ヒロイン聖女はプロポーズしてきた王太子を蹴り飛ばす

蘧饗礪

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第四話

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「確かにあなたはこの国では王太子です。

 ですが、国際的にはあなたは平民です」

「は?」

一見矛盾しているように思えるアナスタシアの言葉に、困惑する。

「エドワード殿、あなたはどこの国の王太子であると主張するのですか?」

「俺はオリエーンズ王国の王太子だ。主張でもなんでもない。これは事実だがな」

「オリエーンズ王国は大陸連合に属している。

 実際は違うのですが、今まで王太子としてすごされてきたのだからわかりますね?」

「俺は王太子だ。実際そうだ。もちろん大陸連合に属しているのは知っている。この大陸に存在する国はすべて大陸連合に属していかなくては生き残れないのだからな」

いちいちエドワードがアナスタシアの言葉につっかかるのはめんどくさいが、話が進まないので無視して彼女は続ける。

「ええ、そのとおりです。この大陸に存在する国はすべて大陸連合に属し、各国からの代表者によって大陸連合諸機関は運営されております。

そして大陸連合は各国の王族、皇族より上位に存在します。

 国王、皇帝をはじめ王族、皇族の方々は大陸連合によって認められることではじめて各国の統治を他国から認められるのです」

「ああ、そうだ。それがどうした?」

「お分かりになりませんか?あなたは大陸連合に王太子としてだけではなく、王族としても認められていないのです」

「……は?」

「あなたの母君は国王が見初めた愛妾。それも平民出身です」

「……母上を卑しめる気か?」

「いいえ、私は事実を述べたまでです。

国王が城下へ視察した際、2人は出会い、まわりの反対をおしきって王宮に迎え入れたあなたの母君は、すぐに懐妊しエドワード殿あなたを産んだのです」

「そうだ」

「確かにあなたは王宮で生まれました。しかし、本当に国王の息子でしょうか?」

「……お前、母上が密通していたというのか」

「あなたの母君は国王が見初めるだけあってたいそう美しい方ですね。ですが、国王と出会う前から男性関係が華やかでございました」

「お、おまえ……ゔっ」

アナスタシアに向かって飛び出さんばかりの態度に、騎士が押さえつけ、猿轡を噛ませる。

「賢明な判断ですわ。ありがとう。これでゆっくり話すことができますね」

声を出せなくなったエドワードはアナスタシアをにらみつけるが、彼女は意に介さず続ける。

「そして、あなたが初めて国王に生まれた男子ということも疑念の一つでした。

 国王には正妃である王妃をはじめ、即妃の方々、愛妾の方々、多くの妻がいます。しかし、現在まで誰も懐妊していません。

初めての子にたいそう喜んだ国王はすぐに大陸連合に王族、王太子として認めるよう求めました。しかし、国内の貴族は王宮に迎え入れた段階から反対しており、またあまりにも早い懐妊のためあなたが国王の子であるとは思っておりませんでした。

 その声を聞き、大陸連合はあなたの真の出自を調査いたしました。

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