上 下
14 / 27

14、とある騎士の過去

しおりを挟む

「ウッッッッ、ウッッッッ」

「泣き虫だなぁ………男の子でしょ、もっとシャンとしなよ」

「だって……ヒック………俺のせいで…ヒック…お姉ちゃんの腕が……」

「なぁに、私たちは貴方達を守るために旅をしているんだ、これくらい安いもんさ」

………他の勇者パーティーの面々は魔王軍幹部を倒すことの方が大事なのか、逃げ遅れた俺には見向きにもしなかった………だけど、この人だけは自分の片腕と引き換えにしてでも、俺を守ってくれた………腕を失っても、泣きじゃくる俺に笑いかけてくれる彼女。

どんなに深い闇の底、人々の悲鳴が響き渡る、この地獄の中でも貴女は誰かの希望となる、鋼の誓いに鉄の心、削られて抉られて叩き潰されても守るべきもののために立ち上がり、立ち塞がり、守り抜く、愚鈍で愚直で愚劣の正真正銘の愚者、戦場で愛の旗印を掲げる滑稽な道化師………ーーーーだが、それこそが騎士の本懐、いやは彼女は騎士ではなく機竜、弱きを守る鋼鉄の機竜………。

ーーーーーーーーーー

「リフィルお姉ちゃん、もう行っちゃうの?」

「見送りに来てくれたんだ………うん、じゃあね」

失った腕の代わりに魔鉄義手を手に入れた彼女はリハビリを驚くほど短期間で終わらせた、いつまでもこの町にいるわけにもいかず、程なくして彼女がこの街を出る、今日は彼女の出発日だ。

「ごめん……俺のせいで………」

義手が目に入った瞬間、申し訳ない気持ちから謝罪をしてしまう。

「……だからそんな気にしないでよ………寧ろ、こっちの腕の方が逞しくて強そうじゃない?」

「…………」

彼女は俺を気遣って気にしてないように振る舞う………そんなわけがない、誰だって自分の腕を失うのは嫌に決まってる……。

「………リフィル、俺、騎士になる………少しでもリフィルの負担が減るように、人を、街を、国を、みんなを守る騎士になる!!」

「ーーー!!………そっか、頑張って」

俺の目標を聞いて、微笑ましいものを見るような目で、優しい笑みを浮かべる彼女。

「そ、それでさ……その、俺が立派な騎士になったら…俺、お前の………リフィルだけの騎士になりたい!!\\\\」

「へ?……ふふ、まぁ、そうだね………魔王を倒して、私が勇者パーティーじゃなくなったら、その時は考えなくもないかな」

「ほ、ほんとか??!!!、」

「ほんとほんと……でも、ちゃんと立派な騎士になってないとダメだからね」

「わかった!!」

俺はその日から立派な騎士を目指す。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】あなたと結ぶ半年間の契約結婚〜私の最後のお願いを叶えてくれますか

冬馬亮
恋愛
不治の病にかかり、医師から余命二年と宣告された伯爵令嬢シャルロッテ。 暫し鬱々と悩んだシャルロッテだが、残る時間を目一杯楽しもうと気持ちを切り替える。 そして、死ぬと決まっているならば、初恋の人オスカーに気持ちを打ち明けようと思い至る。 シャルロッテの家族がそれを全面的に後押しし、いつの間にかシャルロッテとオスカーは、半年という期間限定の結婚をする事に。 これでもう思い残すことはない。 うきうき(?)と、結婚式の準備を進めていたシャルロッテだったがーーー 結婚式当日、式を無事に終えたシャルロッテの前に、ずっと行方が分からなかった次兄イグナートが現れた。 「シャル! 病の特効薬を見つけたよ!」

昨日見た夢の話をしようか〜たまに予知夢が見られる令嬢ですけど、私は聖女ではありませんよ?〜

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
昨日見た夢の話をしようか〜たまに予知夢が見られる令嬢ですけど、私は聖女ではありませんよ?〜  私、アデル・ラーバントは、たまに予知夢を見ることがある。  それを友人と話していたところを、うっかりこの国の王子かつ、生徒会長に聞かれてしまった!  私の見ていた夢は、生徒会長の兄である、王太子をはじめとする、国の将来を担う、要人の子息たちが、1人の女生徒に籠絡されるというものだ。  それをどうにか食い止めようとする王子に、私は夢の話を洗いざらい吐かされることに。  それを話したら、王子は私を次世代の星読みの聖女だと言ってきた!  私はたまに予知夢が見られるだけで、聖女なんかじゃありませんよ!? 長編を書いては完結までに時間がかかる為、習作の為に、たまには短編を書いてみようと思いました。 (短編苦手ですが……) 流行りの溺愛系でも、最初にヒロインがひどい目に合わされるような話でもないですが、女性向けを意識して書いてみました。 正ヒロインvs正ヒロインの作品は確認した限り見当たらなかった為、そこが自分のオリジナリティでしょうか。 完結まで作成済みです。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!

ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。 気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ

みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。 婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか? https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683 ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791 と何となく世界観が一緒です。

今度こそ君に返信を~愛妻の置手紙は離縁状~

cyaru
恋愛
辺鄙な田舎にある食堂と宿屋で働くサンドラ。 そこに子爵一家がお客様としてやって来た。 「パンジーじゃないか!?」叫ぶ子爵一家。 彼らはサンドラ、もといパンジーの両親であり、実妹(カトレア)であり、元婚約者(アラン)だった。 婚約者であるアランをカトレアに奪われたパンジー。婚約者を入れ替えれば良いと安易な案を出す父のルド子爵。それぞれの家の体面と存続を考えて最善の策と家を出る事に決めたパンジーだったが、何故がカトレアの婚約者だったクレマンの家、ユゴース侯爵家はパンジーで良いと言う。 ユゴース家のクレマンは、カトレアに一目惚れをして婚約を申し込んできた男。どうなんだろうと思いつつも当主同士の署名があれば成立する結婚。 結婚はしたものの、肝心の夫であるクレマンが戦地から戻らない。本人だけでなく手紙の返事も届かない。そして戦が終わったと王都が歓喜に溢れる中、パンジーはキレた。 名前を捨て、テーブルに【離縁状】そして短文の置手紙を残し、ユゴース侯爵家を出て行ってしまったのだった。 遅きに失した感は否めないクレマンは軍の職を辞してパンジーを探す旅に出た。 そして再会する2人だったが・・・パンジーは一言「あなた、誰?」 そう。サンドラもといパンジーは記憶喪失?いやいや・・・そもそもクレマンに会った事がない?? そこから関係の再構築を試みるクレマン。果たして夫婦として元鞘になるのか?! ★例の如く恐ろしく省略しております。 ★タイトルに◆マークは過去です。 ★話の内容が合わない場合は【ブラウザバック】若しくは【そっ閉じ】お願いします。 ★10月13日投稿開始、完結は10月15日です。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションでご都合主義な異世界を舞台にした創作話です。登場人物、場所全て架空であり、時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

処理中です...