1 / 46
1、プロローグ
しおりを挟む「ーーーお父さん………お母さん……ぅぅぅ」
………私の名はコトハ・サンセット、数年前、養子としてサンセット家にある条件で引き取られた………身寄りの無い私を引き取ってくれた恩人、その人達の葬式に参加している…………。
「………ほら、アイシャ……そろそろお別れしなきゃ………」
「うん……」
義妹のアイシャは顔をぐちゃぐちゃになるまで泣いている、私だって同じ気持ちだった、泣き叫びたかった、だが、義理とはいえ姉の自分がそんな醜態を晒すわけにはいかない、そんな彼女の肩を支え、時間もおしてるため、親の遺体から優しく遠ざける。
私達が離れた事を契機にどんどん埋まっていく義父と義母。
「………」
「うっ……うっ……」
無言の私と嗚咽を漏らしながら歩く、コツコツという足音が夜の静寂に響き渡る、しばらくしたら家に着き、玄関の扉を開き中へ入る。
「………ほら、いつまでも泣いてーーー」
「ーーーやっと死んでくれたよあのババァ共」
「ーーーないで?」
いつまでも泣いている義妹のアイシャを励ますのは姉たる自分の役目だと思い、元気づけようと声をかけるととんでもない言葉を吐き捨てる彼女。
「………い、今なんて言ったの……アイシャ?」
「あん?、だからやっと死んでくれたって言ったのよ、手間かけさせやがって………」
自分の聞き間違いかと思い、無意識に疑問を投げかける、しかしさっきと同じ、いや、さっきより汚い言葉遣いで返答をするアイシャ。
「な、何を言ってるの?、悲しくないの?」
「悲しい?、嬉しいに決まってんじゃん、これでやっと私が家を継げるんだからさ……ほんと目の上のたんこぶだったわまじで」
「…………嘘……でしょ?」
………どうやらアイシャは悲しんでなどいなかった、さっきまでの涙は周りを欺く演技か嬉し泣きに近かったらしい、血が繋がってない私の方がよほど悲しんでいるとは、何という皮肉だろうか。
「これでサンセット家は全て私の物~♪」
「……………」
………目の前で嬉しそうに小躍りするアイシャ…………私はもう何も喋れなかった……喋る気にならなかった。
「あ、それとお姉ちゃんにビッグニュースがあるんだ~」
「………ニュース?」
「リビング来て~」
彼女の本性に唖然とする私、何かを言われたが、鸚鵡返しで呟くことしかできない、そんな私の手を引っ張って移動するアイシャ。
「じゃ~ん、特別ゲストのウィリアムで~す」
「ウィリアム……何でいるの?」
リビングには私の婚約者、ウィリアムがいた。
「……あ、もしかして私達を励ましに来てくれたの?」
「違うよ、お祝いしに来たんだ」
「お……お祝い?」
残った理性で何とか彼が一番来そうな理由に辿り着いた私の考えは否定される。
「アイシャがサンセット家のすべてを手に入れたという記念すべき日だからね、お祝いしなきゃ」
「……………」
嬉しそうに、さも祝い事のように笑顔で祝福するウィリアム………私がおかしいのだろうか、貴族の息子や娘は親が死んだら喜ぶものなのだろうか、黙りこくるしかできない私。
「それとね、けじめはつけておこうと思ってさ…コトハ、君との婚約は破棄させてもらう……」
「………え?……何を言ってるの?」
「だってアイシャの方が優秀だからね……学院の成績でもトップクラス、しかも今やサンセット家の当主……魔力無しで能無しの君とは雲泥の差だ………」
「ごめんね~彼が私に言い寄ってくるから~つい~」
「………」
追い討ちをかけるが如く、身勝手な婚約破棄を突きつけてくるウィリアム、私の頭は真っ白に染まった………全く悪びれる気がない様子のアイシャが喋っている、確かに私は魔力無し、妹は通っている学校の入学試験に書類審査の時点で落とされた……魔力が全く無い……魔力がないというのはこの国では無能と同然、しかしまさか婚約者にそう思われてるとは思わなかった。
「それでさ~この家出ていってくれない?、血も繋がってないアンタの事をわざわざ家に置いとく義理もないしさ~」
「…………わかった………」
畳み掛けてくるアイシャ、もう限界だった、彼女達と離れられるなら何でも良かった、返事をした後すぐさま部屋を出る私。
