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9、『無限の水牙』2
しおりを挟む「クッソキリねぇぞ!!!!!」
「わかってる~ーだけどどうしようもないんだよ!!!」
「アっハハハハハ!!!、手も足もでねぇみたいだな!!!」
私は全身から武器を生やして、ルーガスは背中から抜いた大剣で向かってくるスライムの群れを掃討するも、すぐさま補充されてしまう………イタチごっこだ……だが、こちらは体力が尽きたら終わり、相手の戦力は無尽蔵、このままいけば私達の負けだ………ポーションゴリ押しをしていいならなんとでもなるんだが、手持ちの回復用のポーションは致命傷を受けて、今にも死にそうな商人さんにあげてしまった………。
(…………くそ………このままじゃジリ貧だ………)
「ちょっと魔力を派手に使いすぎた………魔力を補充できればもっと強力な魔法を使えるんだけど………」
「ーー!!、それ本当かリフィル??!!」
「うん、だけど、肝心のポーションがないんじゃ………」
「リフィル………一つだけこいつらを倒せるかもしれない方法がある」
「ーー!!、どんな??!!」
「一種の賭けに近い………実は俺、魔力量にはかなり自信がある、けど俺にはリフィル以上に強力な攻撃はできない………作戦はこうだ、まずお前にビーストテイマーの強化魔法で最大火力を底上げした後、全魔力をリフィルに託す………だが、すべての魔力を渡したら俺は動けなくなっちまう………次の一撃で絶対に決めてくれ!!」
「上等!!!!!!」
あの本体スライムに攻撃を届かせるには小出しの攻撃じゃビクともしない、超火力の一撃で前に陣取っている数百体のスライムごと消し飛ばすしかない…………リフィルの最大火力にルーガスの強化魔法を乗せ、無理矢理、火力でぶっ潰すという事らしい………脳筋すぎる戦法だが、他に作戦もない………迷えば迷うほど、時間かければかけるほど、こちらの魔力が削られ、勝機が薄くなってしまう、その前にやるしかない。
「何をごちゃごちゃ言ってる!!、とっとと諦めろ!!」
『我、紡ぐは獣の斧、動物攻撃強化、我、紡ぐは獣の集中……精神統獣!!!』
『ーーー発射準備完了、幻想砲身』
「なんのハッタリだ?」
ルーガスの強化魔法と全ての魔力を受け取ったリフィルが魔鉄義手をかざすと、自身の全魔力を込めた魔力弾を生成、複数の魔法陣が展開され、複数の魔法陣はある程度距離を離れた状態で綺麗に並んでいく、一つ足りともずれないで理路整然とレールのように、それはさながら砲身のように、いや実際に魔力弾を打ち出すための砲身なのだ。
「そんなコケ脅し!!、このスライムの壁を貫ける気か??!」
「………………」
「~ーーッッッ!!、やれスライム共!!!」
『ーーーー徹甲魔榴弾』
リフィルは手を前にかざす、ちょうど男のいる場所へと、リフィルの構えから魔力弾を当てるつもりだと推察し、挑発まじり質問するも無言でいるリフィルにイラつく男はスライム達に指示を飛ばす、スライム達は四方八方から彼女に襲い掛かる、ーーー瞬間、リフィルは左手で生成した魔弾を右手で殴りつけ、男めがけて発射する、キィィンと不思議な音を鳴らしながらすっ飛んでいく魔弾は魔法陣を通過するたび、加速装置の役割を果たすのか、目に見えて速度が高速化する、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、ーーー四つ目までは目にも止まらない速さ程度だったのが五つ目を超えたあたりから、人狼たるルーガスの優れた動体視力ですら捉えきれない速度になりそこからは残りの魔法陣を刹那のうちに潜り抜け、硬化したスライムの壁をまるで紙屑のように消しとばし、轟音と共にエターナルスライム本体と男へと着弾する、何も起きない事に男が疑問に感じていると、いきなり爆音が撒き散らされる、体の芯から揺らされた様な衝撃に、何が起きたのか分からず、意識を手放す男。
「「………勝った……」」
私とルーガスは異口同音でつぶやいた後、魔力を使いすぎで、意識を失う。
「これで全員か……」
倒れた後、商人達がすぐに売り物の用のポーションを使って私達を回復してくれた、商人達にロープを借りて盗賊達を拘束する。
「あ、危ない所を助けていただきありがとうございます!!」
我に返った商人達はリフィルに頭を下げて、感謝を述べる。
「気にしないで、困った時はお互い様だし………それはそれとして、護衛もつけないのは危険すぎるよ、護衛代金けちりたかったの?」
「……護衛は雇っていたのですが………逃げ出してしまって………」
「………ひどいねそりゃ」
「そうですね……しかし、そんなことよりも今は………」
商人は一人の男を一瞥する。
「うぅぅぅ………クソ………」
「あの人、どうしたんですか?」
一人だけ地面にへたり込み、何度も何度も地に拳を殴りつけている人がいた……。
「あの人の娘と息子が……奴らの一人に連れていかれまして……」
「「ーーーー!!!」」
私とルーガスは目を見合わせる。
「………」
「お、おい、リフィル、今はそっとしといたほうがーーー」
私は地面を殴っている男に近づく。
「………なんだ?」
「娘さんと息子さんが攫われたんだってね」
「……だからなんだ!」
「どの方角に行ったの?」
「「「へ?」」」
その場にいる全員が驚愕に目を剥く。
「だから、攫った奴らどの方角に行ったの?」
「そ、そんなもん聞いてどうすんだよ!!」
「………取り返す」
「い、いいのか?」
「………私、結構子供には甘いんだよ」
「す、すまん、恩にきる……あっちの方角に行った」
「任せなさい」
私の言葉に希望を感じたのか、目に光が宿り出す商人の男、私はフンスとグローブの手甲部分と義手を生身の手のひらに打ちつける。
「勝手に決めやがって……」
「なら、ウチの馬を使ってくれ、この中では一番早いはずだ」
「お、サンキュー」
ひとり頭をかかえるルーガス、商人が馬を貸してくれると提案してくれる、私は早速馬に乗る。
「ほら、ルーガス、置いてくよ」
「ーーーーおわっと!!」
馬を走らせ、一人頭を抱えているルーガスを手を伸ばす、気付いたルーガスは急いで私の手を掴んで、そのまま私の後ろに乗る。
「む、無茶するな……」
「……ワクワクするでしょ?」
「へへ………そうだな……」
盗賊達の跡を追う私達。
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