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3、襲撃者
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「ザルモリまで頼みます」
「銀貨一枚だ」
殆ど追い出されるように国を出て、二日三日歩き、やっとこさ街道を走る運び屋の所までこれた、近くの街まで運んで貰う…………。
(そういえば急すぎてクラヴィルに話すの忘れてた………)
馬車内には思ったより人が多く、数多の声と声が重なり、意味がわからない音声へと変換され、その喧騒に包まれていると、早すぎるホームシックを感じて、クラヴィルのことを思い出してしまった。
クラヴィルは…………クラヴィル・ロートレックは私の数少ない男友達、元々は田舎で暴れていた鉄獅子の獣人、突然変異で生まれ、暴れている獣人を私にどうにかしろという仕事が回ってきた………実際は鉄の硬度を持つ爪や牙を持つ獣人を生み出そうとする人体実験によって生み出された存在だが、国民にそんな事言える筈も無く、シラを切ったというわけだ。
私が断れば、きっと他の聖女が派遣され、遠慮容赦なく獣人をミンチにしていたことだろう……流石にあちこち身体を弄くり回されて、邪魔になったから肉片にされる……というのは可哀想すぎるので、何とか相手を殺さず無力化に成功。
拘束した後、なんか借りてきた猫みたいに大人しくなったため、自立させる一環でできる仕事を探し、最後は騎士団に入団、予想以上に彼は強く優秀だったため、王国騎士団三番隊隊長になった、普通入って間も無い新人が部隊長になるなど有り得ないが、それほど彼は国にとって無視できない戦力だったのだろう。
そういえば最初、全然部隊長になるのに乗り気じゃなかったのに、ある日突然やる気満々になってたな、理由は結局わからずじまいか………。
「なぁーに弱気になってんだ私は、聖女をクビになっただけで別に死んだわけじゃないし、クラヴィルが死ぬところなんて想像もつかない…………お互いが生きてるなら…………きっとどこかでまた会える筈だ………だからその時聞いてみよう………時効ってことで教えてくれるかも………そう考えると再会が待ち遠しいな……ッッッッッーーー、な、なんだ?」
突如響く轟音、馬車が大きく揺れる、どうやら誰かに魔法で攻撃されているようだ。
「キャッッ??!!」
「ま、まさか賊か??!!」
異変を察知した乗客たちは慌てふためき、落ち着きを無くす。
「ーーーーだりゃ!!」
私は外に出て、未だ続く魔法の追撃を退魔の剣で切り裂く、どうやら魔法の正体は火の魔法だったようだ、唐竹割りの要領で魔力を吸収された魔炎は真っ二つに割れ、割れた炎は近くの木へとぶつかり、燃え移る。
「私が敵の注意を引く!!、その間に逃げて!!!」
「え!!、で、でも………」
「ーーーいいから早く!!」
「は、はい!!」
馬車の御者に自分が敵を食い止めるから行けと指示を出す、しかし、置いて行く事に罪悪感を感じるのか、迷う御者、だがすぐに私の鬼気迫る迫力に押され、馬車を出発させる。
「出てきなよ」
「…………」
無言で出てきたのは黒いローブに身を包んだ人間が木の後ろから姿を表す……。
「何が目的?」
「………お前の命」
「ーーーッッッッ??!!その声は…………」
「あら、魔力無しの無能にしては察しが良いじゃない」
聞き覚えのある声をしているその人物はフードをたくしあげる、元義妹、私の婚約者を奪ったマーガレットだった………。
「な、何で……」
「目障りだから殺しとこうと思ってねぇ……」
「だ、だったら最初から国外追放なんかせずに処刑でもすれば……」
「………アンタみたいな無能に国外追放の温情をかければ、八光聖女……いや、今は『七光聖女』?、まぁどっちだって良いや……ともかく私達の評判が慈悲深い聖女って鰻登りになる、そして上げた後、人知れず殺す………そっちの方が効率が良いーーでしょッッッッ!!!」
