2 / 6
2、王族は金銭感覚がバグっている
しおりを挟む「ーんんぅ?」
「お、起きたかリフィル」
「…………ハルバート?………全く懲りないね君も、こんな朝っぱらから…………」
目を覚ますと、稀代の物好き、ハルバート・ペンドラゴンがいた…………朝一でくるとは今日はいつもに増して気合が入っている気がする………。
「………あれ?」
「どうしたんだい?」
「…………なんか地面が動いてない?」
「まだ寝ぼけているのかい?、地面が動くわけないだろう、動いてるのは汽車さ」
「……………」
まだ寝ぼけているのか、まるで地面が動いているように周りの景色が高速で流れていくと感じた私はハルバートへ質問する、至極当然とばかりに答える彼………彼の返答を客観的かつ冷静に分析すると……………。
「………おいこれ誘拐じゃないのか??!!、王族がこんなことやって良いと思ってんの??!!」
「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ、俺はただ、住民達が処理に困っているゴミ山を何かに使い道はないかと、あそこ一帯の土地の所有権を買い取り、家に持ち帰っているだけだぞ?」
「…………はい?」
これまた冷静に周りを見ると………足元に魔法具の残骸、鉄屑が足元に落ちている………よくよく見てみると、私の寝床にしていたほとんどが屑鉄で構成されていたゴミ山が車両に丸々乗っかっていた………。
「まぁ、偶然、ゴミ山を寝床にしていた者を連れてきてしまったかもしれないけどね」
「な、ななななな」
「おや、どうかしたかい?」
「き、汚いぞ!!、私の住処を勝手に持ってきやがって!!!!!」
「おやおや、これは異な事を………元々このゴミ山は君の物でもなんでもない、一部のゴミの処理を勝手にやってくれたり、村人からの依頼を無償で引き受けたり、土地の所有者や村の人たちにも利があったから黙認されていただけだ、ちゃんと正規の手続きを踏んで俺のものにした、勝手に住み着いてなし崩し的に自分の住処にしていた君のやり方の方が世間一般的に汚いというんじゃないかな?」
「ぐ、ぬぬぬぬ」
だ、駄目だ、あっちが正規の手順を踏んでいる以上、私に反論の余地はない………………だからって私なんかを口説くためにゴミ山を丸々持ってくるか?。
「そう簡単に論破されてしまう所も可愛いんだけどね」
「ーー気安く触んなッッッとっちゃん坊やがッッッ!!!」
「おっと………ふふ、竜人とはいえ騎士たる俺を力づくで引き剥がすとは……惚れ直したよリフィル」
「惚れ直すな、貴族の男が嫌いだって言ってんだろ」
「俺は王族だが?」
「だ・か・ら!!!、王族も貴族もーーーーッッッッッッ??!!!」
話している途中、私を抱きしめるハルバート、背筋に悪寒が走った私はハルバートを力付くで引き剥がすと、私の力に目を丸くするハルバート、いつもと変わらず口説き落としにくる、口論の最中、凄まじい殺気を感じ、血と魔力を練り合わせ、血でできた剣を作り、死角から頸動脈を狙ってくる剣を受け止める。
「…………誰よアンタ………」
「……………あまり調子に乗るなよ小娘」
「剣をしまえセバス」
小さい火花を散らしながら鍔迫り合う私達、鬼気迫る勢いの執事服を着た犬の獣人、ハルバートの声に犬耳をピクンと一瞬反応させた後、渋々ながらも剣を下ろす…………。
「セバス、いきなり何をする、我がパートナーとなる女性に………」
「大変申し訳ありませんハルバート様………しかし、彼女はハルバート様のパートナーとなるには少しお転婆が過ぎるかと………」
「セバス、俺に命の危険や身の危険が無いうちは彼女を攻撃する事は許さん」
「ーーなッッッッッ、そ、それは………」
「…………俺に逆らうというならそれでも構わん、どうする?」
「わ、わかりました……ハルバート様」
渋々ながらもセバスとやらはハルバートの後ろに控える。
「すまなかったな、俺の護衛が迷惑をかけた」
「………まぁ、こっちも王子様にちょっとやりすぎたし……お互い様ってことで…………」
………仕えている身からすれば、私の態度は目に余ったのだろう、以後気をつけるとしよう。
「さすが我がパートナー、懐が深い」
「誰が誰のパートナーだって?」
「おや?、違うというのかな?」
「違うって言ってんでしょうが、なんで貴族の男なんかとーー」
「死ぬまでこのゴミ山で暮らすんじゃなかったのかい?」
「ーーーーッッッッ??、あ、いや、それは」
「このゴミ山はもう既に俺のものだ、つまり死ぬまで俺と一緒にいるということ、これはもうパートナーと言っても差し支えないだろう?」
「ぐ、ぬぬぬぬ」
「………何か反論はあるかい?」
「ふ、ふんだ!!、だったらそんなゴミ山くれてやる!!、もっと良い住処を見つけて………」
…………住処を移すと言っても、話はそう簡単ではない、住みやすい場所を見つけるのはかなり大変、そして見つけた先をまたハルバートに買い取られでもしたらイタチごっこになりかねない………そして、このゴミ山には………。
「そ、そ、そんな、ルーを見捨てないでよフィー姉」
「あーー、そういえばルーガスもいたね………」
「おお??、他にも住民がいたのか??!!」
ゴミ山の中から5、6歳の人狼が私に飛びついてくる…………旅の途中、獅子の獣人の亜種、鉄獅子の獣人ルーガスに懐かれた………彼もまた、鉱石系の魔物に襲われ、体が変異してしまったようだ、もちろん人狼族の中では変異種なので差別された、ついには里から追い出されたらしい、なんとなく自分を重ねてしまい、捨ておけず、一緒に住んでいた………まだ子供のルーガスの体力を考えるとまたあちこち放浪するのは現実的ではない……………。
「ルーは、ルーはずっとフィー姉と一緒にいたいぃぃぃぃぃ~~~」
「ご、ごごごごごめんごめん、ルーガスを置いて行くなんてそんなわけないじゃん」
「ほ、ほんと?」
「ほんとほんと」
「やった~」
自分が置いていかれると思ったルーガスはわんわんその場で泣き出す、慌てた私はすぐに宥める、置いていかれないとわかると今度は満面の笑みを浮かべながら小躍りを始めるルーガス。
「コブ付きか………まぁそんな小さな事、俺は気にせん」
「違うっちゅうに」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

出て行けと言われても
もふっとしたクリームパン
恋愛
よくあるざまぁ話です。設定はゆるゆるで、何番煎じといった感じです。*主人公は女性。書きたいとこだけ書きましたので、軽くざまぁな話を読みたい方向け、だとおもいます。*前編と後編+登場人物紹介で完結。*カクヨム様でも公開しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

【完結保証】嘘で繋がった婚約なら、今すぐ解消いたしましょう
ネコ
恋愛
小侯爵家の娘リュディアーヌは、昔から体が弱い。しかし婚約者の侯爵テオドールは「君を守る」と誓ってくれた……と信じていた。ところが、実際は健康体の女性との縁談が来るまでの“仮婚約”だったと知り、リュディアーヌは意を決して自ら婚約破棄を申し出る。その後、リュディアーヌの病弱は実は特異な魔力によるものと判明。身体を克服する術を見つけ、自由に動けるようになると、彼女の周りには真の味方が増えていく。偽りの縁に縛られる理由など、もうどこにもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる