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番外編2 サミュエルの初恋

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 剣術大会の当日。
 将来有望な騎士候補をスカウトする目的も兼ねている今大会を正式に観戦する形になったサミュエルは、王族の一員として正装をして観戦席に座っていた。
 試合はまだ始まっていないにも関わらず、既に熱気に溢れた会場の空気に若干尻込みしていると、隣に座っていた兄王子がこそっとサミュエルに耳打ちをする。

 「サム。ブラック家のご令嬢にまだ直接応援の言葉をかけていないんだろう?選手控え室に居るはずだから行ってきてごらん」
 「え?で、でも、これからごあいさつをするんじゃ…」
 「私がするから大丈夫だよ。それに、ブラック家のご令嬢の第一試合は挨拶のすぐ後だよ。今行かないと間に合わないぞ?」
 「えっ!?うっ…い、行ってくる!ありがとう、兄上!」
 「うん。いってらっしゃい」

 兄に背を押されてサミュエルは早足で選手控え室へと向かった。



 ♦︎



 選手控え室の扉の前で、サミュエルは胸をおさえて息を整える。
 はやる心臓は早足で来たためか、それともまた別のものか。久しぶりに直接オリヴィアに会う緊張にじんわりと手のひらに滲む汗をぬぐってサミュエルは扉をノックした。

 ──コンコンコンコン

 「…はーいっ」
 「!」

 ガチャリと軽い音をたてて開かれた扉の内側には、可憐なドレスではなく剣術試合用の服を着てすっと背筋を伸ばすオリヴィアが居た。

 「あれ?サミュエル王子殿下。どうしたの?」
 「…っ!!!』

 ぼんっ!とサミュエルの顔が真っ赤に染まる。

 「かっ、かっ、かっ、かっこう良い!!!」
 「……あ、この服?パパが張り切ってわざわざ作らせたんだよ~」
 「え?そ、そうじゃなくって…っ」
 「ところで殿下はどうして控え室ここに?殿下も出場するんだっけ?」
 「う、ううんっ!僕は出ないけど…」
 「…迷子?」
 「違うってばぁ!」

 凛々しい選手服は着ていても、オリヴィアは普段通りにマイペースでいる。
 試合前だというのに、オリヴィアにとってはオフモードらしい。見ているサミュエルの方がハラハラとしてくる。
 このままオリヴィアの言葉に返していても、話は横道にそれ続けていくことを短い付き合いながら早くも察したサミュエルはオリヴィアの言葉を遮ると、ぎゅっとオリヴィアの手を取り握りしめる。

 「試合、頑張って!僕、オリヴィアのことを応援しているからね!!」

 真っ赤な顔のサミュエルの勢いに一瞬呆気に取られたオリヴィアだったが、すぐにニッと笑うとサミュエルの手を握り返す。

 「任せて」
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