3 / 8
婚約破棄の書類
しおりを挟む
先ほど、婚約破棄の書類を持たせた従者を、使いに出したわたくしは、ラミーリア公爵邸でアフタヌーンティーを楽しんでいる。
「アリア様、殿下が簡単にサインするでしょうか?」
「えぇ、必ずするわ」
クッキーをつまんだところでちょうど、従者が帰ってきた。
「アリア様、サインをもらって参りました」
「ありがとう」
従者から受け取って、確認する。
「どうしてサインをしたのでしょう? 婚約破棄の書類なんかに。殿下は、アリア様そっちのけで女漁りをしていますが、アリア様にも手を出しそうな勢いでしたのに」
「まぁ、マリー、殿下がわたくしの耳元でおっしゃったことを聞いていたの?」
「私、耳はいいのです。本当に、許せませんわ」
「ふふ、そうだったわね。それで、殿下がこの婚約破棄にサインしたのは、これが読めなかったからよ」
「えっ、殿下って古語が読めないのですか」
古語は、話し言葉としては今は使われていないが、このような正式な書類には必ず使われる。そのため、王族、貴族はもちろん、庶民のほとんどが読める。が、勉強が嫌いな殿下は、もちろん学んでいない。
このことを知っているのは、わたくしと、国王夫妻、それとわたくしの父のような一部の上位貴族ぐらいかしら。
「えぇ、そうよ。殿下は古語が読めないの。でも、殿下はプライドが高い方だから、そんなことをわたくしの従者に言えるはずがないわ。だから読んだふりをすると思ったのよ」
「では、殿下は婚約破棄したことを知らないと?」
「そうでしょうね」
「さすがアリア様です。実際、殿下はこの書類を読んでおりませんでした。私が見たところ、目が書面をおっていませんでしたし、婚約破棄と分かっているような素振りを見せておりませんでした」
「ほらね」
ウクリナ王国では、婚約破棄は両者の合意がないとできない。
形式的に、婚約時に婚約破棄の書類も作成する。ここに2人がサインをすれば、婚約破棄が成立する。が、実際にこの書類を使う人はほとんどいない。あくまで、「形式」である。婚約破棄自体をする人が少ないのだ。婚約破棄は基本、男性の方に原因があったと捉えられてしまう。
「王宮に行きましょう。この書類を陛下に提出しなくては、正式に婚約破棄したことにはならないわ」
「アリア様、殿下が簡単にサインするでしょうか?」
「えぇ、必ずするわ」
クッキーをつまんだところでちょうど、従者が帰ってきた。
「アリア様、サインをもらって参りました」
「ありがとう」
従者から受け取って、確認する。
「どうしてサインをしたのでしょう? 婚約破棄の書類なんかに。殿下は、アリア様そっちのけで女漁りをしていますが、アリア様にも手を出しそうな勢いでしたのに」
「まぁ、マリー、殿下がわたくしの耳元でおっしゃったことを聞いていたの?」
「私、耳はいいのです。本当に、許せませんわ」
「ふふ、そうだったわね。それで、殿下がこの婚約破棄にサインしたのは、これが読めなかったからよ」
「えっ、殿下って古語が読めないのですか」
古語は、話し言葉としては今は使われていないが、このような正式な書類には必ず使われる。そのため、王族、貴族はもちろん、庶民のほとんどが読める。が、勉強が嫌いな殿下は、もちろん学んでいない。
このことを知っているのは、わたくしと、国王夫妻、それとわたくしの父のような一部の上位貴族ぐらいかしら。
「えぇ、そうよ。殿下は古語が読めないの。でも、殿下はプライドが高い方だから、そんなことをわたくしの従者に言えるはずがないわ。だから読んだふりをすると思ったのよ」
「では、殿下は婚約破棄したことを知らないと?」
「そうでしょうね」
「さすがアリア様です。実際、殿下はこの書類を読んでおりませんでした。私が見たところ、目が書面をおっていませんでしたし、婚約破棄と分かっているような素振りを見せておりませんでした」
「ほらね」
ウクリナ王国では、婚約破棄は両者の合意がないとできない。
形式的に、婚約時に婚約破棄の書類も作成する。ここに2人がサインをすれば、婚約破棄が成立する。が、実際にこの書類を使う人はほとんどいない。あくまで、「形式」である。婚約破棄自体をする人が少ないのだ。婚約破棄は基本、男性の方に原因があったと捉えられてしまう。
「王宮に行きましょう。この書類を陛下に提出しなくては、正式に婚約破棄したことにはならないわ」
55
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜
和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」
王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。
※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27)
※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

【完結】妃が毒を盛っている。
井上 佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。
王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。
側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。
いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。
貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった――
見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。
「エルメンヒルデか……。」
「はい。お側に寄っても?」
「ああ、おいで。」
彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。
この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……?
※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!!
※妖精王チートですので細かいことは気にしない。
※隣国の王子はテンプレですよね。
※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り
※最後のほうにざまぁがあるようなないような
※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい)
※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中
※完結保証……保障と保証がわからない!
2022.11.26 18:30 完結しました。
お付き合いいただきありがとうございました!

義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる