私この戦いが終わったら結婚するんだ〜何年も命懸けで働いて仕送りし続けて遂に戦争が終わって帰ってきたら婚約者と妹が不倫をしてて婚約破棄された〜

ターナー

文字の大きさ
上 下
68 / 75
歌姫の国

68、観光旅行

しおりを挟む



「ここが歌姫の国、ガイストス国か、中々に栄えているな!!」

「あんまりはしゃがないでね」

「せっかくだから件の歌姫に会いたいぞ」

「国の重要人物にそう簡単には会えないと思うよ」

ルーガスの有給の話で自分の有給のことを思い出し、上司に確認してみるとやはり大量に残っていたようだった、それならばと、一気に使って観光旅行に来たわけだ、入国に成功した私とレクス、噂の歌姫に会いたいと騒ぐレクスを嗜めながら道を進む。

「いやいや、案外そこら辺の路地裏で暴漢に襲われてるかもしれんぞ」

「……そんなベタな………」

「おいあんたら少し静かにしていてくれないか?、ラジオが聞こえん」

「え?、まぁ静かにしろと言われれば静かにするが………ここは大通り、我らだけが騒いでるわけでもあるまいーーーし?」

そんなふうにしゃべりながら歩いていると通行人の一人に煩いとイチャモンをつけられる。

とりあえず声の音量を下げるが、下げたところで他の奴らも騒いでるとレクスが言おうとしたところ、その場にいる私達以外の人達、全員がラジオを手に、目と口を閉ざして立ち尽くしている。

「そんな面白いラジオ番組があるのかな?」

「「「「「「「♪♪♪~~~」」」」」」」

「お?…………いい歌だな」

「………そうだね、凄く綺麗な歌声、綺麗……けど………なんか……悲しくて儚い歌だね」

周囲の人間が持っているラジオから一斉に同じ曲が流れ始める、何重にもなって響く、四重奏カルテットどころではその音色は聞いていて心地良い…………まるで時間が止まったかのように立ち止まっていた住人達、何分か経ったら歌い終わり、皆何事もなかったように動き出す、まるでさっき見た光景が幻だったと錯覚してしまうほど事もなげに動いている。

「旅人さん達、さっきはすみません………なにぶん一日一番の楽しみで、一回しかないので………」

「いや、こっちこそ悪かった、あんな綺麗な歌なら感情的になるのもわかるぞ………今のがこの国の歌姫の歌なのか?」

「そうですよ!!、旅人さん達も聞いていたらこの国から出たくなくなっちゃうかもしれないですね~、それじゃあ私は仕事があるので」

「おう、頑張れ」

適当なところで通行人と別れる私達。

「あそこまで綺麗な歌声とは………歌姫に会いたい気持ちが強くなったな、イヴ、歌姫に面会できないかこの国お偉いさんに頼んでーー」

「ーーーあんまり駄々をこねると家に帰ってもらうよ?」

「ーーッッッッ、す、すまん、も、もう言わんから許してくれ」

「素直でよろしい」

歌姫に会うために国お偉いさんに面会を頼もうと提案するレクスに釘を刺す私、元々この旅行は一人で行くつもりだったのにレクスが駄々をこねたから一緒に連れてきたのだ、これ以上は我儘を聞いてられない。

「ん?、おいイヴ、今何か聞こえなかったか?」

「何も聞こえなかったけど?」

「………確かに聞こえた……あ、また……これは……悲鳴、こっちだ」

「あ、ちょっと待っーーー、全く落ち着きないな」

何かが聞こえたらしいレクスは弾かれたように飛び出す、私の静止の声は間に合わず、一人でどっか行かれても困るのでレクスを追って路地裏を進んでいく…………すると何回目かの曲がり角で何かが勢いよくつっこんんできて突き飛ばされるレクス。

「ッッーーー、な、なんだ?」

「ッッッーーー、あ、すいません……」

どうやら男の子とぶつかったみたいだ、相手は申し訳なさそうに謝罪してくる。

「貴様、ここで何をしていた」

「ーーーえ?、………えっと、その、あの………」

「…………どうした?………言えないようなことでもーーー」

「ちょっと、レクスいきなり失礼でしょ」

「しかしイヴ、悲鳴が聞こえた路地裏にいたんだ、怪しいーー」

レクスはぶつかった少年をを質問攻めにする、怯えた様子で困り果てる少年、何とか追いつき、レクスの肩を掴んで落ち着かせようとする私。

「ーーーーーどこにった!!!!、こっちか??!!??」

「ーーーッッッ」

レクスが私の手を振り払おうとした時、近くから複数人の男の怒声が響き渡る。

「誰かに追われてるの?」

「ッッッッッ!!!!ーー、い、いえそのあの……」

「………はぁ……とりあえずこの場を凌いでからじゃないと話もゆっくりできないな、君、私に捕まって」

「え?、な、何を急に……」

「ーーーああもう焦ったい!!」

「わっッッーーー」

とりあえず助けてから話を聞こうとすると、彼は少し後退りして逃げようとする、面倒になった私は彼を抱える、俗に言うお姫様抱っこだ………女が男にする場合はなんて言うのだろうか。

発疹皮膚武器展開イラプション、よし、しっかり捕まってなよ」

「は、はい」

『ーーー反動加速砲リコイルアクセル

そのまま私は背中から砲身を出し、魔力を放出して天高く飛び上がり、建物の屋上へと着地、レクスも軽々登ってくる、少し遅れてさっきまでいた場所に男達が現れる。

「くそ……どこだ、探せ!!、近くにいるはずだ!!!」

「まいたか………ーーうわッと、な、何、どうしたのレクス?」

「………その小僧だけずるいぞ」

「………後で相手してあげるから、今は離れて」

「?」

急場を凌ぎ、一息ついているといきなりレクスが抱き付いてくる、何事かと思ったら、どうやら抱き抱えたままの少年に嫉妬しただけのようだ、よくわかって無い少年は小首をかしげる。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

処理中です...