上 下
26 / 48

25、意外とあり

しおりを挟む

「ーーー今だッッッッ!!!」

「ーーなんの!!」

………王宮の中庭でアルバート様とアレシア様は木刀を打ち合う、お互いの刀は何度も交わり、その度に木製打楽器のような聞いていて気持ちの良い音が鳴り響く。


アルバート様は男の有利を生かして力強くくるのに対して、アレシア様は無駄に振るわず、コンパクトに動かして対応している。


二人は目紛しく攻守を変えていき、アルバート様が攻めていたと思ったら次の瞬間にはアレシア様が攻め込み、お互いに相手の動きを熟知して一手も二手も先読みし自分の攻撃や防御を滑り込ませる。


二人の決闘は私から見るとまるで演舞のよう、それこそ永遠に続いて欲しかったが、不意に今までよりは甲高い音が鳴り響き、それがこの決闘のピリオドとなった。

……アレシア様がアルバート様の剣を弾き飛ばし、その隙に彼の首に木刀を突きつけた、彼女の勝利だ。

「私の勝ちですわね、アルバート様」

「ぐ、ぐぬぬ、も、もう一回勝負だ!!」

「望むところですわ!!」

「…………結構良いかもしれない……」


………偉い貴族令嬢二人を私の弟子(?)になる時はどうなることかと思ったが、不思議な事に今はかなり効率よく三人を鍛えられてると思う………そりゃ確かに三人になって面倒は増えたが、選択肢が増えたのは大きい。

組み手や剣の稽古となると自然、相手が私以外いないため、私とアルバート様が戦う事になるわけだが………なにぶん私と彼では身長が頭一つ、下手するとふたつぐらい違う………自分より大きい相手の戦いの練習にはなるから、実践的と言えば実践的、しかしそれは基本ができてからの応用だ、最初から応用をやると進みが悪い………しかし、似た様な体格のアレシアとの稽古はかなり有意義なようで、日に日にアルバート様の剣の腕が上がっていってる気がする、というのも私に負けても、アルバート様は目をキラキラさせていて、あまり悔しがっていないのも問題だ……悲しいかな人は悔しさをバネにした方が何倍も成長速度が速くなる、流石に同い年の女の子、アレシアに負けると悔しそうにもう一戦と挑み込んでいく彼。

「295、296、297、298」

「…………思ったより体力あるね、シャーリー」

「299、300!!!」

私が彼女の背中に腰をかけ、シャーリーは腕立てをやらせている、思ったより体力がある事に驚いた、シャーリーをシゴくのは今日が初日だが、まさか初日から人間乗せるほどの負荷をかけるとは思わなかった。

「やるねシャーリー、初日からできるとは思わなかった」

「いえいえ、コヨミお姉様のお尻が私の背中に乗っていると考えただけで何回でもいけました!!」

「そ、そう………」

私はシャーリーを褒め称えながらタオルを手渡す、彼女は汗を拭いながら平常運転の返事、少し引く私。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

処理中です...