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1、プロローグ

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「ーーーお父さん………お母さん……ぅぅぅ」

………私の名はコトハ・サンセット、数年前、養子としてサンセット家にある条件で引き取られた………身寄りの無い私を引き取ってくれた恩人、その人達の葬式に参加している…………。

「………ほら、アイシャ……そろそろお別れしなきゃ………」

「うん……」

義妹のアイシャは顔をぐちゃぐちゃになるまで泣いている、私だって同じ気持ちだった、泣き叫びたかった、だが、義理とはいえ姉の自分がそんな醜態を晒すわけにはいかない、そんな彼女の肩を支え、時間もおしてるため、親の遺体から優しく遠ざける。

私達が離れた事を契機にどんどん埋まっていく義父と義母。

「………」

「うっ……うっ……」

無言の私と嗚咽を漏らしながら歩く、コツコツという足音が夜の静寂に響き渡る、しばらくしたら家に着き、玄関の扉を開き中へ入る。

「………ほら、いつまでも泣いてーーー」

「ーーーやっと死んでくれたよあのババァ共」

「ーーーないで?」

いつまでも泣いている義妹のアイシャを励ますのは姉たる自分の役目だと思い、元気づけようと声をかけるととんでもない言葉を吐き捨てる彼女。

「………い、今なんて言ったの……アイシャ?」

「あん?、だからやっと死んでくれたって言ったのよ、手間かけさせやがって………」

自分の聞き間違いかと思い、無意識に疑問を投げかける、しかしさっきと同じ、いや、さっきより汚い言葉遣いで返答をするアイシャ。

「な、何を言ってるの?、悲しくないの?」

「悲しい?、嬉しいに決まってんじゃん、これでやっと私が家を継げるんだからさ……ほんと目の上のたんこぶだったわまじで」

「…………嘘……でしょ?」

………どうやらアイシャは悲しんでなどいなかった、さっきまでの涙は周りを欺く演技か嬉し泣きに近かったらしい、血が繋がってない私の方がよほど悲しんでいるとは、何という皮肉だろうか。

「これでサンセット家は全て私の物~♪」

「……………」

………目の前で嬉しそうに小躍りするアイシャ…………私はもう何も喋れなかった……喋る気にならなかった。

「あ、それとお姉ちゃんにビッグニュースがあるんだ~」

「………ニュース?」

「リビング来て~」

彼女の本性に唖然とする私、何かを言われたが、鸚鵡返しで呟くことしかできない、そんな私の手を引っ張って移動するアイシャ。

「じゃ~ん、特別ゲストのウィリアムで~す」

「ウィリアム……何でいるの?」

リビングには私の婚約者、ウィリアムがいた。

「……あ、もしかして私達を励ましに来てくれたの?」

「違うよ、お祝いしに来たんだ」

「お……お祝い?」

残った理性で何とか彼が一番来そうな理由に辿り着いた私の考えは否定される。

「アイシャがサンセット家のすべてを手に入れたという記念すべき日だからね、お祝いしなきゃ」

「……………」

嬉しそうに、さも祝い事のように笑顔で祝福するウィリアム………私がおかしいのだろうか、貴族の息子や娘は親が死んだら喜ぶものなのだろうか、黙りこくるしかできない私。

「それとね、けじめはつけておこうと思ってさ…コトハ、君との婚約は破棄させてもらう……」

「………え?……何を言ってるの?」

「だってアイシャの方が優秀だからね……学院の成績でもトップクラス、しかも今やサンセット家の当主……魔力無しで能無しの君とは雲泥の差だ………」

「ごめんね~彼が私に言い寄ってくるから~つい~」

「………」

追い討ちをかけるが如く、身勝手な婚約破棄を突きつけてくるウィリアム、私の頭は真っ白に染まった………全く悪びれる気がない様子のアイシャが喋っている、確かに私は魔力無し、妹は通っている学校の入学試験に書類審査の時点で落とされた……魔力が全く無い……魔力がないというのはこの国では無能と同然、しかしまさか婚約者にそう思われてるとは思わなかった。

「それでさ~この家出ていってくれない?、血も繋がってないアンタの事をわざわざ家に置いとく義理もないしさ~」

「…………わかった………」

畳み掛けてくるアイシャ、もう限界だった、彼女達と離れられるなら何でも良かった、返事をした後すぐさま部屋を出る私。

「………アイシャ………義理とはいえ姉妹、良い事を教えてあげるよ………」

「何~?」

「実は貴方の両親に依頼されて貴方の剣術や魔術を全て私の式神でサポートしてただけだから………恥かく前にに学院やめた方がいいよ」

「はぁ~?負け犬がなんか言ってる~」

……そう、私は彼女の両親に依頼されていたのだ、彼女の成績が芳しく無く、学院で他の生徒に苛められていた……苦肉の策で陰陽師の私に頼んだのだ、彼女の影ながらサポートして欲しいと……実は私は東の国、ジパング出身なんだが、京都を突如襲ってきた金毛九尾という妖怪と戦い、なんとか封印に成功したが、化け狐の最後の抵抗で私は遠くへ転移された、気がつけばこの国にいた、陰陽術の中には転移系の術もあるのだが、私は九尾にジパング周辺には転移できないよう呪いをかけられてしまった、そのせいで私はジパングに戻る術を封じられてしまっていた…………魔力が大正義のこの国では魔力が低いと生きていけない、どんな仕事にもありつけない、途方に暮れた私は偶然、盗賊に襲われいた義父母達を陰陽術で助け、その時の私の力を見込まれ、頼まれた……こちらとしても衣食住全て提供してくれるというので飛びついたわけだ。

どうして魔力無しと揶揄られる私が陰陽術が使えるのかというと必要なのは魔力ではなく気、陽と陰の気を上手く練り合わせ発動させる………どうやら魔力と気は似て非なるものらしい………しかしそれは幸いだったかもしれない、なぜなら学院の授業や試験は不正行為防止のため、他者が魔力で生徒に干渉するとバレてしまうが……私の陰陽術や式神達は魔力を一切使ってないので大丈夫だった……元々、義父母達も私が全く魔力を使わず魔法のような事をしているから私に頼んだようだった。

義父母達が死んでも、義妹のサポートは続けるつもりだったが………義妹がここまでの屑なら話は別だ………アイシャに憑依させていた式神を全て解除、言われた通り家から出ていってやる。
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