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33、sideセバスチャン、襲撃3

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「動くなッッッッ!!」

「ーーー!!」

「動かない方がいいぞ………動いた瞬間、お前の大事な大事な主人の首を刎ねる」

「す、すまない………セバスチャン……」

「ーーーーッッッッ」

「やはり貴様の相手をさせるの時期尚早だったか……」

(……しまった、人工獣人とやらが予想以上に強く、ハルバート様に対して意識が薄くなっていた隙を突かれた………)


人工獣人との戦闘に気を取られている間にハルバート様を人質に取るオルク様……いや、オルク。

「ククッッ、貴様ほどの剣士も、ガキ一匹人質に取られた程度で何もできなくなってしまうとはな……不思議なものだ」

「…………」

……まだだ、まだチャンスはある、オルクはそう簡単にハルバート様には手を出さない、いや……なぜならハルバート様が俺から身を守る唯一の盾だからだ………見た所、もう配下の人間もいない………同じ王族をどこかに誘拐する姿など見られるわけにはいかない故にそう簡単に移動することもできないはず………もたもた時間をかけてくれるなら、その分こちらの味方がこっちにきてくれる可能性も十分にある………よしんばここから逃げようとするならば、その瞬間に全てを賭ける………俺ならこの程度の距離一歩で懐に潜り込める………一瞬の気の緩みさえしてくれれば…………。

「おい、起きろ369号!!」

「グ……るぁ……」

「ーーー何?!、馬鹿なッッッッ、なぜ立ち上がれる?!!」

さっき倒した人工獣人改め、369号とやらはオルクの声で立ち上がる……さっきの感触は確実に体の最奥まで断ち切ったはず……獣人の治癒力なら死ぬことはないが、今すぐ立ち上がれるはずがない、それほどの重症を負わせたはず………。

「グルルル」

「ーー??!!、傷がどんどん治癒していく……だと?」

「クククク、俺が作り出した人工獣人の生命力を舐めてもらっては困る……たとえ全身の臓腑が斬り刻まれても数分で完治できる治癒能力………そいつ殺したいなら斬り刻むんじゃなく、四肢を引き裂いて、バラバラに八つ裂きにした後、首を跳ねないとなぁ??!!」

「ク、クソーーー」

「さぁ、やれ369!!、その男をグチャグチャにしてやれ!!、そいつは今動くことができない!!」

恐るべき治癒力発揮する369号、愉快そうに喋るオルク、獣人に対して命令を下す、無抵抗の俺を殺す命令を。

「グーーグルルル……」

「?」

「ーーチッッッ」

………少し様子のおかしい369号……舌打ちをするオルク。

「………ヤ……ダ………モウ……ダレモ………キずツケタク…………ナイ」

「まだ、人の心が残っているのか?」

……獣の唸り声は鳴りを潜め、カタコトではあるが理解できる言葉を話し、さっきまで焦点があっておらず、どこを見ているのか分からなかった369号の視線が俺へと注がれ、少し正気を取り戻している……気がする、


「……治癒のせいか、死の淵まで追い込まれ、死に抗うために極限まで引き出した治癒力のせいで、洗脳魔法で麻痺させていた感情や人格を司る脳の一部が覚醒してしまったようだな………」

「貴様ッ………人を何だと思っている……」

「ーーー俺のオモチャだ………369号、貴様に拒否権はないんだよ」

「ーー痛ッッッッ、ガアァッッッッ??!!」

「ーーー??!!」

…………オルクの話によるとどうやら369号は洗脳魔法の一種で脳を弄られているらしい………どうしたらそこまで非道になれるのか、怒りに震える自分の手……しかしそんな事関係ないと言わんばかりに再度命令をするオルク……どういう事か、またもや様子が変わる。

「………フフフ、なぁーにそんなに珍しいものでもあるまい………奴隷をしつける為の魔道具さ……につけているのは一般に出回ってるヤツより支配力やお仕置きの威力が段違いだがな」

「ーーーッッッッ、やめろ!!!、あの体にこれ以上を無茶をさせたら本当に死ぬぞ??!!」

「おいおい、さっきのを見てなかったのか?、そう簡単に死にはしないさ」

「ーーグラァッッッッ??!!」

……最初は気づかなかったが、人工獣人の首元に369という数字が書かれた首輪がついている、オルクの命令を拒否するたびにバリバリと音が鳴り、悶える獣人……。

「………グルルルル……」

「………」

………再び正気を失ったようだ……焦点の合わない眼で、片方ずつ俺のことを目視する…………。

「やれッッッッ!!」

「グラァッッッッッ!!!」

「ーーーゴフッッッッッ??!!!」

オルクの合図で俺の腹を殴る獣人、あまりの威力に吐血する俺。

「………いい子だ」

「グルルル」

「クッ……」

……まずい、どうすればいい…………。
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