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38、コトハとセバスチャン1
しおりを挟む「礼を言う」
「え?、何の事ですか?」
どんな事件が起きても、時間が経てば日常に埋もれていき、記憶の片隅へと押し込まれていく、事実、オルクの襲撃事件は国中の騒ぎになったが、一日、一週間、時間が経つにつれ、人々がその事について触れる事は減っていき、徐々に無駄口を叩かず、仕事をする住民達、私もいつも通り、ハルバート様の護衛をしていると、護衛の先輩であるセバスチャンさんに礼を言われる。
「オルクが襲撃の時、俺は役立たずだった……お前が……コトハがいなかったらハルバート様が危険に晒されていただろう……助かった……」
「………この前も言いましたけど、セバスチャンさんが耐えてくれたから、私は間に合ったんですよ、それに仕事の先輩助けるのは後輩として当然の事をしただけですから、そこまで気にしなくて良いですよ」
頭を垂れ、自分一人だけの力で守り切れなかった、そのピンチを先輩である自分が後輩である私に助けられるというその事実、不甲斐なさから私に何度目になるか分からない謝罪を繰り返すセバスチャンさん………流石の忠誠心というか、誇り高いというか……少し感心した後、私は思ったことを伝える、貴方は役立たずなんかではないと。
「そうか………なぁコトハ、今度から俺の事はセバスと呼んでくれないか?」
「え?………そんな馴れ馴れしく呼んで良いんですか?」
そんな私の言葉に胸のつかえが取れたのか、少しスッキリした顔をする彼、そしてなぜか愛称の呼び捨てとかいう、後輩からしたら畏れ多い事を頼んでくる。
「………あれだ、ハルバート様のお世話、戦闘中や連携する際、セバスチャンさんよりセバスのほうが短くて呼びやすく、よりスムーズに仕事をしやすくなるからな」
「ああ、なるほど………了解です」
それとなく理由を聞くと、割と納得できたので、私は了承する………確かに一瞬のロスが命取りになる時がないとも限らない、恐縮するのは逆にセバスチャンさんの、いやセバスの迷惑になってしまう。
「………宜しくな、コトハ」
「?………ああ、これからも宜しくお願いします、セバス」
私の名前を強調するように呼びながら握手を求める彼、少し疑問に思ったが、話の流れから察した私は今しがた決定した愛称を呼びながら、握手に応じる。
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