1 / 75
即ざまぁ編
1、プロローグ
しおりを挟む「ーー頼むイヴ!!やり直そう!!」
「お姉ちゃん!!!、お願い許してッッッ私たち血を分けた姉妹でしょッッッッッ!!!」
「もう遅いっての」
今更虫のいい言葉を並べる元婚約者と妹、もちろん即刻断る私、話は数日前に遡る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーー我が軍の勝利だ!!!!!」
自国の兵士達は喝采をあげる、それもそのはずだ、長きにわたる戦争に今しがた勝利を納めたのだ、嬉しくないはずがない。
かく言う私だって嬉しい、やっと故郷に帰れるのだ、元々、戦場になんか来たくなかった、私には婚約者だっている、誰が好き好んで戦場なんてくるか、だが、私たちは貴族な上、機械と人のハーフ、機人の血をひく一族、力ある者の務めとして代々、戦争が起きるたび、一族の若い者が駆り出されてきた、本当なら妹がいくはずだったが、泣いて嫌がっていたので、私が身代わりになった、だが、吹っ切れた私はプラス思考で考えた、命をかけて働いているので給料はバカ高い、その全てを婚約者や家族へと送っているのだ、未来の貯金や家族や婚約者が楽に生活できるのなら、無駄ではあるまいと、自分を慰めながらなんとかこの日まで働いてきた。
「特にイヴ・ペンドラゴン少佐、いや八つ裂き乱射魔の働き無くしてこの勝利はあり得ない!!!」
「いえ、この国の為に戦うのは兵士たる私の義務ですから」
この戦争で人一倍働いた私を持ち上げてくるお偉いさん、しかし、あまり調子に乗った発言をすると面倒な事になる為、無難な返答をしておく私………ちなみに八つ裂き乱射魔というのは敵兵が私につけた異名だ、身体中から大砲やあらゆる武器を飛ばして敵を八つ裂きの蜂の巣にすることから名付けられた、私的にはあまり気に入ってはいない、こんな物騒すぎる二つ名。
適当な所で解散、とりあえず全員自分の故郷へと帰っていく。
「やっと帰れる」
「おい、イヴ」
「何、グレン?」
「いや、なんつうか、ありがとな、お前には何回も助けてもらったからさ」
「じゃあ今度会ったら飯奢ってよ」
「へへ、お安い御用だ、にしても……お前が生き残るとは思わなかったぜ」
「なんで?」
「だってお前、この戦争が終わったら結婚するとか言ってるからよ、死亡フラグビンビンに立ちまくってんだろ」
「死亡フラグとか漫画の読みすぎだよ」
偶然、故郷への帰り道が同じ方向の同僚と適当に雑談しながら帰っていく私………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっと帰ってこれた」
やっと見えてきた我が家、あの人もいるだろうか、たった二、三年ぶりだというのにまるで数十年ぶりの帰還に感じる。
「ただいま~って誰もいないか」
心なしかボロボロに見える家の鍵で玄関のドアを開ける私………。
「ーーん?、誰かいるの?」
奥の方で何か音がした、気になって進む私。
「確かここから音がしたような」
リビングへと入るが、誰もいない……気のせいだったのだろうか?。
「ーーんん?何これ………?」
何かが私の頭に落ちてきた、手で触って確かめると何かの液体のようだ、水じゃない、少し粘度をもった液体、鳥の糞かと一瞬考えたが、ここは室内、鳥が飛んでいるはずがない。
「………うん?」
気になって上を見上げる私……………。
「ーーーーンッッ………気持ちよかったわアルフレッド……♡♡♡\\\」
「……僕の方こそ………」
見上げたそこには私の妹、イザベラ・ペンドラゴンと私と将来を誓い合った婚約者アルフレッドがいた、いや,より正確に言うならば、一階を見渡せる吹き抜けの二階フロアの手すりに掴まって男女の営みをしていた、丁度私の真上に当たる位置で、つまりさっき私の頭に落ちてきたものは、イザベラとアルフレッドの……。
「何してんのアンタら」
「ーーーえ??!!」
「あーーーー、い、いやこれは違うんだイヴ!!!!」
頭が結論に辿り着く直前に私は冷たく囁く………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………………」
「ち、違うんだイヴ!!、いつもこんなことしてる訳じゃない!!、今日が初めてなんだ!!」
「そ、そうよお姉ちゃん!!!」
「…………」
「ぼ、僕はいつでも君を愛している!!」
「…………」
「きょ、今日だって君が帰ってくるのを今か今かと待ってーーーーー」
「………三回目………」
「「……へ?」」
取り敢えず、汗臭いから風呂へ入らせた、二、三年ぶりに帰ってきたのにこいつらの方が風呂入るの先とか、まぁいい、取り敢えずリビングで座って待つ私、程なくして二人が怯えた様子で私の前に座る、自分の顔は見えないが、恐ろしく冷たく、冷徹な顔をしていたのだろう、ただ黙って座っているだけなのに二人はなんとか機嫌を治せないかと色々話してくる、だが私は返答するでもキレるでもなく、ただ一言呟いた。
「いや、妹を含めたら四回か」
「な、なんの話をしているんだい?」
「四回目?」
「………貴方達二人が私に嘘をついた回数だよ」
「「ーーーな、何を証拠にッッッッッ!!!!」」
「………獣人ってさ、嘘を見抜けるって知ってる?………優れた五感で相手の発汗、視線、心拍数、脈、etc………人から溢れている情報を拾って相手が緊張してるかどうかを判断するの………戦場で助けてあげたお礼に教わったんだ…………全く同じものにはならなかったけどね………で、アンタらは今の会話の中で本音は一切喋ってない………」
「「ーーーーッッッ??!!!」」
「…………ショックだよ………なんとか命繋いで帰ってきたら、嘘しか言わない妹と婚約者………ああ、もしかして私が気づかなかっただけで昔からずっと嘘ついてたの?」
呟いたことが二人にとっては意味不明だった、私はなんの数字か答えてやる、お前らが今、私に嘘をついた回数だと、脊髄反射で否定する二人をちゃんと理由づけて否定してやる私、意外と涙は出なかった、ただただ、落胆の声が自分から出てきた。
「猫被っても意味ないってことか」
「ーーああもう、ウザッッッ」
「それが貴方達の本音か」
もう誤魔化せないと判断した二人は汚い本音をブチまける。
「イヴ、君との婚約は破棄させてもらう、だってイザベラの方が可愛いし、ペンドラゴン家の次期当主になるからね」
「残念だったね……お姉ちゃん~」
「わかった、じゃあね」
ここぞとばかりに婚約破棄してくるアルフレッド、そしてあろう事か私の目の前でディープキスを見せつけてくる、妹も煽ってくる、脈や発汗を観察している限り、嘘をついている様子はない、私は一瞬、二人の頭を握りつぶしたい衝動に駆られたが、残っていた一欠片の理性でなんとか抑え込む、旅支度は帰ってきたばかりなので終わっている、家の中を適当に見て回ったが、私の物はほとんど捨てられていた、残っている物を適当にバックに突っこむ、リビングから不愉快な男女の営みが聞こえてくる、その音を無視して私は家の外へ出る。
0
お気に入りに追加
2,369
あなたにおすすめの小説
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
【完結】望んだのは、私ではなくあなたです
灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。
それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。
その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。
この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。
フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。
それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが……
ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる