魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜

ターナー

文字の大きさ
上 下
9 / 18

9、side天才魔術師、魔力無しの女の子に助けられる

しおりを挟む
全速力で走る。
大通りに出ることに成功したが彼は止まらず走り続ける。
人にぶつかったり、全身の筋肉は痛みを訴え、肺は酸素をもっとよこせと暴れていた。

それを全て無視して走る、全身全霊で走り続ける。

「ハッッッ、ハッッッ」

「待てガキ!!!」

「ヒッッッッ??!!」

ガラの悪い男達が自分を追ってくる、どうやら俺が貴族だから、身代金を家族に要求するつもりらしい。

「ーーーこっち!!」

「ーーー?!!」

何者かに手を引かれる、子供か、猫ぐらいにしか通れない、狭くて入り組んだ道を手を引かれながら進む俺。

「………ふぅ~、何とか撒いたみたい………ここはアイツらみたいに悪巧みしてる奴らがいっぱいいるから貴方みたいに綺麗な服着てると標的にされるから気をつけて」

「な、な、な」

俺を助けてくれたのは、白を基調としたシスター服を身に纏い、短めの黒髪、黒目、服と対照的な瞳と髪がコントラストを演出していた、中性的な顔付きだが、声や体格から察するに女の子、少女が持つにしては少しデカい剣を背中に背負っているのが特徴的だった…………その事実を認識した瞬間、頭に血が昇っていく。

「?」

「な、何余計なことしてるんだお前!!!」

「へ?」

「お、俺は槍魔法の名門、ランスロッド家の長い歴史の中でも歴代最強最高の超天才なんだぞ!!、あんなチンピラぐらいお茶の子さいさいだった!!、助けなんかいらなかったんだ!!!」

………嘘だ、正直に言うと、この時の俺でもきっとあの程度のゴロツキならあしらえるぐらいの実力があった、何せ9~10歳でもうすでに無詠唱を体得、初~中級レベルの槍魔法を使える、倒し方も簡単だ、近くの敵から槍魔法で腕や足の一本でも貫いて、近寄らせなければ良い…………元々、どんな奴が出てきても俺一人で大丈夫という自信があったから、家族に内緒で宿屋からこっそり抜け出してきたのだ、折角の旅行、楽しまなければ損だと思って…………だが、俺は自分が思っているほど強くなかった、初めて見る、悪意的な大人、そいつらに大声で話しかけられた瞬間、体がすくんだ…………魔法を一発でも入れれば俺の勝ち、そう分かっていてもダメだった、そいつらが一歩一歩近づいてくるたび、体の震えが一層増していく、汗が噴き出る………………気づいたら俺は逃げていた、必死に、無様に、形振り構わず…………だからかもしれない、自分は怯える事しか出来ない相手に冷静に最善の一手を打った人物が………自分と同年代の小さな女の子だったから、頭がカーッとしてこんな事を言ってしまったのかもしれない。

「………そっか、ごめん、余計なことしたね」

「~ーーーッッッッ、お前何が目的だ!!」

………自分が子供じみた癇癪を起こしているのに、彼女は苦笑しながら謝罪するという大人な対応、それに尚の事、腹が立った俺はさらに突っかかる。


「え?」

「言え!!、何が目的だ!!!」

「………目的?、目的か~~~………」

「ふん、やっぱり金か??!!、ま、まぁ、俺の役に立とうとした事実は認めてやる、いくらーー」

………当時9~10歳の子供とはいえこれはひどいと言わざるを得ない…………才能があったので増長していたし、まだ精神が未熟な年頃な為、自分の失敗を認められず、かといってこのまま何もせずに別れるのは気分が悪い、なので取り敢えず、ありがた迷惑だけど一応金を払ってやるよみたいなスタンスで話す…………。

「困ってる人がいたら助けるそれが私のモットー、もとい目的かな」

「は?」

………彼女の返答に思わず呆けてしまう。

「それに、お金よりさぁ~………君、魔法の天才なんでしょ??、ちょっと見せてよ」

「な、何言ってんだお前?」

「………私、ミレイ・ノーザンって言うんだけど……………生まれつき魔力無いんだよね~、だからさ、君の魔法を見せてよ!」

「ま、まぁいい、魔法なら金を用意するより楽だし…………『サンダースピア!!!』」

「おお!!、すごーい、キレイ!」

「ふ、ふふんすごいだろう\\\\\\」

「すごいすごい、あれ?、魔法って詠唱が必要だって聞いてたけど、君してなくない?」

「俺とそんじゃそこらの有象無象と一緒にするな、超天才の俺は無詠唱で魔法を発動できるんだよ」

「え?、無詠唱………って何?」

「よ、ようは他の奴がブツブツ言ってる間に俺は二、三発魔法を放てるってことだ!!」

「ええ??!!、すごーーーーい!!」

「ま、まぁ俺は天才だからな\\\\\\\\\\」

俺は言われた通り、魔法を見せてやる………危ないので初級程度の魔法だが、彼女は目をキラキラさせて眺める、すごいと連呼の嵐に自尊心が満たされ、気を良くした俺、最初の怒りはどこへやら……………彼女とは滞在期間中の短い間だったが、宿屋の近くでよく一緒に遊んだ…………そして旅行が終わり、自宅に帰ってきてから気づいた、もう二度と会う機会がないだろう彼女が好きになっていた事に………。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

ざまぁ?………………いや、そんなつもりなかったんですけど…(あれ?おかしいな)

きんのたまご
恋愛
婚約破棄されました! でも真実の愛で結ばれたおふたりを応援しておりますので気持ちはとても清々しいです。 ……でも私がおふたりの事をよく思っていないと誤解されているようなのでおふたりがどれだけ愛し合っているかを私が皆様に教えて差し上げますわ! そして私がどれだけ喜んでいるのかを。

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

処理中です...