鉄臭い義手女になんの御用ですか?〜妹に婚約者を取られ、居場所も失った、戻ってこい?、自由気ままな今の生活が気に入ってるのでお断り〜

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7、薬草採取

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翌日、私達は依頼の薬草を採取するため、平原に来ていた………。

「んじゃ、ここは効率良く探すために分かれて探すか?、十数メートルなら離れてても大丈夫だし」


「??、何言ってんの?、二人で薬草が生えてるところを巡回した方が効率良くない?」

「?、いや、そりゃ、薬草が生えてる正確な場所がわかるなら一緒に行動したほうが無駄は少なくなるが、どうやってそれを知るんだよ?」


「……こうやって、反響定位エコーローケーション………よし、依頼の薬草はあっちか……行こうルーガス」

「………へ?」

私は魔鉄義手を一部アンテナのように変形させ、魔力を常人の耳では聞き取れない超音波にして辺りに撒き散らす………その反射音でここら一帯の地形や生えている植物などを確認………依頼書に薬草の形状と酷似している植物を見つけたので、そちらへルーガスを誘導する私………彼は口をポカンと空けて、間抜けな声を晒す。

「…………そういや、機竜人なんだっけ?」

「そうだよ、ーーーーごめん………鉄………臭かったかな」

「ーーー!!、いや、ち、違う!!!、そ、その、す、すごい迅速かつ正確に辺りを把握してたから………便利な体だなって……感心して、それで………わ、悪りぃ………」

「……そっか……………こっちこそごめん………」

不意に自分の種族を確認され、意識的にか無意識にか、ルーガスは私の魔鉄義手を見ていた……機械部品が剥き出しにならないよう、平常時は皮膚をもした魔道具でコーティングしているので、鉄臭いといことはないはずだが、彼の視線が自分の義手に注がれてると気づいた瞬間、苦い記憶がフラッシュバックし、もしかしたら鉄臭かったのかと思い、腕を隠すように半身になる私………だが、それは杞憂だったようだ、お互い謝罪する。

「そ、それにしても何だよ今の!!、見た事ねぇぞあんなの!!確かリフィルって下級職の戦士だったよな、今の探知系の技、上位の斥候職系より上だったんじゃねぇの??!!」

「そんな事ないよ………戦士はただの器用貧乏だからね、専門家達には敵うわけが無い」

「いやいや、さっきの技は異常だったと思う!!、Sランクの斥候職にだって真似できるかどうか……」

「…………フフ、そうだね、私、凄いね……」

「お、おい、何だよその聞き分けのない子供に仕方なく同意するみたいな感じの返事」

「大丈夫、私は凄い、ちゃんとわかってるって」

「……ほんとかなぁ?」

………トラウマを気遣ってか、彼は私を無理やり誉めてくる………ルーガスの優しさに少しくすぐったさを憶えながら、適当に相槌をうつ私。

ーーーーーーーーーーーーー

「何を見せたいの?」

「良いから良いから、こっちこっち」

薬草採取が思った以上に早く終わった、後は帰るだけと思っていたら、ルーガスが見せたい所があると良い、それに導かれるまま森の中の獣道を進む私。

「ーーーよし着いたぞ!!」

「ーーー!!……おお、綺麗……」

「へへ、だろ?」

視界に飛び込んできたのは辺り一面に咲き誇る真紅の花達、大地に咲く、情熱の赤………一瞬薔薇かと思ったが……リコリス……だろうか?。

「ーーーうわッッッッ」

不意に強風が吹き、私は髪を抑える、それと同時に花びらが空に浮き、舞い上がって散っていく、晴天の青にリコリスの赤い花弁が舞っている光景は中々に美しいコントラストを醸し出している。

「…………こういう冒険も………あるんだな」

「へ?」

「あ、いや、ほら、勇者パーティーが行くところって基本的に魔族や魔物に荒らされきったところでさ、私の旅の風景って荒野とか、太陽の見えない曇天とかが基本だから………こういう緑に溢れてて、青い空に輝く太陽、色鮮やかな花が咲き誇っている……なんて久しぶりに見た光景だから………ちょっと見惚れちゃった……ありがとルーガス、綺麗なもん見せてくれて」

………思わず、独り言を溢す私………ルーガスは疑問符を浮かべる、私は自分の感じた率直な感想を彼に伝える、最後に彼に笑顔を浮かべながら感謝を伝える。

「ーー!!!\\\、おう、そ、そか、そりゃよかった\\」

彼は照れ隠しに鼻を擦りながら私の感謝を受け取る。

「………なぁなぁ、もっと綺麗なものを見たり、冒険で心を踊らせたくないか?」

「え?」

「一緒にさ、水の都や花の都みたいな観光名所をまわったり、氷の城に黄金都市みたいな伝説の場所を探したりしようぜ、そういう旅も……こうなんだ、テンション上がるっていうか、ワクワクしないか?」

「ふふ、まぁ財布に余裕できたらそういうのも良いかもね、ーーー!!?、なんだ……今の……」

子供みたいに目を輝かせて、語るルーガスに苦笑しながらも、同意する私。


「ん?、どうした?」

「いや、今、あっちの方から戦闘の音が聞こえたような………『反響定位エコーローケーション』!!、やっぱり、キャラバンが魔物に襲われている」

「マジかよ……スンスン……確かに、そっちの方から血の匂いがするな………」

私は微かに喧騒の音が聞こえたので、その方向に探知系の技を使って、詳細を調べると、どうやら商人達のキャラバンが魔物に襲われているらしい。

「どうする?、助けに行く?、それとも私たちには関係無いから帰る?」

「俺は………助けに行きたい、かな」

………別に私達は商人の護衛依頼なんて受けてない、ここでスルーしてもなんら不利益は生じないし、むしろ助けに行くのは危険ですらある。

「甘いな~、けど………嫌いじゃないよ、その甘さ」

「ーーーーよし、んじゃ行こうぜ!!」

ルーガスに聞くと自分と同じような意見が返ってきたので、嬉しくなった私は自然笑みを浮かべる、そしてルーガスと共に現場へ走り出した。
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