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1、プロローグ

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八光聖女、ガルシア王国にいる聖女達、彼女達は女神マフルに愛されており、生まれつき高い魔力を有していて、聖霊獣が宿った七つの聖武器の守り手にして担い手、火拳の聖女マーガレット、水弓の聖女イザベラ、風槍の聖女マール、地槌の聖女ウリア、闇杖の聖女ルヴァン、光旗の聖女ルイン………彼女達は美しく、何より強かった、魔物の大群だろうが侵略国家だろうが、彼女達がいる限り、この国は滅ぶ事は無いと誰も疑わなかったことだろう…………しかし八光聖女には奇妙なところがあった、有名なのは七人だけで、最後の一人の聖女について詳しく知る者は国外には誰一人いなかった………滅多に国外に出てこなかったからだ………噂では八人目の聖女は退魔の力を持つ、あらゆる魔力を吸収し、霧散させてしまうと………だが、この噂を信じるものはいなかった………なぜならそんな力を持っているんだとしたらあらゆる魔法を無効化できるということになる、魔力至上主義、魔法が万能の力と神格化されているこの世界の住人にとって、それは神を殺せると言われているようなものだからだ………。


「「「「「「ミレイ・ノーザン、アンタは『八光聖女』をクビよ」」」」」」

「………はい?」

私、ミレイ・ノーザンはいつも通り、氷の魔法を失敗して辺り一帯を氷漬けにしてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して、隣家に火が燃え移ってしまったので消火してほしいとか、様々な国の魔力トラブルを片付けた後、珍しく、ガルシア国の中枢、聖女の会議に呼び出され、着くなり七人の義妹達、異口同音の第一声は一方的な解雇通告。

 一瞬頭が真っ白になった、否、理解することを拒んだ。

 しかし感情なんてものは時間が経てばたやすく冷やされ、冷静にさせられる。

 冷静になってしまえば必然、相手の言うことを論理的かつ合理的に受け止めれてしまう、それが人間というものだ。

 事実、私はの言葉の意味を把握した。

 だが、理解するのと解決するのはわけが違う、
 理解したところで打開策がなければ破滅的未来しかない。

 しかしそんな都合のいいもの用意できてるわけもなく、額に脂汗をかきながら必死に頭を回転させるが時すでに遅い。

「ちょ、ちょっと待ってよ………いきなりクビって………」

「……あのさ……アンタみたいなゴミと本物の聖女たる私達が一緒くたに扱われているのが嫌だって言ってんの」

「そうそう、魔力無しの聖女なんて存在が許されるわけないっつうの」

「精霊獣を呼び出すことすらできないカスが」

「ま、待ってよ、この話って義母おかあさん………アビゲイルさんは知ってるの?」

「当然よ、これはノーザン家の総意なのわかったらとっとと出て行ってくれない?」

「そ、そんな………」

………ノーザン家は代々、八つの聖武器を受け継ぎ、このガルシア国を守ってきた聖女の一族、聖武器の使い手は魔力が高い者が選ばれる………だが、八つの中で一つだけ長年埃をかぶっていた聖武器があった………それが私の持つ退魔の剣、この剣はあらゆる魔力を吸収する、……しかし、それは善悪の区別なく行われるため、魔力を持っている使い手は際限なく聖剣に吸われてしまう……魔力を際限なく吸われてしまうという事はそれ即ち生命力を吸われ尽くすと同義、魔力が高い聖女の一族、いやこの国にこの武器を使いこなせるものはいなかった………魔力が低い平民の中でも、全く魔力を持たない私以外には………魔力が一切ない女など、何の価値もない、どんな仕事にもつけない、残飯を漁り、何とか飢えを凌ぐ日々………そんな私に転機が訪れた、聖女の一族の族長であるアビゲイルさんが私を必要としてくれた、ノーザン家に養子として向かい入れてくれた………義妹達は他国の王子や重鎮達の依頼を優先し、王子との婚約狙いや貴族達に恩を売り、旨い汁を吸う事しか頭になく……平民達のトラブルは全て私に丸投げされていた………それでも拾ってくれ、名前をくれたアビゲイルさん、お世話になっているノーザン家に恩返ししようと頑張ってきた………少しでも皆の力になれるなら………魔力が無く、何の価値もない私でも、役に立てるならと…………。

(…………まさか、義妹達にこんな風に思われてたなんて………)

………いや、心の底では薄々気づいていた………私をみる彼女達の蔑む目、見下すような発言…………ただ、必死に見ないように、見ないようにと目を背け続けていただけだ…………ただ、信じたかっただけだ、同じ聖武器を持つ仲間だと………。

「ほら、早く、これに血判押しなさい、そうすれば晴れてアンタはノーザン家の者じゃなくなる」

「え、いや、その………」

…………流石に義妹達の言う事を鵜呑みにするわけにはいかない…………今、族長であるアビゲイルさんは他国へ行ってこの国にはいない………アビゲイルさんがそんな事をしてくるとは思えない、直接聞くまでは信じられない………あの契約書に血判を押したら最後、私はノーザン家から追放されてしまう………。

「………火鳥ヒノ

「~ーーガハッッッッッ??!!………な、何を………」

「手間かけさせんじゃないわよ、アンタはいつも通り私達の言う事を聞いてればいいの」


……………言い淀んでいると、背中にいきなり魔炎をぶつけられ、床に這いつくばる…………どうやら後ろからマーガレットが持つ聖武器、ガントレットに宿る精霊獣、火鳥ヒノが放った魔炎のようだ………そのまま私を羽交い締めにする義妹達…………。

「痛ッ」

「…………これでよしっと」

………契約書に無理矢理、血判を押させる義妹達、魔力が無い私が鍛えられるのは身体だけだったので、体力には自信があるが、流石にこの人数差ではどうしようもない…………私、ミレイ・ノーザンは………ただのミレイになってしまった…………。


「よし、これでアンタはノーザン家とは何の関係もない赤の他人」

「この国から早く消えてくれない、目障りだから、国外追放よ」

「ああ、その剣、アンタみたいな魔力無しにしか使えないガラクタだし、あげるわよ、そんなオモチャが聖武器の一つに数えられてるなんて嫌だしねぇ~」

「やっさしぃ~キャハハハハ」

「やっと無能を追い出せた」

「……………」

………血判をさせた後は罵詈雑言の嵐、好き勝手に言いまくる七人………。

「………今までお世話になりました……」

今まで世話になったのは事実、最後の意地として、スカートを軽くたくしあげ、頭を下げる、アビゲイルさんに習ったカーテシーで会釈をし、私はその場を後にした。


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