上 下
11 / 27

11、『ざまぁ』、side勇者パーティー1、護衛失敗

しおりを挟む

「『無限の水牙』達は?」

「……なんとか逃げ切ることが出来ました………」

「………助かったな」

劣勢になった勇者パーティー達は商人達を見捨てて、森の茂みを利用し、『無限の水牙』から逃亡に成功した。

「ーーークソ!!、なんで俺が盗賊なんかから逃げなきゃいけないんだ!!!」

ロゴミスは苛立ちをぶつけるように木を殴りつける。

勇者パーティーの面々は金遣いが荒いので、すぐに懐事情が厳しくなってしまう、『終わりなき園』に挑むに先立つ資金が必要だ。

それをなんとかすべく、商人の護衛を引き受けた。

魔王軍幹部のような強敵はまず出てこない、常日頃から強敵と戦って旅をしてきた勇者パーティーからしたらなんの苦もなく、町まで護衛して報酬を貰える………はずだった。

「お前何をしている!」

「ヒッッッ!!?」

ロゴミスは冒険者の男に詰め寄る、一応、リフィルが抜けた穴に増員をしておいた、俺が雑用などしたくないし、あいつ以上の無能はいないとタカを括って適当に選出した。

「さっきの無限増殖するスライム、俺とガンツの渾身の一撃で本体を倒すために、露払いをしろと言ったはずだ!!、何をえっちらおっちら一匹二匹退かす程度しかできてないんだ!!」

「む、無茶言わないでくれ、相手は数十から数百体はいたんだぞ?、上位職の竜騎士や専門武器職なら範囲攻撃の一つや二つ使えるが、俺は戦士だ!、器用貧乏に立ち回るのが基本なんだよ!、前衛はできて一匹か二匹を足止めするのが精一杯と事前に説明しただろ?!?、アンタ達がそれでも構わないって……」

「ふざけるな!!、戦士にはそれぐらいできて当然だろ!!」

リフィルがいた時に通用していた、大勢の敵に対する戦法が全く通用しなかった………雑魚処理は戦士に任せて、俺たちは最大の一撃の為に力を貯める、それが俺たちの必勝戦法だった……だが、無能が一人、入れ替わった程度で全ての歯車が噛み合わなくなった、力を溜めている最中にスライムが寄ってきて、せっかく溜めた魔力が散らされ、ショボイ一撃しか放てなかった、シャーリーの魔法やガンツの攻撃も途中のスライム達に威力を弱められ、本体へ届く事はなかった……スライム達が体を硬化させ、スライムと思えない防御力を誇っていたことも理由の一つだが………単体の攻撃では勇者パーティーといえど流石に数百体規模のスライムの壁を突破し、本体に致命傷を与えるなんてできるわけがなかった、せめて、数十体はどかしてもらわなければ最後まで届く訳がなかった………リフィルですら、ルーガスの強力な強化魔法と魔力を潤沢に貰わねば倒せなかったので当然と言えば当然だ。

「………相手は魔王軍の精鋭でもない、脆弱な盗賊とスライム達………戦士といえど数十体程度足止めくらいはできんのか?」

「だから何度も言わせるな!!、確かに戦う事はできるが、戦士がそんな大立ち回り出来るか!」

怒り散らすロゴミス………流石にここまでキレていたらお話にならないと、ガンツが間に入って聞くが、相手の返事は少しも変わらなかった、丁寧に聞いてやったのにと内心、ムカつくガンツ。

「あの鉄屑女ですら出来てたのに、そんな言い訳通ると思ってるの?」

「全く……ふざけないでください」

後衛職のシャーリーとイザベラが戦士の彼を糾弾する、同じ戦士で、あの役立たずの愚姉ですら、雑魚相手なら数十の魔物など、簡単に蹴散らしていた。

もちろん、強敵と戦う時や雑魚処理をした後は保有魔力量が少ないせいで大技を使うたびに後ろに下がってポーションでチビチビ回復するという手間がかかる無能だったが。

なのに、コイツときたら一人二人の足止めが限界だという、リフィル以下の役立たずではないか。

………しかし、四人は気づいていない、彼の言う事は至極当然の事実だという事に………本来、戦士という職業は器用貧乏な役割しかできないはずが、変異種の機竜人の力で上位職と遜色ない大立ち回りをして、前衛をしているリフィルが異常なことに……。


というかその作戦自体が杜撰の極みだ、リフィルの負担が大きすぎる事に気づかない四人、そもそも四人が息を合わせて、同時に攻撃するなり、順番に魔法や全体攻撃を放って連続攻撃するなりすれば簡単に倒せた……が、全員が全員、自分勝手、好き勝手に動いてるので息など合うはずがなかった………四人が気づいてなかっただけだが、実はリフィルがそれとなく息が合うよう、戦場にいる仲間の位置や何をするつもりなのか、常に反響定位エコーローケーションで把握し、四人がそれぞれ動きやすいように雑魚敵を倒していたのだ。

「………それより、報酬をくれよ………護衛に失敗しちまったから、予定よりは少ない銀貨10枚でいいから………」

「ああ??!!、そんな金あるわけないだろ!!!、あったところでお前みたいな無能に渡すつもりもないがな!!」

「ーーーふざけるな!!、失敗、成功に限らず、臨時メンバーには報酬を渡すのが基本だろ!!、俺が進んで参加したなら話は違うが、アンタたちが無理を言うから仲間との依頼を中止して付き合ったんだぞ!!、多少は貰わないと割に合わない!!」

「き、貴様、冒険者風情が生意気な事を………」

「………別に良いぜ、払わないってんなら、それならそれで…………ただし、町で勇者様達が商人達を見捨てて、決まりを守らないゴミって口を滑らしちまうかもしれないがな」

「「「「ーーーー!!」」」」

冒険者の男の言葉に四人全員顔を青ざめる。

「ロ、ロゴミス、流石にそれはまずいですよ………商人達だってもしかしたら生き残りがいるかもしれないし、もし、私達のした事が公に晒されたら……」

「勇者パーティーを解散させられてもおかしくはないな」

「でも、どうすんのよ、金貨なんて持ってないわよ?」

三人はコソコソと話し合う。

「………わかった、渡してやるからついて来い」

「……わかれば良いんだよ」

「ろ、ロゴミス金なんて持ってるの?」

「………一応な」

一気に落ち着きを取り戻したロゴミスはさっきとはうって代わって冷静に肯定する、ロゴミスと男は茂みの奥へ姿を消していく。

「………おい、そろそろいいじゃないか?、大体ただ金貨を渡す程度なのになんで場所を移す必要がーーー」

「ーーー死ね」

「ーーーッッッッッ!!??、な………んで………」

仲間達から かなり距離を離した後、腐っても勇者、神速の横薙で男を真っ二つに斬り裂いた…………余りにも突然すぎたため、男は断末魔の悲鳴すら上げられず、絶命する………。

「勇者である俺を脅すなんてふざけたことをするからそういう事になる………死体は魔物が食べてくれるだろう、早く戻らないと疑われるな」

…………死体を放置して、パーティーメンバー達のところへ戻るロゴミス。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

[完結]私はドラゴンの番らしい

シマ
恋愛
私、オリビア15歳。子供頃から魔力が強かったけど、調べたらドラゴンの番だった。 だけど、肝心のドラゴンに会えないので、ドラゴン(未来の旦那様)を探しに行こう!て思ってたのに 貴方達誰ですか?彼女を虐めた?知りませんよ。学園に通ってませんから。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

処理中です...