上 下
5 / 7

第五話

しおりを挟む
結果はやはり黒。

あなたは国王の子ではございませんでした。
 
 もちろん、大陸連合はあなたを王太子とすること、そして王族とすることを認めません。

しかし、よほどあなたの母君を愛していたのでしょう。国王はあなたを実の子であると言い張り、幼いうちに王太子にさせてしまいました。

 オリエーンズ王国は国王の権限が強く国王が法律より上に立ち、国内の誰であれ逆らうことはできません。国王があなたを王太子と言ったならそれは国内では覆すことのできない事実なのです。

 しかし、それは国内だけの話。

あなたが将来国王になるとします。もちろん国内ではあなたは絶対的な王。

 ですが、大陸連合に王族としてさえ認められていないものが王として君臨したら、大陸連合の名の下隣国は国民を欺き支配する反逆者とみなし、攻め入ることが可能になります。

これは大陸連合発足時に全王国、帝国の合意のもと決められたことです。

 攻めた国はその領土を得て、自国のものとすることができます。それはすなわち攻められた国の滅亡。

 このオリエーンズ王国はあなたが国王に即位した段階で滅びることが確定したのです。

 国王はもともと大陸連合にあまり賛成的でありませんでした。また、これまで王族として認められない者が統治した国はなく、この取り決めは一度も作用したことがなかったこともありなんとでもなると考えていたのでしょう。

 一方、国内の貴族はそのように楽観的に考えることはありませんでした。

 しかし、王権が強いこの国では国王に反対することはすなわち死を意味します。そこで貴族は大陸連合へと助けを求めました。

もちろん非公式ですけどね。

大陸連合は平和のために結成された機関。将来とはいえ戦争になるのは
避けたかったのです。
 オリエーンズ王国貴族の求めを受け入れました。

また、オリエーンズ王国貴族は独裁を強めていた国王に不満が高まっていたこともあり、この一連の出来事から国王排除も決意しました。
 
 幸運なことにオリエーンズ王国には大陸連合から正式に認められた王位継承権を持つお方がおりましたので。

 大陸連合の支援のもと貴族は国王と偽王太子排除のため水面下で動き出しました。

 しかし、いまから12年前、国王によって面倒なことになりました。

 正式な王位継承権を持つお方が偽王太子の婚約者として王命により決まってしまったのです。

そのお方こそティアーナ・ラフィト様。王位継承権第一位です。

 ティアーナ様はお母君が国王の妹であり、お父君が王国の筆頭公爵でございます。父方のお祖母様はノルディマン帝国の皇女殿下でございました。お母君がお亡くなりになり王位継承権第一位が大陸連合から認められたのです。

 大陸連合憲章により、反逆者の親族は連座刑が適用されます。

 このままではティアーナ様を巻き込むことになってしまうので、それを防ぐため派遣されたのが私、アナスタシアです。

 代々大陸連合裁判所の裁判長を務めるノルディマン帝国エリス伯爵家の次女であり、エドワード殿と年齢が近いこともあり私に任されました。

 任務はティアーナ様とエドワード殿を婚約破棄させること。
 そして、エドワード殿を監視すること。

 どうでしょうか?私は立派に任務を遂行致しました。
 国王へのクーデターを行う今日に合わせてあなたにティアーナ様を婚約破棄させるよう仕向けました」

アナスタシアは話し終えると周りを見渡した。

 彼女の話を強制的に聞かされたエドワードは呆然としており、その虚な目は何も映っていなかった。

「皆様、長い間捜査へのご協力ありがとうございました。

 大陸連合は今日を持ってこのオリエーンズ王国の王をティアーナ・ラフィト様に認めました。

 前国王、偽王太子、前国王を欺いた愛妾の3人は大陸連合によって裁かれます。

 では、私はこれにて」

優雅にお辞儀をし、捕縛されたエドワードを連れて騎士とともに立ち去ろうとするアナスタシアにそこにいた貴族は一斉に頭を下げ道を開ける。
 
 もちろんティアーナも深く頭を下げ、見送る。

広間の開け放たれた扉の向こうにはエドワードと同様に呆然とした前国王と、状況がわかっていないのだろう、暴れようとして押さえつけられているエドワードの母である愛妾の姿が見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神殿から追放された聖女 原因を作った奴には痛い目を見てもらいます!

秋鷺 照
ファンタジー
いわれのない罪で神殿を追われた聖女フェノリアが、復讐して返り咲く話。

聖女は魔女の濡れ衣を被せられ、魔女裁判に掛けられる。が、しかし──

naturalsoft
ファンタジー
聖女シオンはヒーリング聖王国に遥か昔から仕えて、聖女を輩出しているセイント伯爵家の当代の聖女である。 昔から政治には関与せず、国の結界を張り、周辺地域へ祈りの巡礼を日々行っていた。 そんな中、聖女を擁護するはずの教会から魔女裁判を宣告されたのだった。 そこには教会が腐敗し、邪魔になった聖女を退けて、教会の用意した従順な女を聖女にさせようと画策したのがきっかけだった。

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

〜復讐〜 精霊に愛された王女は滅亡を望む

蘧饗礪
ファンタジー
人間が大陸を統一し1000年を迎える。この記念すべき日に起こる兇変。  生命の頂点に君臨する支配者は、何故自らが滅びていくのか理解をしない。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

理不尽な婚約破棄をされ、家を追放された私は阿修羅になる

菫川ヒイロ
ファンタジー
異世界転生をしたきたエヴァが生を受けた場所は 名門貴族のローズヒップ家であった。 そんな彼女は日々淑女となるべく厳しい躾を受けて育ち ロランド王子との婚約にこぎつけるが 「やっぱり好きじゃなかったわ」と婚約を破棄され そんな娘の醜態に我慢できなかった父親は彼女を家から追放した 理不尽な出来事が続いた中で彼女は阿修羅となった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...