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第二話
しおりを挟む「そのどこがわたくしがやったことの証拠になるのでしょう?聞く限りわたくしではないご令嬢が怪しいのでは?」
ティアーナの真っ当な問いかけにエドワードは彼女を睨みつけるとにやりと笑みを浮かべた。
「まさかこの俺が分からないとでも?彼女ら3人はそなたの取り巻きであろう?そなたが彼女らに命じてやったことは明白だ」
「取り巻き?彼女たちが?……そもそも彼女たちは1週間ほど前に学園を去ったと記憶しておりますわ。でしたらわたくしとの関係は一切ございません」
「へっ、白々しい。そなたが口封じのため金でも渡したんだろう?それとも公爵家の力を後ろ盾に退学を強制させたのか?まあどちらにせよ、そなたが彼女らの退学に関係しているのは間違いない。公爵家の馬車が3人の屋敷から出ていくのをみたものがいるからな」
「……」
冷静に返答していたティアーナがであったが、笑みを深め初めて無言になる。その笑みが今までのそれとは異なるのが分かったのであろう、これを肯定と受け取ったエドワードはティアーナに宣告する。
「改めて、俺が先程述べた悪事に彼女は手を染めたとして婚約破棄のうえ国外追放を命じる」
胸をそらしそう告げる彼に対してティアーナはあくまで冷静に、もとの笑みを浮かべ反論を試みる。
「エドワード様、お待ちください。
先ほどの稚拙ないやがらせを公爵家の娘であり、次期王妃とも言われたわたくしがやってもいませんのに認めるわけにはいきません。王太子の婚約者として生きてきたこのわたくしの人生に誓って否定させていただきたいですわ。
婚約破棄の話ですが、それは国王陛下の許可があっての話でしょうか。
……わたくしは5歳のときに貴方との婚約が決められてから今まで、あらゆることを犠牲にしてこの国にふさわしい王妃になろうと努力を重ねてきました。
若輩者ながらいくつかの公務に携わらせて頂きましたし、外交にも取り組ませて頂きました。誠にありがたいことにわたくしが次期王妃であるなら、と条約に調印してくださった国もありますわ。
ですので、婚約破棄をしたとしても、わたくし自身が申し上げるのは大変おこがましいことですが、この王国にわたくし以上に王妃にふさわしい方がいらっしゃるとは思えません」
そう述べるティアーナにエドワードは冷たく返す。
「どれだけ王妃という地位を手に入れたがるんだ。そなたが王妃にふさわしいわけがないだろう?自意識過剰にも程がある。反吐が出る」
「エドワード様、わたくしは王妃の地位に固執しているわけではありません。ただ……」
「もうよい。ティアーナ、そなたは王妃に、俺の妻にふさわしくないのだ」
婚約破棄を訂正してもらおうと言葉を重ねるティアーナを無視し、決定事項のように続けるエドワードに、ティアーナは広間の入り口を一目みると観念したように答えた。
「わかりました。わたくしは貴方との婚約破棄を承知いたします」
「チッ、どこまでも気に食わない女だ」
美しいカテーシーをし、顔をあげエドワードの前を去る。
が、エドワードによって呼び止められる。
「おい、なぜ去ろうとする。俺は許可していないだろう。お前はそこで新たな次期王妃が誕生する瞬間を見るんだ」
「……」
無言で立ち止まり、エドワードを振り返った。
そして言われた通りに彼らを見つめる。
そんなティアーナを見て、満足気に口角をあげると隣にいる彼女にむかってひざまずく。
「アナスタシア……」
「エドワードさまぁ?」
手を取り、アナスタシアの手に口づける。
「やっと言うことができる。……アナスタシア、愛している。俺と結婚してくれ」
その言葉を聞き顔をしかめるティアーナを横目で見ながらアナスタシアの言葉を待った。
アナスタシアはティアーナとは対照的に愛らしい笑みを満面に浮かべる。
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