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2、王族は金銭感覚がバグっている
しおりを挟む「ーんんぅ?」
「お、起きたかリフィル」
「…………ハルバート?………全く懲りないね君も、こんな朝っぱらから…………」
目を覚ますと、稀代の物好き、ハルバート・ペンドラゴンがいた…………朝一でくるとは今日はいつもに増して気合が入っている気がする………。
「………あれ?」
「どうしたんだい?」
「…………なんか地面が動いてない?」
「まだ寝ぼけているのかい?、地面が動くわけないだろう、動いてるのは汽車さ」
「……………」
まだ寝ぼけているのか、まるで地面が動いているように周りの景色が高速で流れていくと感じた私はハルバートへ質問する、至極当然とばかりに答える彼………彼の返答を客観的かつ冷静に分析すると……………。
「………おいこれ誘拐じゃないのか??!!、王族がこんなことやって良いと思ってんの??!!」
「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ、俺はただ、住民達が処理に困っているゴミ山を何かに使い道はないかと、あそこ一帯の土地の所有権を買い取り、家に持ち帰っているだけだぞ?」
「…………はい?」
これまた冷静に周りを見ると………昨日、朝食にしようと思っていた魔法具の残骸、鉄屑が足元に落ちていた………よくよく見てみると、私の寝床にしていたほとんどが屑鉄で構成されていたゴミ山が車両に丸々乗っかっていた………。
「まぁ、偶然、ゴミ山を寝床にしていた者を連れてきてしまったかもしれないけどね」
「な、ななななな」
「おや、どうかしたかい?」
「き、汚いぞ!!、私の住処を勝手に持ってきやがって!!!!!」
「おやおや、これは異な事を………元々このゴミ山は君の物でもなんでもない、一部のゴミの処理を勝手にやってくれたり、村人からの依頼を無償で引き受けたり、土地の所有者や村の人たちにも利があったから黙認されていただけだ、ちゃんと正規の手続きを踏んで俺のものにした、勝手に住み着いてなし崩し的に自分の住処にしていた君のやり方の方が世間一般的に汚いというんじゃないかな?」
「ぐ、ぬぬぬぬ」
だ、駄目だ、あっちが正規の手順を踏んでいる以上、私に反論の余地はない………………だからって私なんかを口説くためにゴミ山を丸々持ってくるか?。
「そう簡単に論破されてしまう所も可愛いんだけどね」
「ーー気安く触んなッッッとっちゃん坊やがッッッ!!!」
「おっと………ふふ、竜人とはいえ騎士たる俺を力づくで引き剥がすとは……惚れ直したよリフィル」
「惚れ直すな、貴族の男が嫌いだって言ってんだろ」
「俺は王族だが?」
「だ・か・ら!!!、王族も貴族もーーーーッッッッッッ??!!!」
話している途中、私を抱きしめるハルバート、背筋に悪寒が走った私はハルバートを力付くで引き剥がすと、私の力に目を丸くするハルバート、いつもと変わらず口説き落としにくる、口論の最中、凄まじい殺気を感じ、無意識のうちに体表面に鉄の鱗を生やし、頸動脈を狙ってくる剣を手の甲で受け止める。
「…………誰よアンタ………」
「……………あまり調子に乗るなよ小娘」
「剣をしまえセバス」
小さい火花を散らしながら鍔迫り合う私達、鬼気迫る勢いの執事服を着た犬の獣人、ハルバートの声に犬耳をピクンと一瞬反応させた後、渋々ながらも剣を下ろす…………。
「セバス、いきなり何をする、我がパートナーとなる女性に………」
「大変申し訳ありませんハルバート様………しかし、彼女はハルバート様のパートナーとなるには少しお転婆が過ぎるかと………」
「セバス、俺に命の危険や身の危険が無いうちは彼女を攻撃する事は許さん」
「ーーなッッッッッ、そ、それは………」
「…………俺に逆らうというならそれでも構わん、どうする?」
「わ、わかりました……ハルバート様」
渋々ながらもセバスとやらはハルバートの後ろに控える。
「すまなかったな、俺の護衛が迷惑をかけた」
「………まぁ、こっちも王子様にちょっとやりすぎたし……お互い様ってことで…………」
………仕えている身からすれば、私の態度は目に余ったのだろう、以後気をつけるとしよう。
「さすが我がパートナー、懐が深い」
「誰が誰のパートナーだって?」
「おや?、違うというのかな?」
「違うって言ってんでしょうが、なんで貴族の男なんかとーー」
「死ぬまでこのゴミ山で暮らすんじゃなかったのかい?」
「ーーーーッッッッ??、あ、いや、それは」
「このゴミ山はもう既に俺のものだ、つまり死ぬまで俺と一緒にいるということ、これはもうパートナーと言っても差し支えないだろう?」
「ぐ、ぬぬぬぬ」
「………何か反論はあるかい?」
「ふ、ふんだ!!、だったらそんなゴミ山くれてやる!!、もっと良い住処を見つけて………」
…………住処を移すと言っても、話はそう簡単ではない、住みやすい場所を見つけるのはかなり大変、そして見つけた先をまたハルバートに買い取られでもしたらイタチごっこになりかねない………そして、このゴミ山には………。
「そ、そ、そんな、ルーを見捨てないでよフィー姉」
「あーー、そういえばルーガスもいたね………」
「おお??、他にも住民がいたのか??!!」
ゴミ山の中から5、6歳の人狼が私に飛びついてくる…………旅の途中、人狼族の亜種、鋼狼族の少年ルーガスに懐かれた………彼もまた、岩石系の魔物に襲われ、体が変異してしまったようだ、もちろん人狼族の中では変異種なので差別された、ついには里から追い出されたらしい、なんとなく自分を重ねてしまい、捨ておけず、一緒に住んでいた………まだ子供のルーガスの体力を考えるとまたあちこち放浪するのは現実的ではない……………。
「ルーは、ルーはずっとフィー姉と一緒にいたいぃぃぃぃぃ~~~」
「ご、ごごごごごめんごめん、ルーガスを置いて行くなんてそんなわけないじゃん」
「ほ、ほんと?」
「ほんとほんと」
「やった~」
自分が置いていかれると思ったルーガスはわんわんその場で泣き出す、慌てた私はすぐに宥める、置いていかれないとわかると今度は満面の笑みを浮かべながら小躍りを始めるルーガス。
「コブ付きか………まぁそんな小さな事、俺は気にせん」
「違うっちゅうに」
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