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プロローグ・2

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「ただいま!!、待たせてわりぃ!!」

数年間に及ぶ、魔物との戦争も終戦、なんとか終わり、イの一番にイヴに会いに行ったが……不思議な事に彼女の実家の本邸にはおらず、離れの小屋にいるらしい……魔法の練習でもしているのだろうか?、不可解に思いながらも小屋の玄関を開けた。

「……イ…………ヴ………?」

………ドアを開けた俺の視界に飛び込んできたのは………縄に首を吊られ、息絶え、変わり果てたイヴの姿だった………。

あまりの光景に後退りながら、思わず派手にコケてしまう。

「ーーーイテッッッッ???!!………なんだこれ?」

俺の頭に一つの本が落ちてきた………どうやらコケた拍子に玄関に置いてある靴入れを倒してしまい、その上にあったこれが落ちてきたようだ………。

「日記か?」

見たところ、日記のようだ………一ページ目から見ていく………どうやらこの家に養子としてきた日から記してある。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
○月×日

「ちょっと遅い~」

「す、すみませんでした………ど、どうぞ………」

この家に養子として迎えられた私は義妹に召使いのように扱われている、母も父も、義妹が実の娘だから、義妹の好きにさせている。

「ん………ねぇ、こっち来てお姉様」

「………どう、されましたか?」

私に用意させた朝食を一口食べ、私を近くへと呼ぶ、嫌な予感がしたが、逆らうわけにもいかず、コブリーの近くへと移動する。

「ーーーー不味い」

「ーーーーーー熱ッッッッッッッ??!」

近くにきた私の頭に料理をぶちまけるコブリー、出来立てだったスクランブルエッグは熱く、脊髄反射で仰け反り、思わず腰が抜けてしまう、慌てて頭から料理を退かす私。

「誰が座って良いって言ったのよッッッッ!!!」

「ゴフッッッッ??!!!」

床へと尻餅をついてる私の腹に追撃の蹴りを入れるコブリー、私は思わず床へ這いつくばる。

「アンタッッッッのせいでッッッッッッ朝食抜きッッッッッッじゃないッッッッどうしてくれるのッッッッッッ!!!」

「ーーー痛ッッッッすみッッッッませッッッッんッッッッごめッッッッんッッッッなさいッッッッ」

「謝ってッッッッ許されるッッッッと思ってるのッッッッ」

それで気が済まなかったのか、罵倒の所々で床に転がる私の腹に蹴りを入れる、何度も何度も……堪らず途切れ途切れの謝罪をするが、それで許されることはない、むしろ蹴りのテンポがどんどん上がっていく。

「その辺にしておきなさいコブリー、薄汚い血で床が汚れてしまうでしょ」

「お母さんの言う通りだ、それにそんな出来損ないにいつまでも構っていたら遅刻してしまうぞ?」

「ハァー~ハァーー、それもそうね、わかったわお父様、お母様………二人に免じてここまでにしといてあげる」

「ーーーーガハッッッ」

腹以外にも蹴りを入れ始める義妹、小さい傷が私の体に出来始め、血反吐と共に血が体から流れ始めた時、母が止めてくれる、別に私が可哀想とかそういう事ではなく、床が汚れるからという理由だ、父も母とほとんど変わらない意見のようだ。

「………許してもらったらなんて言うだっけ?」

「痛ッッッッッッーーー………あ、ありがとう、ご、ございます」

「よく言えましたッッッッ!!!」

「~ーーーーッッッッ」

ゲホゲホと咳き込む私の髪を引っ張り、持ち上げ、感謝を促すコブリー、私はここ最近では言い慣れた感謝の言葉を彼女に伝える、私の言葉を聞いた後、コブリーは髪の毛から手を離す、ホッとしたのも束の間、私の後頭部を踏み潰す彼女、私は床に顔を押し付けられる。