「ーーーッッッッ!!??」
刹那、マーガレットの姿が掻き消える、いつの間にか懐に潜り込まれていた、踏み込みと同時に魔炎を纏った鉄拳が飛んで来る、間一髪、聖剣でガードする、しかし完璧には防御しきれず、服の一部を焼き焦がされ、服の切れ端が宙をまう。
「よく避けたわね!!、ならこれはどうする、火鳥」
「ーーーッッッッッ」
マーガレットが聖武器の一つである手甲をつけた手をこちらに向けると、火を纏った怪鳥が出現、さっき馬車を襲っていた魔炎とは比べ物にならない、巨大な火の玉が私めがけて放たれる。
「ふん、他愛も無い………」
辺り一帯が火に包まれ、マーガレットは勝ちを確信する
「……誰が?」
「ーーー??!!、馬鹿な……直撃したはず………」
「………なぁーに、慌ててたんだ、さっきの魔炎を切り裂いたのはこの剣じゃない………」
………全くのノーダメージとはいかなかったが、致命傷は避けた、刀身に触れたらそれがどんな魔法であれ、魔力を吸収、霧散させる、聖霊獣の魔法を吸収できるかどうか、わからなかったが………どうやら吸収できるようだ………。
「……そうか、そういやそのガラクタ、魔力を吸収、霧散させるんだっけ?、忘れてた……わッッッッ!!!」
「何度やっても無駄!!」
またもや放たれる魔炎、私は聖剣を横薙ぎに振り抜き、魔炎を霧散させる。
「吸収っていうなら吸収限界が来るまで魔炎をぶつけてやる!!」
「ーーー!!」
なるほど………確かに私と違って高い魔力を見込まれ聖女になったマーガレットの魔法を吸収し続ければいつかはこっちがパンクしてしまうかも知れない、無尽蔵に吸うといっても短時間に吸える量には限界が存在するのかも………しかし、精霊獣を従えている彼女、実質二対一の状態で接近戦を仕掛けるのはあまりにリスキー。
(………ここは耐えるだけ耐えて、隙を見て逃げるしかない………)
「銀貨一枚だ」
殆ど追い出されるように国を出て、二日三日歩き、やっとこさ街道を走る運び屋の所までこれた、近くの街まで運んで貰う…………。
(そういえば急すぎてクラヴィルに話すの忘れてた………)
馬車内には思ったより人が多く、数多の声と声が重なり、意味がわからない音声へと変換され、その喧騒に包まれていると、早すぎるホームシックを感じて、クラヴィルのことを思い出してしまった。
クラヴィルは…………クラヴィル・ロートレックは私の数少ない男友達、元々は田舎で暴れていた鉄獅子の獣人、突然変異で生まれ、暴れている獣人を私にどうにかしろという仕事が回ってきた………実際は鉄の硬度を持つ爪や牙を持つ獣人を生み出そうとする人体実験によって生み出された存在だが、国民にそんな事言える筈も無く、シラを切ったというわけだ。
私が断れば、きっと他の聖女が派遣され、遠慮容赦なく獣人をミンチにしていたことだろう……流石にあちこち身体を弄くり回されて、邪魔になったから肉片にされる……というのは可哀想すぎるので、何とか相手を殺さず無力化に成功。
拘束した後、なんか借りてきた猫みたいに大人しくなったため、自立させる一環でできる仕事を探し、最後は騎士団に入団、予想以上に彼は強く優秀だったため、王国騎士団三番隊隊長になった、普通入って間も無い新人が部隊長になるなど有り得ないが、それほど彼は国にとって無視できない戦力だったのだろう。
そういえば最初、全然部隊長になるのに乗り気じゃなかったのに、ある日突然やる気満々になってたな、理由は結局わからずじまいか………。
「なぁーに弱気になってんだ私は、聖女をクビになっただけで別に死んだわけじゃないし、クラヴィルが死ぬところなんて想像もつかない…………お互いが生きてるなら…………きっとどこかでまた会える筈だ………だからその時聞いてみよう………時効ってことで教えてくれるかも………そう考えると再会が待ち遠しいな……ッッッッッーーー、な、なんだ?」
