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3、どいつこいつも

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「…………はぁ………」

最悪な気分で街を徘徊する私……いくあてなどあるわけもない………アイツらとの関係性を断ち切りたかったので、仕事も辞めてきた………。

「ーーーッッッッ……こりゃマズイな………」

数時間外を歩き、一休みがてら棺桶の中身を見ると、祖母の遺体から鼻をツンと刺激する腐敗臭が漂ってくる…………。

『どうすんだよ紅葉、シンさん腐っちまうぜ?』

「飯綱、人目がある所では顔出すなって言ってるでしょう」

『あ、わりーわりー、けどヨォ、俺だって世話になったし………死に方が酷すぎたから、せめて供養はちゃんとしてやりたいジャンよ』

「…………だよねぇ………」

不意に私の首元から狐が顔を出して来る………忍者には相棒となる妖怪が一匹つくのが通例だ、私にも狐の妖怪、飯綱がいる……のだが、この国では少し奇異な目で見られるので、普段は私の服に隠れてもらっている。

……………二、三日も祖母を持って彷徨いていたらあっという間に腐ってしまうだろう…………その前に土葬なり火葬なりしてあげたい………。

「どうしてくれぇんだよぉこれ!!、兄貴の服を泥で汚しやがってよぉ!!」

「す……すみません……」

「すみませんで済んだら憲兵はイラねぇっての??!!、弁償しろよ!!、一千万ゴールドだ!!!」

「そ、そんなお金持ってないですよ………」

「無い~?????、なら俺らのツテで腎臓なり心臓なりを売らせてやるよ」

「やっさしぃ~~オラ感謝しろよババァ」

今後の事について、飯綱の毛並みを撫でて、ストレス軽減をしながら考えていると、眼の前でこれまた化石として扱われそうなほどテンプレな絡み方をされている老人を見つける。

「……はぁ………どいつもこいつも………」

義理の父、義妹と続いて、道を歩いてるだけでまたアホが出て来た事に内心呆れる私。

「おい、貴様ら!!、お年寄り一人相手に複数人で寄ってたかって恥ずかしくないのか!!??」

「「「あん??!!」」」

私が助けようとした矢先、子供が割って入っていく……。

(おいおい………大丈夫か?)

「大体、喋りながらよそ見をしてぶつかって来たのはお前たちの方だっただろう、ちゃんと俺はみていたぞ!!!」

「おいおい、何だよこのガキ………」

「さぁ、彼女に謝ーーー痛ッッッッッッ」

「ーーーーうっせんだよぉッッッッ!!!!」

…………ぶっちゃけ今の私に他人を助ける精神的余裕も肉体的余裕もない、あの子が何とかしてくれるなら私もノータッチでいきたかった………まぁ、あのチンピラどもが正論を言われて納得するはずもなく、相手が子供だから優しくするという道徳も持ち合わせておらず、男の子の小さな体に容赦なく蹴りを入れ込む、小さな体は注を舞い、地べたに叩き付けられる。

(………いい服着てるからこの子も貴族だろう………どうせ貴族なんてどいつもこいつもちょっと痛めつけられたら逃げるんだろ………)

服装から見て、裕福な貴族…………貴族なんて極少数を除けば性悪な化け物どもしかいないのは身を持って知っている…………子供が逃げ帰ってからお婆さんを助けに入ろうと考える私。


「や、やめてください!!、わ、わかりました!!、お金はなんとかするので、もうーー」

「おお?、そうそう、初めからそう言えばーーー」

「まーーー、て………」

「あん?」

老人が観念してお金を払うと言う、チンピラ達は機嫌を良くするが……その瞬間、子供が足を掴む。

「ダメ……だ……こんな奴らに金を渡す必要は………ない…………」

「黙れガキぃ!!」

「ーーーゴフッッッッ??!!」

多勢に無勢、その上体格は二回りも大きい男達、どう見たって勝ち目はないが………それでも何度も立ち向かう子供……。

(…………何でそこまで………)

「ガキぃ、お前このババァの知り合いかなんかか?」

「……違う」

「じゃあもう消えろ、じゃなきゃ本当に殺すぞ?」

「………たとえ殺されたって……逃げるもんか………お前らみたいなクズから………命を賭けて民を守る……それが俺の王道だ」

「はぁ?、意味ワカンねぇこと言ってじゃねぇよ!!!」

「ーーーガハッッッッ??!!!」

子供は再度地面に叩きつけられる。

「もういい、殺す」

チンピラは腰から剣を抜き放つ、鈍く光る銀色の刀身、大上段に構え振り下ろす男。

「………子供と老人相手に刃物はやりすぎだっつうの」

「「「「??!!」」」」

………流石にこれ以上は黙ってみる事はできないので、間に入って、刀身を片手で受け止める。


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みんなの感想(1件)

Vitch
2022.08.31 Vitch

婿養子(?)がイキってますね。

解除

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