「………アイシャ………義理とはいえ姉妹、良い事を教えてあげるよ………」
「何~?」
「実は貴方の両親に依頼されて貴方の剣術や魔術を全て私の式神でサポートしてただけだから………恥かく前にに学院やめた方がいいよ」
「はぁ~?負け犬がなんか言ってる~」
……そう、私は彼女の両親に依頼されていたのだ、彼女の成績が芳しく無く、学院で他の生徒に苛められていた……苦肉の策で陰陽師の私に頼んだのだ、彼女の影ながらサポートして欲しいと……実は私は東の国、ジパング出身なんだが、京都を突如襲ってきた金毛九尾という妖怪と戦い、なんとか封印に成功したが、化け狐の最後の抵抗で私は遠くへ転移された、気がつけばこの国にいた、陰陽術の中には転移系の術もあるのだが、私は九尾にジパング周辺には転移できないよう呪いをかけられてしまった、そのせいで私はジパングに戻る術を封じられてしまっていた…………魔力が大正義のこの国では魔力が低いと生きていけない、どんな仕事にもありつけない、途方に暮れた私は偶然、盗賊に襲われいた義父母達を陰陽術で助け、その時の私の力を見込まれ、頼まれた……こちらとしても衣食住全て提供してくれるというので飛びついたわけだ。
どうして魔力無しと揶揄られる私が陰陽術が使えるのかというと必要なのは魔力ではなく気、陽と陰の気を上手く練り合わせ発動させる………どうやら魔力と気は似て非なるものらしい………しかしそれは幸いだったかもしれない、なぜなら学院の授業や試験は不正行為防止のため、他者が魔力で生徒に干渉するとバレてしまうが……私の陰陽術や式神達は魔力を一切使ってないので大丈夫だった……元々、義父母達も私が全く魔力を使わず魔法のような事をしているから私に頼んだようだった。
義父母達が死んでも、義妹のサポートは続けるつもりだったが………義妹がここまでの屑なら話は別だ………アイシャに憑依させていた式神を全て解除、言われた通り家から出ていってやる。
0
お気に入りに追加
1,583
あなたにおすすめの小説
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜
まつおいおり
恋愛
毎日毎日、国のトラブル解決に追われるミレイ・ノーザン、水の魔法を失敗して道を浸水させてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して火事を消火してほしいとか、このガルシア国はほぼ全ての事柄に魔法や魔道具を使っている、そっちの方が効率的だからだ、しかしだからこそそういった魔力の揉め事が後を絶たない………彼女は八光聖女の一人、退魔の剣の振るい手、この剣はあらゆる魔力を吸収し、霧散させる、………なので義妹達にあらゆる国の魔力トラブル処理を任せられていた、ある日、彼女は八光聖女をクビにされ、さらに婚約者も取られ、トドメに国外追放………あてもなく彷徨う、ひょんなことからハルバートという男に助けられ、何でも屋『ブレーメンズ』に所属、舞い込む依頼、忙しくもやり甲斐のある日々………一方、義妹達はガルシア国の魔力トラブルを処理が上手く出来ず、今更私を連れ戻そうとするが、はいそうですかと聞くわけがない。
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
こういうの「ざまぁ」って言うんですよね? ~婚約破棄されたら美人になりました~
茅野ガク
恋愛
家のために宝石商の息子と婚約をした伯爵令嬢シスカ。彼女は婚約者の長年の暴言で自分に自信が持てなくなっていた。
更には婚約者の裏切りにより、大勢の前で婚約破棄を告げられてしまう。
シスカが屈辱に耐えていると、宮廷医師ウィルドがその場からシスカを救ってくれた。
初対面のはずの彼はシスカにある提案をして――
人に素顔を見せることが怖くなっていたシスカが、ウィルドと共に自信と笑顔を取り戻していくお話です。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる