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番外編1 とあるメイドと幼いオリヴィアの遭遇
7 fin.
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「…なーんてこともありましたねぇ」
麗かな日差しの下、庭にセッティングしたテーブルに座り午後のティータイムを楽しむのは、名実ともにすっかり淑女として成長を遂げたオリヴィア。と、変なメイドもといスーパーメイドもとい、アリシア。
「もう、いいってばその話は!何回話せば気がすむのよ!」
「いやぁ、感慨深いじゃないですか~あんなに24時間キビッ!としてたオリヴィアお嬢様が今ではすっかり…あ~…私の影響を受けて…」
「いたいけな私に影響を与えるだけ与えて貴女はすぐにうちを辞めちゃったけどね。おかげで私だけが乳母からぐちぐちお小言を言われるし、パパからは本気で頭打ったんじゃないかって心配されるし!」
「あはは、私あの当時は臨時の使用人でしたからねぇ。期間中はきっちりお仕事こなしたんですからいいじゃないですか」
からからと笑うアリシアに、オリヴィアも尖らせていた口を戻し口角を上げる。
「でも、あの頃に貴女に出会えて良かったって思うわ。あのまま24時間ずっとスーパー淑女でいたらどこかで爆発してたと思うもの」
「そーですよぉ。人間、オンオフの切り替えは大事!やる時はやる!やらない時は全力で休む!」
「分かる~~~」
二人が和やかにお茶を楽しみつつ昔話に花を咲かせていると、屋敷内から庭へとブラック伯爵が出てきた。
「オリヴィアちゃ~ん!城から手紙が…ん?君は確か…」
「あ、パパ。アリシアだよ。ママが大変だった時に臨時で働いてくれてた」
「ご無沙汰をしております。伯爵閣下」
「ああ、覚えているよ。あの頃はとても大変だっただろう。ありがとう」
「いえ、とんでもないです」
「アリシアさんが来ているのなら、話はまたあとにするね」
「アリシアが来てなくても仕事の話は休日に持ってこないでね~」
「うっ…はいはい…。じゃあ、アリシアさん。ゆっくりしていってね」
「はい。ありがとうございます」
「じゃね~パパ~」
心なしか肩を落として屋敷内へと入っていくブラック伯爵の背を見送ってアリシアは苦笑をこぼす。
「いやぁ~…本当によく影響を受けて…私が言うのもなんですけど、城からの手紙を後回しにしていいんですか?」
「いい。なぜなら今は休日だから」
「…まぁ、それもそうですね」
二人は顔を見合わせてクスリと笑うと、お茶を再開する。
結局、オリヴィアの母はあの後回復し、両親に甘える姿を見せるようになったオリヴィアと親子団欒の時間を持つことが増えた。そうした屋敷の主人達の穏やかな気持ちが使用人達にまで広がったのか、常にピリピリしていたブラック伯爵邸の雰囲気は良くなり、それがまた伯爵夫人のストレスを軽減させ、伯爵夫人の体調はみるみる良くなっていった。
そうしてオリヴィアの14歳のデビュタントをしっかり見届けてから、伯爵夫人はとても穏やかに息を引き取ったのだった。
「そういえばアリシアって今はどこで働いているんだっけ?」
「今は産休中の代打で、侯爵家で働いてますよ」
「あ~…あそこか。いつまで?」
「とりあえず来月いっぱいまで、ですね」
「ふ~ん。ねぇねぇ、やっぱりうちに戻ってくる気はないの?」
「う~ん…条件次第ですかねぇ」
片や社交界の白い薔薇、片や知る人ぞ知るスーパーメイドはやる気スイッチを落としてゆるやかに、だらりだらりとお茶の時間を楽しむ。
明日からまた、仕事の時間は最高のパフォーマンスをする為…かどうかは、さておき。
これはオリヴィアがとあるメイドと出会い、今日に至るまでのちょっとした昔噺。
麗かな日差しの下、庭にセッティングしたテーブルに座り午後のティータイムを楽しむのは、名実ともにすっかり淑女として成長を遂げたオリヴィア。と、変なメイドもといスーパーメイドもとい、アリシア。
「もう、いいってばその話は!何回話せば気がすむのよ!」
「いやぁ、感慨深いじゃないですか~あんなに24時間キビッ!としてたオリヴィアお嬢様が今ではすっかり…あ~…私の影響を受けて…」
「いたいけな私に影響を与えるだけ与えて貴女はすぐにうちを辞めちゃったけどね。おかげで私だけが乳母からぐちぐちお小言を言われるし、パパからは本気で頭打ったんじゃないかって心配されるし!」
「あはは、私あの当時は臨時の使用人でしたからねぇ。期間中はきっちりお仕事こなしたんですからいいじゃないですか」
からからと笑うアリシアに、オリヴィアも尖らせていた口を戻し口角を上げる。
「でも、あの頃に貴女に出会えて良かったって思うわ。あのまま24時間ずっとスーパー淑女でいたらどこかで爆発してたと思うもの」
「そーですよぉ。人間、オンオフの切り替えは大事!やる時はやる!やらない時は全力で休む!」
「分かる~~~」
二人が和やかにお茶を楽しみつつ昔話に花を咲かせていると、屋敷内から庭へとブラック伯爵が出てきた。
「オリヴィアちゃ~ん!城から手紙が…ん?君は確か…」
「あ、パパ。アリシアだよ。ママが大変だった時に臨時で働いてくれてた」
「ご無沙汰をしております。伯爵閣下」
「ああ、覚えているよ。あの頃はとても大変だっただろう。ありがとう」
「いえ、とんでもないです」
「アリシアさんが来ているのなら、話はまたあとにするね」
「アリシアが来てなくても仕事の話は休日に持ってこないでね~」
「うっ…はいはい…。じゃあ、アリシアさん。ゆっくりしていってね」
「はい。ありがとうございます」
「じゃね~パパ~」
心なしか肩を落として屋敷内へと入っていくブラック伯爵の背を見送ってアリシアは苦笑をこぼす。
「いやぁ~…本当によく影響を受けて…私が言うのもなんですけど、城からの手紙を後回しにしていいんですか?」
「いい。なぜなら今は休日だから」
「…まぁ、それもそうですね」
二人は顔を見合わせてクスリと笑うと、お茶を再開する。
結局、オリヴィアの母はあの後回復し、両親に甘える姿を見せるようになったオリヴィアと親子団欒の時間を持つことが増えた。そうした屋敷の主人達の穏やかな気持ちが使用人達にまで広がったのか、常にピリピリしていたブラック伯爵邸の雰囲気は良くなり、それがまた伯爵夫人のストレスを軽減させ、伯爵夫人の体調はみるみる良くなっていった。
そうしてオリヴィアの14歳のデビュタントをしっかり見届けてから、伯爵夫人はとても穏やかに息を引き取ったのだった。
「そういえばアリシアって今はどこで働いているんだっけ?」
「今は産休中の代打で、侯爵家で働いてますよ」
「あ~…あそこか。いつまで?」
「とりあえず来月いっぱいまで、ですね」
「ふ~ん。ねぇねぇ、やっぱりうちに戻ってくる気はないの?」
「う~ん…条件次第ですかねぇ」
片や社交界の白い薔薇、片や知る人ぞ知るスーパーメイドはやる気スイッチを落としてゆるやかに、だらりだらりとお茶の時間を楽しむ。
明日からまた、仕事の時間は最高のパフォーマンスをする為…かどうかは、さておき。
これはオリヴィアがとあるメイドと出会い、今日に至るまでのちょっとした昔噺。
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