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6、キノコ熊1
しおりを挟む「それで、貴方はこんなところで一体何をしているの?」
「そりゃ俺は何でも屋、依頼を受けたからさ」
「依頼?」
「ああ、高級キノコを取ってきてくれって頼まれたんだ」
「………確か、コカントル大森林って強い魔物が彷徨いてるって聞いてるけど………大丈夫なの?」
「へ、姉ちゃんに心配されるほど落ちぶれちゃいないぜ」
「ふーん」
雑談がてら彼がなぜこんなところにいるか聞いてみる私、どうやら彼は依頼の為に、森の中にあった小屋を拠点としているらしい…………あれから二、三日が過ぎた、怪我も八割がた塞がってきた、そろそろ出発する頃合いだろう。
「手伝ってあげるよ」
「え?、何で?」
「まぁ、世話になったし、ちょっとぐらい手伝ってもバチは当たらないでしょ」
「………へぇ、まぁそれじゃあちょいと手を貸してもらおうかな」
…………こんなに世話になったのに、はいさようならでは恩知らずすぎる、取り敢えずこの依頼を手伝う事に決めた私、彼は飄々とした笑みを浮かべ、私の提案を受け入れる。
「今日はこっちの方を見てみるか………アンタみたところ剣士だろ?」
「そうだね」
「俺は魔術師、つーわけで前衛を張ってくれると助かる」
「わかった」
大雑把にフォーメーションを決め、森の中を探索していく私達、どうせキノコ狩りをするだけとたかを括ったのが運の尽き。
「見つけた!!」
「え?、あ、あれ?」
「ああ!!、依頼人からもらった見本の通りの………あれ、なんか熊に生えてない?」
ハルバートが指差す方向にいたのはデカい熊だった………一応、頭の上にキノコらしきものが生えている気がする。
「予想外すぎるなぁ………」
「呆けてないで、前衛頼むぞミレイ」
「ーーー!!、わかった」
「防御力強化」
私は熊の前に立ちはだかる、剣を構えた瞬間、私の体の周りに光の膜のような物が展開される。
(ーーー!!、無詠唱??!、見たとこ精霊獣のサポートもないのに………この人いったい……)
「グルァッッッッ!!!」
「おわっっっと」
意識をハルバートに向けた瞬間、キノコ熊は恐るべき跳躍力を見せて、上空から私に前足を振り下ろしてくる、私は間一髪、何とか剣で受け流し避ける。
「あ、あれ?」
数秒も経たず、ハルバートがかけてくれた防御膜のようなものが消えていく……。
(?!!……何で、流石に効果切れるの早過ぎだろ??!!)
ハルバートも顔を驚愕に染める。
「グルァッッッッ!!!」
「ーーー痛ッッッッッ??!!!」
「リレイ!!!」
二度目の隙を見逃してくれるほど、相手も甘くない、剣でガードするも、ガードごと木へと叩きつけられる。
「今助ける!!、ライトニング・ランス!!」
私のピンチにすぐさま雷属性の魔法を唱え、雷の槍を放つも当たらない、素早い身のこなしで華麗に回避される
「思ったより素早い」
(……強化系の魔法を私にかけても聖剣を持っているせいですぐに魔力を吸収、霧散されてしまうのか………それなら!!)
「当たらねぇか……」
「ハルバート、君って氷属性魔法って使える!!?」
「つ、使えるが……」
「それじゃあ、できるだけ強い氷魔法で私を攻撃して!!」
「ハァッッッ??!!、んなこと出来るわーー」
「ーーー良いから早く!!」
「………どうなっても知らねぇぞ、『アイシクルランス』!!」
キノコ熊と接近戦をしながら作戦を決定する私、一度、キノコ熊を剣で無理やり押し退け、距離を取る、その瞬間、氷の槍を私目掛けて放たれる。
「グルッ」
氷魔法が飛んできた方向にいるハルバートを睨みつけるキノコ熊。
「ルァッッッ!!!」
「やっべ!??!!」
さっき雷の槍で攻撃された恨みもあるのだろう、キノコ熊は今度はハルバートの方へと走り出す、巨体に似合わない俊敏さであっという間に彼との距離を縮める。
「あの熊の動きを止めて!!」
『グルァッッ!!』
氷の槍を切り裂き、吸収、さっきの強化魔法と合わせた全魔力を使って赤狼を、あの時の感覚を思い出して、実体化させる、ぶっつけ本番だが、うまくいったようだ………冷気の咆哮は地面を伝って、キノコ熊の四肢を凍結させた。
「グガァッッッ??!!」
「なんとかなった……」
「お、おお、助かったぜリレイ??!!」
「よいしょっと………依頼達成」
私は身動きの取れなくなったキノコ熊の頭の天辺にあるキノコを切り取る、どうやら吸収した魔力を一気に消費した為、赤狼は一瞬で消えてしまった………やっぱりそうだ、吸収した魔力で聖霊獣を実体化させることができるんだ………吸収した魔法や魔力に応じた属性の攻撃を放てる………そして使い切ってしまうと霊体化する………でも、じゃあ今まで実体化しなかったのはいったいなんでなんだろうか?。
(まぁ……今は気にしてもしょうがないか……)
「それじゃあ帰ろうか」
「?、この熊は狩らないのか?、肉もうまそうだし、皮は素材として売れると思うぜ?」
「………依頼内容はキノコだけでしょ、無闇に殺したくないし………まぁ、ハルバートが狩りたいっていうなら止めはしないけど」
「ーー!!、へぇ~……変わった奴だなお前………俺もキノコがありゃそれで良いや」
熊を放置することに疑問符を浮かべるハルバートだったが、私の話を聞く、一瞬、呆けた後、少年のように無邪気な笑顔を浮かべた。
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