突如響く轟音、馬車が大きく揺れる、どうやら誰かに魔法で攻撃されているようだ。
「キャッッ??!!」
「ま、まさか賊か??!!」
異変を察知した乗客たちは慌てふためき、落ち着きを無くす。
「ーーーーだりゃ!!」
私は外に出て、未だ続く魔法の追撃を退魔の剣で切り裂く、どうやら魔法の正体は火の魔法だったようだ、唐竹割りの要領で魔力を吸収された魔炎は真っ二つに割れ、割れた炎は近くの木へとぶつかり、燃え移る。
「私が敵の注意を引く!!、その間に逃げて!!!」
「え!!、で、でも………」
「ーーーいいから早く!!」
「は、はい!!」
馬車の御者に自分が敵を食い止めるから行けと指示を出す、しかし、置いて行く事に罪悪感を感じるのか、迷う御者、だがすぐに私の鬼気迫る迫力に押され、馬車を出発させる。
「出てきなよ」
「…………」
無言で出てきたのは黒いローブに身を包んだ人間が木の後ろから姿を表す……。
「何が目的?」
「………お前の命」
「ーーーッッッッ??!!その声は…………」
「あら、魔力無しの無能にしては察しが良いじゃない」
聞き覚えのある声をしているその人物はフードをたくしあげる、元義妹、私の婚約者を奪ったマーガレットだった………。
「な、何で……」
「目障りだから殺しとこうと思ってねぇ……」
「だ、だったら最初から国外追放なんかせずに処刑でもすれば……」
「………アンタみたいな無能に国外追放の温情をかければ、八光聖女……いや、今は『七光聖女』?、まぁどっちだって良いや……ともかく私達の評判が慈悲深い聖女って鰻登りになる、そして上げた後、人知れず殺す………そっちの方が効率が良いーーでしょッッッッ!!!」
「ーーーッッッッ!!??」
刹那、マーガレットの姿が掻き消える、いつの間にか懐に潜り込まれていた、踏み込みと同時に魔炎を纏った鉄拳が飛んで来る、間一髪、聖剣でガードする、しかし完璧には防御しきれず、服の一部を焼き焦がされ、服の切れ端が宙をまう。
「よく避けたわね!!、ならこれはどうする、火鳥」
「ーーーッッッッッ」
マーガレットが聖武器の一つである手甲をつけた手をこちらに向けると、火を纏った怪鳥が出現、さっき馬車を襲っていた魔炎とは比べ物にならない、巨大な火の玉が私めがけて放たれる。
「ふん、他愛も無い………」
辺り一帯が火に包まれ、マーガレットは勝ちを確信する
「……誰が?」
「ーーー??!!、馬鹿な……直撃したはず………」
「………なぁーに、慌ててたんだ、さっきの魔炎を切り裂いたのはこの剣じゃない………」
………全くのノーダメージとはいかなかったが、致命傷は避けた、刀身に触れたらそれがどんな魔法であれ、魔力を吸収、霧散させる、聖霊獣の魔法を吸収できるかどうか、わからなかったが………どうやら吸収できるようだ………。
「……そうか、そういやそのガラクタ、魔力を吸収、霧散させるんだっけ?、忘れてた……わッッッッ!!!」
「何度やっても無駄!!」
またもや放たれる魔炎、私は聖剣を横薙ぎに振り抜き、魔炎を霧散させる。
「吸収っていうなら吸収限界が来るまで魔炎をぶつけてやる!!」
「ーーー!!」
なるほど………確かに私と違って高い魔力を見込まれ聖女になったマーガレットの魔法を吸収し続ければいつかはこっちがパンクしてしまうかも知れない、無尽蔵に吸うといっても短時間に吸える量には限界が存在するのかも………しかし、精霊獣を従えている彼女、実質二対一の状態で接近戦を仕掛けるのはあまりにリスキー。
(………ここは耐えるだけ耐えて、隙を見て逃げるしかない………)
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