「ちゃんと掃除しろよ」

「ぞ、雑巾……」

「おい、何言ってる」

「だ、だって雑巾がないと掃除できない……」

、勿体無い」

「………え……?」

「それは良い考えだわ貴方、もしかしたらコブリーの魔力をあやかれるかもしれないし」

「………わかり、ました………」

コブリーが一足先に学院に行くと、父に床にぶちまけられた料理を片付けろと言われ、掃除するために雑巾を探すが、父に止められる、反論するも、勿体無いから食えと言われ、一瞬思考が停止する私、母も良いアイデアだと賛同する、ある国の諺に憧れる人物の爪の垢を善じて茶を飲めというが、このほぼ生ゴミとかした料理でやるのは珍しいだろう、拒否権は私には無く、二人の言う通りゴミまみれのスクランブルエッグを手で拾い口の中に入れる。

「~ーーッッッッ」

想像以上の不味さ、不味いとかそういう次元ではない、髪の毛や埃は当たり前、ふわふわの卵の食感にゴミのジャリジャリとした感触、口の中に広がる不協和音、思わずえづきそうになる、私の体が本能的に拒絶する、胃液が逆流し、異物を追い出そうとするが、ここで吐いたところでその吐いた物を食わせられることは分かりきっている、そうなるとさらに完食は難しくなる、胃液のツンとした匂いを感じながらも、あまり噛まずに気合いで胃袋へと捩じ込む私。

「ゴホッッ~ーゴホッッッッッ」

「終わったなら早く行きなさい、ただでさえ出来が悪いんだからせめて遅刻しないで心証は良くしておきなさいよ」

「は………い、行ってきます」

食い終わった後、母に早く学校に行けと催促される、私は慌てて家を出る………家を出ても未だ口の中に残っている不快感は徐々に惨めさへと変換されていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「~ーーーがぼボボボボボボぼ」

「ほーらぁ、思う存分口を洗いなさいよ」

家だろうが学校だろうが大差はない、私と妹は同じ年に生まれているので、同じクラスに配属されている、この絶好の狩場でコブリーが何もしないわけがなく、思う存分虐めてくる。

ゴミまみれの朝食を食ったせいで未だに残る不快感、お手洗いで口を濯いでいたら、コブリーに遭遇、そのまま私を個室トイレに引っ張り、便器の中に顔を突っ込ませる。

「プハッッッッ~ー痛ッッッッッ」

「サーペント家の次期当主たる私を差し置いて、貰われ物のペットがフェイト様と婚約?、調子乗ってんじゃないわよ」

「そ、そんな事……」

「誰が喋って良いって言った??!!」

「~ーーッッッッッッ……すみません………」

私の頭を水から引っ張り上げ、壁へと叩きつける、彼女は怨嗟の籠った声で囁く、私は咄嗟に反論するが、気に入らないコブリーに怒鳴られ遮られる、私は押し黙った後、謝罪した。

「ふん」

「~ーーッッッッッ」

コブリーは私を床に放り捨て、その場を立ち去る。


「………」

立ち上がり、ビショビショになった自分を鏡で眺める私。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一日一日、その日毎に行なわれる虐待、その詳細は事細やかに書かれている…………どうやら俺と会う日は回復魔法をかけて傷を治癒させてバレないようにしていたらしい。

「……間抜けか俺は………」

餓鬼の俺は全く気づかなかった………何不自由ない生活を送っていた俺は全く疑問に思わなかった………家族がこんな悪意を持って接してくるなんて夢にも思わなかった……。

「何が騎士道だ、何が民のためだ、一番大切な人すら守れてないじゃないか……」

自分の愚かさに頭と膝を抱えてる。

愛する人すら守れない自分の不甲斐なさに涙がとどめなく溢れてくる。

「ーーー!!、愛するフェイトへ……」

………放心しながらも、涙でページを汚しながらも、読み進めていると、最後のページに俺の名前が書かれていた。

「………約束守れなくてごめん……」

涙で視界がぼやけながらも読み上げる俺…………そのページを破り、感情の赴くままに胸に押し付けながら嗚咽を漏らす俺。

「ああ神様………時の女神様………誰でも良い、時を戻してくれ………」

あまりの絶望に妄言を溢してしまう………その瞬間、俺の意識は途絶えた。






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