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1、プロローグ
しおりを挟む「なんて醜い姿なの………」
「ヴァーミリオン家の恥部だわ………」
「いくらなんでもできるからと言ってあの見た目ではな」
「すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、 すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません」
「謝れば済む問題ではないのよ!!」
「アウッッッーーー!!!??」
……目を瞑ると数年前の記憶が鮮明に浮かび上がる、走馬灯の様に頭を巡るそれは、蔑称と嘲笑から始まる、実の母に謝罪を嵐のようにぶつけるが、許されない、許されるわけがない、顔を殴られる。
「ヴァーミリオン家始まって以来ッッッーー、一番の神童が聞いてッッッーーあきれッッーーるわッッッーー!!」
「ごめッッッーーなさッッッいーーすいまッッッせんッッッーーガハッッ」
「ふざけないでよッッッーーー醜いッッッーーばけッッッものッッッーー!!」
「ガハッッーーゴフッッーースッッみッッまッッガハッッーー」
言葉で責められ、罵倒の言葉尻の最後は言葉だけでは済まず顔を殴られる、何度も……何度も何度も何度も何度も何度も、私は謝罪することすらできず、謝罪は短い悲鳴へと変換される……
今まで死ぬ気で頑張ってきた、ダンスの稽古、礼儀作法、勉学、ありとあらゆることで一番を取れるよう頑張ってきた、確かに辛かったが、苦ではなかった、結果を出せば母様や父上が褒めてくれた、なんでも好きなもの買ってくれたり、何処へでも連れってくれた、血反吐を吐いて、手足が折れようが、出来るまで頑張りさえすれば私は幸せになれる、ずっとずっと、幸せになれる………とそう思っていた。
ある日、妹のマーガレットが魔物が出る森へと遊び半分で出かけた、案の定、魔物に襲われる、私はマーガレットの不在に気づき、何とか彼女を見つけ、魔物の攻撃を自分の体を盾に妹を守りながら家へと帰った……だが、そこからが地獄の始まりだった、と言うのも汽車や大砲のような機械部品に塗れた鋼竜の攻撃を食らったせいか、体から歯車や鉱石が生えてくる呪いにかかってしまった、その瞬間世界は一変した、全員手のひらを返すように罵倒、嘲笑、蔑称………助けた妹にすら、私が言いつけを破って森へ行ったと嘘をつかれ、私の最後の希望は婚約者のアルフレッドだけだ、彼だけは態度をかえなかった、会いたい、早く彼に会いたい。
「ハァッッーーハァッッーーーハァッーー、あんたの顔を見てるとむかつくわ!!!、とっとと消えなさい!!」
「ッッッーーガハッッーーー??!!!!」
母は私を殴っても少しも機嫌は治らず、むしろイライラが増しているような気さえしてくる、トドメとして床に這いつくばっている私の腹に蹴りを入れてそのまま二階の窓から叩き落とされる、瞬時に受け身をとるも衝撃を吸収できるわけもなく、短い悲鳴をあげて、その場に蹲る。
「……………うぅぅぅぅぅッッッーーーー」
体というのは正直なもので母という脅威から遠かったと思ったら、気が抜けて涙が流れ始める………嗚咽を漏らしながら泣き続ける私。
「何をそんなに悲しんでいるのかな」
「ア、ーーアルフレッド!!、来てくれたのね……あれ?、マーガレット……何で一緒にいるの?」
「僕の新しい婚約者さ」
「ーーーえッッッッ?」
「いつ見てもすっごく醜い化け物ね~」
「………え?、私……との……婚約……は?」
「そんなもの破棄に決まってるだろう」
「ダメです、アル様♡、こんな所でッッッ♡、化け物も見ておられます♡」
「見せつけてやればいいじゃないか、君は気持ちよくなることだけを考えていればいいんだよ……」
「…………そっか……ここが地獄か……」
アルフレッドとマーガレットの男女の愛し合いが目の前で始まる、ねっとりとした触れ合いを見せつけられ、私は真実にたどり着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「頼む!!、私のパートナーになってくれ!!!」
「………イ・ヤ・だ」
