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2、宮廷調教師の処刑1

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「ザルモリまで頼みます」

「銀貨一枚だ」

殆ど追い出されるように国を出て、街道を走る運び屋に近くの街まで運んで貰う…………。

(そういえば急すぎてハルに話すの忘れた、怒髪天突いてそうだな)

馬車内には思ったより人が多く、数多の声と声が重なり、意味がわからない音声へと変換され、その喧騒に包まれていると、早すぎるホームシックを感じて、ハルのことを思い出してしまった。

ハルは…………ハル・リエマは私の友達、元々は国のゴミ山で暴れていた機械鎧兵オートマタ、わかり易く言うと魔王軍の機械系の魔物のハルが暴れていたので宮廷調教師の私にどうにかしろという仕事が回ってきた………実際は人体実験によって生み出された存在だが、国民にそんな事言える筈も無く、魔王軍のせいにしたわけだ。

断ったりしたら即クビにされるため必死になんとか手懐ける、名前も彼の手についていたネームプレートっぽいのから私が名付けた、後ろのエマゼっていうのはリコイル・エクス・マキナと書いてあったから、各単語の頭文字のリとエとマを取って組み合わせたいう超適当センスだが、彼は気に入ってくれた。


手懐けた後、予想以上に彼は強く優秀だったため、ガルシア帝国の最後の砦にして最高戦力、十二席しかない十二騎士ダイヤルナイツに特別に十三人目、黒機士オートシュヴァルツの二つ名をもらい配属され、それに合わせて13人になった十二騎士ダイヤルナイツ十三騎士ナイトオブラウンズと名前を改名されるなど、異例づくし、それほど彼は国にとって無視できない戦力だったのだろう。

そういえば最初は全然十三騎士ナイトオブラウンズになるのに乗り気じゃなかったのに、ある日突然やる気満々になってたな、理由は結局わからずじまいか。

「なぁーに弱気になってんだ私は、宮廷調教師クビになっただけで別に死んだわけじゃないし、アイツが死ぬところなんて想像もつかない…………お互いが生きてるなら…………きっとどこかでまた会える筈だ………だからその時聞いてみよう………時効ってことで教えてくれるかも………そう考えると再会が待ち遠しいな……ッッッッッーーー、な、なんだ?」

(…………馬車がいきなり止まった………街についたのか………いや早すぎる………どういう事だ………まさか盗賊でも出たのだろうか………だとしたら………警戒しておくか…………乗客たちの逃げるくらいは時間を稼げるようにーーー)

「何、ボーーッとしてるんですかリフィル・ロレーヌ」

思考の海に溺れていた私を現実に引き戻したのは隣に座っていた自分と同年代くらい女性の声だった。

「え、いや、その、馬車が急に止まったので盗賊にでも襲われたのかと………何もなければいいのですが………ちょうどよかった、もし何かあった場合私が突っ込んで気を引くのでその間に乗客達を逃してください……」

「ああ、なんだ、丁度良かったはこちらの台詞ですよ、

「は?、それ一体どういう意味…………そういえば貴方なんで私の名前知ってーーーへ?」

何かトラブルがあった場合に備えて女性に私の作戦を伝える、すると彼女はなんだか寒気のする笑顔で訳の分からないことを言い出す、そのことについて問い詰めようと質問の途中、もう一つ不可解な点に気づく、なぜか初対面の相手が自分のフルネーム知ってるのか、だがその疑問を言い切る事は出来なかった。

なぜか?理由は単純明快、

「な、何で……」

「うん?貴方のいう通りにしたでしょ?、貴方を突っ込ませて、私たちはその間にこわ~い盗賊さん達から逃げる……でしょ?……あ、でもひとつ違うか……」

「…………何が違うっていうの?」

………だネ♡」

「ま、まさか………ふざけッッッッーーー」

「じゃあね~元宮廷金食い無能調教師さん」

地面を舐めているかのような体勢から頭を上げ、さっきの疑問を一旦棚に上げ、新たに湧いた疑問を問いかけるも、うまく言語化できず、言われた方は何を聞いているのか分かりづらい聞き方になってしまった。

しかし、私のそんな心配は不必要、むしろ私の驚愕が面白くてしょうがないという風に、相手は私の聞きたい事を完全に理解して懇切丁寧に説明。

彼女の言葉を理解した瞬間、相手に飛びかかろうとするも、その瞬間、馬車は前進、顔に泥が跳ねてきて、視界を奪われる、聞こえるのは女性の罵倒と馬車の走行音だった。
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