醜い化け物になんの御用ですか?

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3、王宮

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「さぁようこそ我が王宮へ」

「………なんで金持ちって何でもかんでも無駄にデカくするのかねぇ…………」

………成り行きで王宮に連行される私達、ハルバートのプライベートスペースにゴミ山ごと流し込まれる。

「さて……と、遅めのティータイムでも楽しむとしますか」

「ーー!!」

「………フィー姉、僕もお菓子食べたい」

「我慢しなさい、鉄屑を食べれば私達は生きられるでしょう」

「……でも……」

「そ、そんな目で見られても無い袖は振れないの」

「……………ごめん」

「あ、いや、別に怒っているわけじゃーーー」

私達の目の前で高級そうなお菓子をダージリンティーで飲み干していく………鉄竜人の私や鋼狼人のルーガスは鉄屑さえあれば別に死ぬ事は無い………しかし、最初からこういう体だったわけじゃなく、突然変異でいきなり出来た副作用ゆえの偏食だ、常人の時の食事が恋しく無いといえば嘘になる………今でも固く冷たい金属や鉱石の味はぶっちゃけ不味い………だが、金がない私達にはどうしようもない、我慢できるものがあるならそれで耐えるしかないのだ…………。

「………なんのつもりよ、貧乏人の目の前で見せびらかしながら食うなんて………流石に悪趣味がすぎるんじゃない?」

「おやおや、見せびらかすなんてそんなつもりは微塵も無いよ、君たちも食べたければ好きに食べれば良い」

「「ーー!!!」」

「じゃ、じゃあ」

「待ってルーガス!!」

「?、どうしたのフィー姉?」

あまりの趣味の悪さに悪態をつく私、ハルバートは飄々とした調子で、私達をお茶に誘ってくる、ルーガスはなんの疑いもなくお菓子や紅茶に手を伸ばそうとするが、私はそれを制する。

「………それ食わせて、パートナーの件を断りづらくするって魂胆か?」

「………おや、バレてしまったか………流石、元ヴァーミリオン家きっての神童、お腹が減ってても腹の探り合いが上手いな………けど、バレたところで関係ないさ」

「…………?」

狙いがバレたというのになおも余裕の態度を崩さないハルバートに首を捻る私………だが、すぐその疑問は氷解した。

「食べちゃダメなの?」

「ーーー!!、あ、いや、その….…」

「お兄ちゃんが食べて良いって言ってたのに?」

「………………」

「な?、関係ないだろ?」

「こ、このぉぉ………悪魔めぇぇぇ………」

………さっきまで目を輝かせて尻尾をブンブン振ってたのに、ダラーンと垂れ下がった尻尾とウルウルと上目遣いで見つめてくるルーガス…………この天使に辛い現実を躊躇いなく教えることができるなら、ソイツは鬼だと断言できるだろう………言葉を失っていると、悪魔の笑みを浮かべたハルバートに肩を叩かれる、私は苦し紛れに呟く……。

「美味しい♪」

「だろう?、好きに食べてくれ………おや?、リフィルは食べないのかい?」

「いらない」

「そうか………こんなに甘いのに…………」

………結局、普段食べられないお菓子を目の前にしているルーガスに食べちゃダメなんて言えるわけもなく………食わせてしまっている………せめてもの抵抗として私は食べない事にする、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーーーー夏休みまで」

「?」

お菓子でお腹が膨れ、ルーガスが私の膝で寝こけてしまった………狼特有の硬くも柔らかくもある毛が生えている狼耳を撫でながら、ハルバートに交渉を持ちかける。

「夏休みまでの仮契約、それでどう?」

「…………良いのか?、別に食べたら契約しろなんて約束はしてないだろ?」

契約には仮契約と本契約というものがある、一時的に組み、容易に契約を切れるのが仮契約、したら最後、一生切れない契約が本契約、その分、仮契約よりパートナーへの魔力の伝導率が高い………らしい、仮契約ならそこまで手間をかけず、契約を切れるので、借りを返したら後は適当に契約を解けばいい。

「…………どうせ、交渉材料にはする気なんでしょ?、それに恩を仇で返すようなことだけはしたくない、それをしたら………心まで醜い化け物になっちゃう気がする…………」

「本契約じゃないのが少し不満だが…………レディーにこれ以上譲歩させる訳にはいかないな、よし乗った!!」

「私は良いから、契約中、できればルーガスの衣食住も補償してほしい……」

「何を当たり前な事を、勿論、我がパートナーもエスコートさせて貰うよ」


下心ありでされた事だが、それでもルーガスの腹を満たしてくれたのは事実だ、その分はちゃんと返したい………とりあえず夏休みまでは付き合うことに決めた私。
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