「なぜだ!!、代々、高名なドラゴンテイマーを輩出している我がジャガーノート家の私と契約すれば、こんなゴミ山に住む必要は無いんだぞ!!、竜種の中でも希少種中の希少種、変異中の変異種、この大陸の中でも最強の一角、ただでさえ頑丈な竜の鱗と鋼の合金と呼ぶべき鱗、攻防優秀な鋼竜種の力が加われば我がジャガーノート家はさらなる繁栄をーーー」
「ーーー私、貴族嫌いなんだよね、それに、レディーの住処を批判するなんて品性下劣としか言いようがないし」
「な、何だと??!!ぐぬぬ、もう良い」
「けーれけーれ」
………利用価値の無い私は家を追い出された……そして各地を放浪する中、何とか呪いを制御する事に成功し、半鋼竜人化した、見た目的には髪と目の色が黒になってしまい、少し鉱石のようなツノが生えている竜人、今は田舎の町外れにある、ほぼ鉄屑で構成れているゴミ山に棲んでいる………どうやら私の体は鉄や鋼を主食とすることができるらしく、私にとっては屑鉄が散乱するゴミ山は食料保存庫と何ら変わりない、街の人間としても処理するゴミが減るのと、偶に用心棒をしたり、盗賊なんかを撃退することから黙認されている。
…………と、順風満帆、悠々自適なニート生活を邪魔する存在がいた、それは私の話を聞きつけた、テイマー関連の奴らだ、特に貴族、何でも、契約した動物や獣人によって自分の価値が決まるビーストテイマー系の奴らにとって竜種はかなり貴重な存在らしい、竜種と契約できたら将来は約束されたモノらしい、さらに私の場合は鋼竜種という特殊な竜種の力をものにしいるため、喉から手が出るほど契約したいらしい、こういうしつこい勧誘に見舞われている、だがまぁあいつらはプライドが異様に高い、適当な対応をしてやれば怒ってすぐにどっか行ってしまう。
「ったく、もう二度と貴族の男なんか信用するかってんだよバーカ」
………貴族なんてのはお家繁栄とやらのために人を傷つける嘘を平気でつける鬼畜な奴ら………私は二度と貴族は信用しない。
「また男を泣かせたのか、流石全身凶器、『武器庫』のリフィル、触れるもの全てを傷つける罪な女だ」
「………ハルバート、私の事、反抗期の子供みたいに言うのやめてくれる?」
「まぁそんな事はどうでもいい、さぁリフィル、俺と契約してくれ、そんで一緒にグランフィリア学院の頂点を目指そう!!!」
「嫌だって言ってるでしょ、貴族の男は嫌いだって言ってんの」
「俺は王族だが?」
「似たよーなもんでしょうが、大体、王族なら私なんかに頼まずとも、相手はよりどりみどりでしょうに、何でわざわざ田舎のゴミ山に住み着いている醜い化け物なんかにーーーー」
………私の取りつく島がない態度に大抵の男は一、二回で諦めるが………グランフィリア学院の入学前の春休み、パートナーを探していた彼、成り行きで助けたこの男、ハルバート・ペンドラゴンは数週間ずっと粘着してくる、彼はペンドラゴン帝国の第四王子、王族だ………この国で竜種や竜人種がなぜ重宝されるのか、理由はこの帝国のトップが代々、竜や竜人種と契約し、力を発揮する竜騎士の一族だからというのも理由の一端だ。
「醜い?、何を言っている、お前以上に美しい竜人を俺は知らんぞ?」
「ーーーー??!!!\\\\\\\」
………これだ、この男はサラッと歯の浮くような口説き文句を平然と言ってくる………私は騙されない!!。
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「あーうるさいうるさい\\\\\、耳障りの良い言葉を囁くな、私は今の生活に満足しているんだ、何でわざわざ契約なんかしないといけないんだ、私は死ぬまでこのゴミ山で生きる」
「………わかった」
「漸くわかったか」
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「?、そうだよ、私は死ぬまでこのゴミ山で生きる、何度も同じ事言わせないでよ」
「そうか………わかった……………また明日」
「…………諦めないんだ………まぁいいや、アンタは無理強いはしないし、くる相手の中ではまだ会話になるから暇潰しに丁度良い」
…………この時のハルバートの言葉をちゃんと聞いておけば良かったと後悔するも、後の祭りだ。
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