーを放る。

「これは?」

 ダズルとゲルドがニヤニヤしながら答える。

「アーティファクトだよ。それも国宝級のな。」
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